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E


さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


*** canta(u)tore ***
Eddy Napoli / Edoardo Bennato / Eduardo De Crescenzo / Emilio Locurcio / Ennio Morricone / Enrico Boccadoro / Enrico Nascimbeni / Enrico Ruggeri / Enzo Avitabile / Enzo Capuano / Enzo Gragnaniello / Enzo Iacchetti / Eros Ramazzotti / Eugenio Finardi

*** canta(u)trice ***
Elena Ledda / Elsa Lila

*** gruppo ***
Equipe 84 / Era di Acquario




EDDY NAPOLI / SIENTE (1994)
 名前どおり、ナポリ出身のカンタウトーレ。これは1994年にリリースされたファースト・アルバムですが、なぜか1999年になって日本盤がリリースされました。
 ソロ・シンガーになる前は、Renzo Arbore Orchestra(レンツォ・アルボーレ・オーケストラ)にシンガーとして参加していたのだそうです。Renzo Arboreといえばナポリ音楽界の大物なわけですが、そこの出身であるEddy Napoli(エディ・ナポリ)のこのアルバムも、地中海を中心とした南ヨーロッパ、中近東からアフリカまでを思わせる、強い光と熱い情熱を感じさせる作品になっています。
 ナポリなこぶし回しが乗ったフラメンコ風のパッショネイトでリズミックな曲から、地中海の波のうえを吹き抜けていくゆっくりとした風を思わせるようなキラメキとたおやかさを持ったバラードまで、どれも人間的な生命感にあふれています。
 古くからの典型的なイタリアン・ポップスとは少し違うようには感じますが、最近の、ある意味なんでもありな力強いナポリ・ミュージックのひとつであることは、間違いないでしょう。トラッド系の非常にいい声をしたシンガーです。また、スパニッシュ風味も強いので、たとえばGipsy Kings(ジプシー・キングス)のファンなども楽しめるのではないでしょうか。(2000.03.12)



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EDOARDO BENNATO / SEMBRA IERI (2000)
 Edoardo Bennato(エドアルド・ベンナート)は非常に活動歴の長いカンタウトーレなのですが、自分はアルバムを聴くのがはじめてです。持っているオムニバスCDで、Gianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)とデュエットした1990年のワールドカップ・サッカーのテーマ曲「Un'estate italiana」「Viva la mamma」という曲は聴いたことはありますが、それだけです。
 2000年にリリースされた『Sembra ieri』はベスト盤なのだそうですが、「Viva la mamma」以外ははじめて聴く曲ばかりです。新曲が3曲収録されているのだそうですが、どれが新曲なのか、ぜんぜんわかりません。
 明るく元気な曲が多く、ちょっと喉に詰まったような声の感じとともに、独特のポップスが聴けます。いわゆるポップスとも、あるいはフォークとも違った雰囲気があるのは、曲のなかにどことなく土着音楽的な、プリミティヴなリズム・アレンジが見え隠れするからでしょうか。メロディの美しさやヴォーカルの説得力を聴かせるというよりは、ヴォーカルや曲展開を含めたリズム・アレンジの楽しさに魅力があるタイプに感じます。乾いたリズムにブラスなども入り、なんとなくアメリカ西海岸のロック、たとえばthe Doobie Brothers(ドゥービー・ブラザース)を思い起こさせられました。
 自分の好みの範囲からすると、ちょっと濃ゆさがたりません。歌にも、メロディやアレンジにも、もっとイメージが広がるなにかがほしいと感じます。悪くはないのだけど、アルバムとしての求心力が希薄なのも残念です。それについては、ベスト盤だからしかたないとはいえますが。(2001.04.22)



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EDUARDO DE CRESCENZO / NUDI (1987)
 Eduarudo De Crescenzo(エデュアルド・デ・クレッセンツォ)の唄う曲は、イタリアらしい明るい陽射しと暖かさに満ちています。素直な美しいメロディ展開やアレンジは、オーソドックスなイタリアン・ポップスといえるでしょう。
 彼の歌声には、大人の持つ懐の広さと、一抹の寂しさがあります。曲自体の哀愁度はけっして高くなく、どちらかというと明るい感じなのですが、それでもやはり彼を叙情派カンタウトーレと呼べるのは、声に含まれる哀愁のためでしょう。素朴で飾らない、素の心が感じられるシンガーです。その点で、Umberto Balsamo(ウンベルト・バルサモ)などとちょっと似た感じがあります。
 シンプルだけど味わい深い、典型的なイタリアン・ポップスが好きな人のための音楽ではないでしょうか。(1999.06.05)

EDUARDO DE CRESCENZO / C'E IL SOLE (1989)   alla "Musica"
 エデュアルド・デ・クレセンツォ(Eduardo De Crescenzo)は、80年代くらいから活躍しているらしいカンタウトーレ。サンレモ音楽祭にも出たことがあるようです。いまも現役かどうかはちょっとわかりません。
 派手ではないけれど、美しいイタリアン・メロディを唄います。落ち着いた、ウンベルト・バルサモ(Umberto Balsamo)にも通じる、大人の優しさや寂しさを感じさせる声を持った人です。
 『C'e il Sole』は、1989年にリリースされた、ロマンティックなアルバムです。(1998.04.01)

EDUARDO DE CRESCENZO / DOVE MUSICA C'E' (1997)
 彼はカンタウトーレとして、自分で曲を書いて唄いもするのですが、初期の頃はほとんど自作曲はなく、Claudio Mattone(クラウディオ・マットーネ)の楽曲提供を受けていたようです。このアルバムは1980年代の曲を集めたベスト盤で、ほとんどの曲がC.Mattoneの作品です。
 声と唄い方に独特の愛と哀しみがあるので、叙情派カンタウトーレ・ファンなら心に染みる部分が多いはずです。派手さはありませんが、よい曲がたくさん入っています。(1999.06.05)

EDