mormoriotitle








◆ Mormorio(ひとりごと)の目次ページへ ◆


◆ このページの目次 ◆

★映画『閉ざされた森(BASIC)』を見た (2003.10.10)
★平成中村座 (2003.10.05)
★ガンガンいこうぜ (2003.10.04)
★映画『パイレーツ・オブ・カリビアン(PIRATES of the CARIBBEAN)』を見た (2003.08.17)
★八月納涼歌舞伎 (2003.08.11)
★映画『トーク・トゥ・ハー(TALK TO HER)』を見た (2003.07.30)
★映画『ミニミニ大作戦(THE ITALIAN JOB)』を見た (2003.07.06)
★映画『タイタニック(TITANIC)』を見た (2003.06.29)
★映画『ソラリス(SOLARIS)』を見た (2003.06.22)
★映画『ダブル・ビジョン(Double Vision)』を見た (2003.06.14)







★映画『閉ざされた森(BASIC)』を見た

映画『閉ざされた森』を見てきた。

『BASIC』
監督:John McTiernan(ジョン・マクティアナン)
出演:ジョン・トラボルタ(John Travolta)、コニー・ニールセン(Connie Nielsen)、サミュエル・L・ジャクソン(Samuel L. Jackson)、ブライアン・ヴァン・ホルト(Brian Van Holt)、ジョヴァンニ・リビシー(Giovanni Ribisi)、ティム・デイリー(Tim Daly)
2003年・アメリカ映画
98分

いやぁ、混乱しましたわ。大雨のなか、訓練のためにジャングルに入ったレンジャー部隊6名と指揮官が消息不明。捜索のヘリが現地に飛ぶと、負傷者を担いで歩くレンジャー部員を発見。その部員に向けて、森のなかから発泡する別のレンジャー部員。銃撃されたレンジャー部員は応戦し、森のなかから撃ってきたレンジャー部員を射殺。けっきょく訓練から生還したのはこのふたりだけ。ジャングルのなかでなにがあったのか。生還したふたりと、彼に射殺されたひとりのほかの、残りの4人はどうしたのか。生存者ふたりに尋問が行なわれるが、その証言内容に食い違いが。そこをついていくと、真実と思われていたことがどんどんひっくり返って、話はどんどん大きくなり、さらに違う方向へ……という映画なんだけど、あまりにもどんどん「真実」がひっくり返っていくので、途中でわけわからなくなってきちゃう。

薄暗いジャングルのなかで、おまけに大雨が降っているので、画面が暗くて、事件の当事者であるレンジャー部員たちの顔と名前がなかなか覚えられない。なので、いろいろな事実がひっくり返ってることはわかるんだけど、そこから「本当の真実」を見つけるためのヒントになるはずの人間関係がうまく把握できない。しかし映画は容赦なく、テンポよく進んでいき、あらあらあらぁ〜と思ってるうちにエンディング。全体を通しての大筋のストーリーと、それを構成する大きなポイントとなる登場人物の役割についてはおおよそわかったけど、証言における細かいところの矛盾やうそなどをきちんとスッキリと自分の頭で解明することはできなかったぁ。

でも、大枠としてはなかなかおもしろい映画だと思う。きっとこういうふうにどんでん返るんだろうなと予想していたとおりのところもあれば、そっちに行っちゃうかいというところもあり、集中力と記憶力と気力を総動員して観ようという気にさせるし、またそうしないとぜんぜん楽しめなさそう。どんな理由にせよ「一生懸命観よう」という気にさせる映画は、自分は好きです。

しかしなぁ、見終わったあとに、腑に落ちない点がいくつか残ってしまっているのが気持ち悪い。ラストも、あれでいいのだろうか。う〜ん。

(2003.10.10)




このページの目次




★平成中村座

平成中村座を見てきた。

昼の部は陰謀と怪談のまじった御家騒動ものの通し狂言『加賀美山再岩藤』。2回の幕間をはさんで約3時間半。途中、お弁当を食べてお腹が一杯になったあとに強力な眠気が襲ってきたが、話自体は終始おもしろく、飽きることはなかった。

歌舞伎座とくらべると半分くらいの大きさの特設小屋なので、2階の左側のいちばんうしろの席だったが、花道も見えるし、けっこう見やすい。ちょっと声が聞こえづらく、とくに花道で向こう側を向いてしゃべられたりするとほとんど聞こえないのが残念。さらに、席のうしろ上部に空調の吹出し口があり、空調が入るとその音でいっそうセリフが聞こえなくなってしまう。このへんが安い席のハンディか。

2回のお家乗っ取り騒動と、それに失敗して殺された愛人と成功しかけている忠臣&愛人、乗っ取り阻止に成功した忠臣と逆に罠にはめられた忠臣、これらの人間関係に殺された愛人の幽霊がからみ、重層的かつテンポよくストーリーが展開していく。ただ、乗っ取りに失敗して殺された愛人の幽霊と2回目の騒動で乗っ取りをたくらむ家臣の両方を勘九郎さんが演じるのはいいにしても、最初の騒動を収めるのに成功した二代目尾上と2回目の騒動に加担している愛人のお柳を同じ福助さんが演じているのは、ちょっと混乱してしまった。しかし、池落ちを使ったり、最後にはクレーンも使ったりと、適度に派手な演出もあり、物語自体もおもしろく、楽しい歌舞伎鑑賞だった。

せりふが聞き取りにくい分、ストーリーを予習しておいたほうが楽しい。今回は筋書き(パンフレット)を開演前に買っておいてよかった。

夜の部は『弁天娘女男白浪』『本朝廿四孝』『人情噺文七元結』の3本。

『弁天娘〜』は、女装した弁天小僧とその仲間が呉服屋をだまして金をせしめる前半と、弁天小僧の仲間である白浪五人衆がそれぞれ口上を述べて勢揃いする後半の2幕で構成されている。この後半は、まだ自分がずっと子供だったころに、父に連れられて行った銀座の会員制クラブかなにかの年末演芸会(?)かなにかで見たことがある。そのときも退屈だった記憶があるが、今回もやはり眠くなってしまった。どうも動きやストーリー展開のない演目は、自分は苦手なようだ。前半は巧妙な(というほどでもないが)だましのテクニックなど、おもしろかったのだけど。

『本朝〜』は、自分の苦手なタイプの舞踊もの。物語のなかのほんの一部の場面を切り出して、そのときの登場人物の心情などを踊りで表現する舞踊ものは、物語が展開しないので飽きてしまうことが多い。玉三郎さんの踊りでも寝てしまう自分です。今回は福助さんのほとんど独り舞台だったのだが、もともとは人形浄瑠璃の話らしく、人間が人形の舞を模して踊る、いまでいうロボット・ダンスを見せてくれた。これがかなり美しく、舞踊歌舞伎なのに飽きずに見られた。やはり福助さんはすごい。

『文七元結』は、もともとは落語。志の輔さんの高座で何回か聴いたことがあるので、話自体は知っている。もとが落語の歌舞伎を見るといつも思うのだが、イマジネーションのふくらみ方や話にどれだけ厚みを感じさせるかといった点では、圧倒的に落語に分がある。視覚で見られない分、想像力が働いて、自分なりの情景を作り出せるからだろう。この歌舞伎も、人情噺という意味では落語のほうが強く心に染みるものがある。しかし、主役の左官屋の江戸っ子気質や、そのおかみのドタバタぶりなど、目で見せる世話物歌舞伎らしいテンポと明るさ、ほどよい人情味があって、これはこれで楽しめる。とくにおかみさんの熱演はおもしろかった。

昼・夜通しで約7時間(途中にあった1時間半ほどの入れ替え時間を除く)。決して座り心地のいいイスではなかったけど、とくに疲れたという感じもないから、やはりおもしろかったのだろう。勘九郎さんの歌舞伎は全体的にわかりやすいというか、庶民的な感じがするのだが、それも自分が楽しめている理由だろう。会場には若いお姉ちゃんからおじいちゃん・おばあちゃんまでと幅広い客層がいた。歌舞伎は「伝統文化」であるだけでなく、「庶民の楽しみ」でもある。それがいまも続いているのって、なんかいいよね。

(2003.10.05)




このページの目次




★ガンガンいこうぜ

Sky Theater PROJECTの『ガンガンいこうぜ』という芝居を銀座小劇場で見てきた。

この劇団を見るのは2回目。最初に見たのは『さようならファーストエイジ』という演目で、ラッキーなことに無料ご招待にあたって見にいったのだった。

これまでにいくつかの劇団の無料ご招待にあたって見にいっているが、正直な話、無料で見た劇団で次はお金を払っても見にいきたいと思わせるところは少ない。だいたいは劇団員の若いところで、話も若者でないとノリにくかったり、脚本のクオリティが低かったり、演技そのものがダメダメだったりして、もういいやとなってしまう。

そんななかで、このSky Theater PROJECTは、舞台に出る役者の年齢幅がけっこう広く、話もよくできているし、展開のリズムや笑いの入れ方も上手で、飽きずに楽しんで見ていられる舞台をする。芝居も危ういところがなく、かといって落ち着き払っているわけでもなく、小さな劇団ならではの身近さと雰囲気を持っている。

『さようならファーストエイジ』は、どちらかというとシリアスなテーマで、じっくりと見せるタイプの舞台だったが、今回の『ガンガンいこうぜ』は学園青春コメディ。前回の印象がいいだけに、コメディってどうよ?と、見る前は少し心配したのだけど、心配の必要はなかった。

1990年を舞台に、発売されたばかりの「ドラゴンクエストIV」のセーブデータをめぐって、ウソや勘違いや友情や恋愛やといったバタバタがあり、最後にはありがちなんだけどストレートにハッピーエンド。登場人物がけっこう多いが、それぞれのキャラクターづけや役割がはっきりしているので、無駄に多い感じはない。約2時間ほどの上演時間を長く感じさせない舞台で、自分の好みや感性に合っている。

次回の舞台が楽しみ。定期的に見にいく劇団にしようと思う。

(2003.10.04)




このページの目次




★映画『パイレーツ・オブ・カリビアン(PIRATES of the CARIBBEAN)』を見た

映画『パイレーツ・オブ・カリビアン 〜呪われた海賊たち〜』を見てきた。

『PIRATES of the CARIBBEAN - THE CURSE OF THE BLACK PEARL -』
監督:Gore Verbinski(ゴア・ヴァービンスキー)
製作:Jerry Bruckheimer(ジェリー・ブラッカイマー)
出演:Johnny Depp(ジョニー・デップ)、Geoffrey Rush(ジェフェリー・ラッシュ)、Orlando Bloom(オーランド・ブルーム)、Keira Knightley(キーラ・ナイトレイ)
2003年・アメリカ映画
143分

もう「海賊」と聞いただけでワクワクしてしまう。それだけでOK。ディズニー映画ということで、多少子供だましなところはある。ストーリー展開にもうひとつ切れがないとか、大金かけたわりにスケール感がないとか、全体的に大味な印象は否めない。それでも、カリブの海賊の音楽が聞こえてくるとワクワクしちゃうし、なによりキャプテン・ジャック・スパローを演じるジョニー・デップの芝居が素晴らしい。海賊なのに、船長なのに、なんでクネクネのふにゃふにゃ? オカマっぽい物腰の柔らかさを漂わせまくっているのに、剣を持ったときのアクションはピタッと決まる。かなり強烈なキャラクター。

せっかくこんなに魅力的なキャラをつくったのに、これといって引き込まれる「物語」がないのが、この映画の最大の弱点だろうな。呪われた海賊たちの背景も、おそらく主役であろうウィルとエリザベスの物語も、なんか中途半端。

噂ではすでに続編制作が決まったらしいが、次作ではぜひ、きちんとした「物語」を中心に据えてほしい。個人的な希望としては、今回の映画より前の時間の物語を、キャプテン・ジャック・スパローの冒険を、つくってくれたらなぁ。ちからのある海賊であるジャックがバルボッサに船を乗っ取られて孤島に置き去りにされるまでを見たい。ウィルの父、靴ひものビルはもちろん、オーランド・ブルームで。そして、もっともっと海戦、海上での船同士の戦いが見たいな。

逆にいえば、海戦の少なさ、物語の薄さがこの映画では不満だった。脚本がもっとしっかりしていれば、もっと爽快感があったろうに。展開の遅さが残念。ジョニー・デップのあの芝居が、かなり評価を上乗せしているだろう。自分の船を取り戻し、操舵輪にほおずりするところなどサイコー。最後までジョニーにやられました。

(2003.08.17)




このページの目次




★八月納涼歌舞伎

歌舞伎座は、ふだんは昼と夜の2回公演なのだが、夏の『納涼歌舞伎』は朝・昼・夜の3回公演になり、その分1公演のチケットも安くなっているのだそうだ。今回は初日の昼と夜を鑑賞。

昼は『通狂言 怪談牡丹灯籠』。勘九郎さんが原作者の三遊亭円朝の役で幕間に登場し、舞台転換時の案内役を務める。個人的には舞台上で演技をする勘九郎さんを見たかったので、その点ではちょっと残念。歌舞伎役者としては非常にうまいのだけど、落語家役は、たぶん芝居としてはうまいのだろうけど、自分はうまい落語家の落語を何回も見て(聴いて)しまっているので、どうしてもそれと比較してしまう。

とはいえ、舞台全体としては、それぞれの役者さんがさすがの芝居をしていて、また実際に雨を降らせる仕掛けなどもあり、かなり楽しめた。牡丹灯籠はけっこう複雑な展開と人間関係を持った話でゴチャゴチャしていて、物語自体の魅力はじつは薄い気がするのだが(実際テレビドラマで見たものは、あまりおもしろくなかった)、ところどころに笑いの要素を入れ、最後にはきちんと恐ろしさも見せるこの歌舞伎は、長時間でもぜんぜん飽きることなく見ることができる。それはやはり、役者さんたちの芝居のうまさに拠るところが大きいのだろう。とくに今回は、女形の福助さんのうまさが際立って感じられた。勘九郎さんに続き福助さんも今後のお気に入りになりそうだ。

ちなみに客席には三田寛子さんがきていた。

夜の部は勘九郎さん主演、野田秀樹さん脚本による『鼠小僧』。テレビや映画でも活躍している中村獅童さんも出演し、かなりドタバタ色の強い芝居になっていた。

これも歌舞伎と呼んでいいのかどうか、実際のところ疑問。歌舞伎よりも「芝居」を見た感じがする。細かいギャグや駄洒落が頻繁に入り、とても世俗的。回り舞台と奈落を存分に活用し、派手で動きのある舞台をつくっていた。スピード感があり、楽しい舞台だった。

夜の部は『鼠小僧』の前に『どんつく』という舞踊歌舞伎もあり、獅童さんはそこにも出ていた。しかし、勘九郎さんや福助さんなどといった並居る名役者のなかに入ると、獅童さんの芝居はまだまだという点が浮き彫りにされてしまう。衣装の裃にも「着られてしまっている」感じだし、他の役者さんとならんで座っている姿もどこか自信なさげに映ってしまう。テレビのなかではかなりの存在感があるのに、やはり歌舞伎役者のレベルは圧倒的に高いのだなと改めて感じる。

(2003.08.11)




このページの目次




★映画『トーク・トゥ・ハー(TALK TO HER)』を見た

映画『トーク・トゥ・ハー』を見てきました。

『TALK TO HER(hable con ella)』
監督:Pedro Almodovar(ペドロ・アルモドバル)
出演:Leonor Watling(レオノール・ワトリング)、Javier Camara(ハビエル・カマラ)、Dario Grandinetti(ダリオ・グランディネッティ)、Rosario Flores(ロサリオ・フローレス)
2002年・スペイン映画
113分

劇場で見た予告が気に入って、よさげな映画だなぁと思ってたんだけど……。う〜む、自分には合わない。

主人公である看護士ベニグノの昏睡女性アリシアに対する思いを、ある種の悲恋的なものにとらえるという見方は、できなくはないんだけど、でもやっぱりあれって、こちらからの一方的な感情や行為を受け入れることしかできない相手しか愛せない人格障害者による、犯罪行為でしょ、結局。ああいうふうにしか育ってこれなかったことに対して、ある種の同情というか、かわいそうだなという感情は持つけれど、だからといってそれを美化し正当化するのは違うんじゃないかしらん。

さらにタチが悪いのは、ベニグノはその「行為」が許されないこと、正しくはないことだと自覚してる。だから、病院内で問題となり、その「行為」を行なったのが誰かという話になったときに、「自分ではない、自分はやっていない」と嘘をつくわけだよね。たとえ「世間的に」は許されていなくても、自分と(昏睡しているとはいえ)相手とのあいだに「正当である」という意識、自身があるなら、ああいう答えにはならないんじゃないだろうか。もちろん、それを自白したら、自分から相手が取り上げられてしまうことも知っていて、それゆえ嘘をついたというふうにもとれるけれど、だとしても、そこにあるのは「ふたりのあいだの愛ゆえ」というよりは「自分の保身」にしか思えない。

たとえば、もしもこれが嘘ではなく、本当に「自分はやっていない」と思い込んでいたとしたら、それは知能障害かなんらかの病気だろう。でもベニグノの場合、そういった病気ではなく、自分の行為の意味を自覚してる。昏睡状態にある女性について「自分たちはもっともわかりあえる夫婦になれる」などとほざくあたり、レイプしておいて「同意のうえだ」の開き直る奴とかわらんじゃないか。

この主人公ベニグノに対する嫌悪感があまりに強く、また、その他の登場者についても共感も感情移入もできず、困っちゃったなぁという感じのまま終わってしまった。ストーリー以外の部分では、背景や、衣装や、音楽など、なかなか味わい深かったんだけどなぁ。

(2003.07.30)




このページの目次




★映画『ミニミニ大作戦(THE ITALIAN JOB)』を見た

映画『ミニミニ大作戦』を見てきました。

『THE ITALIAN JOB』
監督:F.Gary Gray(F.ゲイリー・グレイ)
出演:Mark Wahlberg(マーク・ウォールバーグ)、Charlize Theron(シャーリーズ・セロン)、Edward Norton(エドワード・ノートン)
2003年・アメリカ映画
111分

いまどき『ミニミニ大作戦』って邦題はどうよ?って感じですが(褒めてるんですよ - 笑)、この邦題にふさわしい内容かな。 少なくとも原題をそのままカタカナにするよりはぜんぜんいいでしょう。

緻密に練り上げられた金塊強奪計画、仲間の裏切り、そして復讐というわかりやすいストーリーに、ヴェネツィアではモーターボートによるチェイス、ロサンゼルスでは邦題のタイトルにもなっているミニ・クーパーによるカーチェイスがあり、さらにメイン・キャストである強奪グループのリーダーと金庫破りの女性、裏切り者といった登場人物のキャラクター付けもきちんとしてる。そういった点で非常にわかりやすく、手堅いつくりがされている映画だね。

また、最近の映画ではめずらしい「CGは使わない」というスタイル。さらには「アクションシーンはできるかぎり出演者本人が行なう」というポリシー。こういったところから、生きた質感が画面に生まれてくる。

生身の人間が、生身の人間にできる範囲で精一杯いろんなアクションに挑み、映像をつくっていく。だから見る側も、生身の人間として身近な映像を受け取ることができる。このあたりが素敵。緊張感はありながらも、どこかちからの抜けた感じというか、ゆるい空気があるところがとても人間的なんだね。

そういったところが、ある意味では「古い」印象を与えるかもしれないけれど、邦題が『ミニミニ大作戦』だよ。この時点でCGバリバリ超人的アクションなんて期待するほうがまちがい。そのかわり、役者さんがとてもいきいきと見えるし、スクリーンに映し出される背景にも暖かみがある。

もともと1960年代にあった映画のリメイクで、当時の邦題をそのまま使ったらしく、この邦題について「タイトルで集客を損している」といった意見も少なくないようだけど、このタイトルで「つまらなそう」「見たくない」と思った人は見ないほうが正解かも。逆にいえば、このタイトルでなにかしらの「楽しさ」を感じた人が見るべき映画で、その点ではとてもいい邦題だといえそう。

うん。おもしろかったですよん。ていうか、楽しい映画だった。レイドバックした感じというか、絶妙なゆるさがとても心地よいです。役者さんも上手だったし。爆発があって逃げまどうロスの人ごみのなかになぜかスパイダーマンがいたのも微笑ましかった。大型のアメリカ車で混雑する街中をくるくるとすりぬけていくミニ・クーパーの小ささがたまらなく可愛い。しかし、ミニ・クーパーってあんなにいいエンジン音がするんだね。小さなボディから響く太いエンジン音がとても印象的だった。

(2003.07.06)




このページの目次




★映画『タイタニック(TITANIC)』を見た

テレビでレオナルド・ディカプリオ主演の映画『タイタニック』をやってたので、はじめて見た。

『TITANIC』
監督:James Cameron(ジェームス・キャメロン)
出演:Leonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)、Kate Winslet(ケイト・ウィンスレット)、Billy Zane(ビリー・ゼーン)、Kathy Bates(キャシー・ベイツ)、Gloria Stuart(グロリア・スチュアート)
1997年・アメリカ映画
189分

なんかさぁ、この映画、やたらと世間で「傑作ラヴストーリー」「感動的な恋愛劇」みたいな紹介・宣伝がされてて、これまでぜんぜん見る気がしなかった。ラヴ・ストーリーものってほとんど興味ないんだもん。それに、たぶんテレビ(地上波)で放映されるのはこれが2回目か3回目くらいだと思うんだけど、上映時間が長いこともあって毎回(今回も)2夜連続放映になってて、それだけでなんかめんどくさい気がしちゃうんだよね。

などと思いながらも、やっぱり有名な作品だし、幸い2夜連続で夜の予定はとくにないし、1回くらいは見ておかないとなということで、ワイン片手にテレビ放映を見始めたんだけど、これ、なかなかいい映画じゃん。

たしかにディカプリオたちのラヴ・ストーリーが中軸にはあるんだけど、いわゆる「恋愛劇」がテーマではないんだね、きっと。史実をベースにしたある種のパニック超大作に、きちんとした物語を盛り込んだといった印象を受けた。恋愛ものというよりは、どちらかというと『ポセイドン・アドヴェンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』などの系譜な気がする。

ぜったい沈まないといわれた超大型豪華客船が、その処女航海を終えることなく洋上の藻屑と消えるというドラマティックな(などというと怒られてしまいそうだけど)シチュエーションと、その状況でさまざまに揺れ動く人間の心理や行動を描くことがこの映画のテーマで、それをわかりやすく伝えるため、見る者が感情移入しやすくするために、ジャックとローズという身分違いの若者同士の恋愛を、いわば狂言まわし的に使っているわけだ。

そういう意味では、べつに「ラヴ・ストーリー」を中軸にもってこなくても映画としてつくることはできただろう。だからこれを「究極の恋愛映画」みたいに表現・評価するのは、ちょっと違うように思う。たぶんテーマはそこじゃないって。

でも、「あきらめずに生き続けた」(これがもしかしたらいちばん重要なメッセージかな?)ローズが最後にサルベージ船のうえからタイタニックの沈む(そしてジャックの眠る)海にダイヤを投げ入れるシーンは、あっさりと描かれているけれど、ちょっとジーンときた。

やはり映画は、配給会社等の的外れな宣伝コピー(「運命の恋。だれもそれを裂くことはできない」ですよ! 見当違いもいいところ)に惑わされず、自分の目で見て自分の心で感じなくちゃいかんなということを再認識したのでした。

(2003.06.29)




このページの目次




★映画『ソラリス(SOLARIS)』を見た

映画『ソラリス』を見てきました。

『SOLARIS』
監督:Steven Soderbergh(スティーヴン・ソダーバーグ)
出演:George Clooney(ジョージ・クルーニー)、Natascha McElhone(ナターシャ・マケルホーン)、Jeremy Davies(ジェレミー・デイヴィス)、Viora Davis(ヴィオラ・デイヴィス)、Ulrich Tukur(ウルリッヒ・トゥクール)
2003年・アメリカ映画
96分

感想。「あぁ、やっちゃったなぁ」。

原作はもちろんポーランドのSF古典『ソラリスの陽のもとに』ですが、原作とこの映画は、もしかしてぜんぜん関係がないかもってくらい違う内容になってる。たんに「不可思議な現象が起きる場所」として「ソラリス」というシチュエーションを選んだだけで、それが起こるのであれば、べつにソラリスじゃなくてもよかったのね、この映画。「ソラリス」という存在と人間の知性・理性・哲学・倫理観とのかかわり・葛藤が、幻想的・科学的・思索的に書かれた原作の雰囲気は残ってない。

配給会社がつけたキャッチコピーは「人類は、まだその領域には足を踏み入れてはならない」という、なんとなく原作に沿ったもののように思わせつつも、実際はけっきょく、けっこう単純なラヴ・ストーリーになっちゃったって感じ。それならそれで、ソラリスから離れてつくってもよかったのに。

ほんと、ソラリスである必要がない。かといって、ラヴ・ストーリーとしてももうひとつ中途半端だし、SFとしても楽しみきれないし、登場人物のキャラクター付けも確立していない。ある種の精神世界的なテーマも盛り込もうとしたのだろうけど、それもうまく描ききれていない。

登場人物がみんな、科学者のわりには感情に流されすぎ。知性、理性、科学と感情の狭間で複雑に揺れ動く部分に人間性の奥深さを感じさせた原作に対し、あまりに表面的というか、わかりやすい表現になってる。

原作ではもっと広い範囲での「人類」を見ていたはずなのに、映画ではほとんどケルヴィン博士「個人」に終始してる。かといって、ケルヴィン博士を「人類の代表」として描き、ケルヴィン博士個人に普遍的な「人類」を投影できるほどのキャラクター付けはできてない。

などなど、いろいろな意味で、面で、点で、まったく持って残念だなという印象。

映画としてはロシアのタルコフスキー監督による『惑星ソラリス』が歴史に残る名作として有名らしいけれど、自分はタルコフスキー版ソラリスは見たことがない。でもきっと、原作者と同じ東欧での映画化だから、もう少し「ソラリス」らしいものになっていたのだろうな。同じ「ソラリス」でも、アメリカで映画をつくると、中心テーマとしておく場所が「傷を負った恋愛感情」であるあたりに、いまのアメリカの病んだ心が見える気がする、といったところか。

ちかいうちにまた原作を読んで、そのすばらしさに触れ、はやくこの映画のことは忘れようっと。

(2003.06.22)




このページの目次




★映画『ダブル・ビジョン(Double Vision)』を見た

映画『ダブル・ビジョン』を見てきました。

『Double Vision』
監督:Chen Kuo-Fu(陳國富 チェン・クォフー)
出演:Tony Leung Ka-Fai(梁家輝 レオン・カーフェイ)、David Morse(デヴィッド・モース)、Rene Liu(劉若英 レネ・リュウ)
2002年・香港=台湾=アメリカ映画
110分

う〜ん、なんだろうなぁ。なんか、中途半端だなぁ。オカルト・ホラーのような、猟奇殺人系サイコ・スリラーのような、どっちつかずの内容。

せっかくの猟奇殺人現場なのに迫力も美意識もない画面。ご都合主義的に使われるオカルティック・パワー。テンポの悪いストーリー展開。思わせぶりなシーン。安易でがっかりするようなオチ。残念ながら自分には楽しみどころが見つけられなかった。

ひとつの眼球に瞳がふたつというアイデアと、それを実際に映像にしたシーンはグロテスクでそれなりによかった(気持ち悪いと同時におかしい)のだけど、そのアイデアをもっともっとストーリにからませられなかったのかなぁ。劇場予告は雰囲気があって、ちょっと期待してたのだけど。

なんか、「道教」「東洋の神秘」というイメージに頼りすぎで、脚本や映像にそれを「リアル」と感じさせるだけの密度が足りないのだな、きっと。映画のコピーは「ほんとうに、ほんとうに、邪なものを見た。」だけど、その「邪さ」がぜんぜん伝わってこない。脳に障害のある小娘のたんなる妄想にしか見えない。情感がうすかったなぁ。

たとえばストーリーのバックグラウンドにもっとこだわるとか、あるいは映像でのグロテスクさにこだわるとか、なんだったらアメリカ風に観客をびっくりさせることにこだわるとか、なにかもっとやり方があっただろうに。扱い方次第でもっとホラー・サスペンスとしての完成度が上げられたであろうに、そうできなかったのが残念だ。

(2003.06.14)




このページの目次




Pensiero! 別館 I

(C)MOA
inserted by FC2 system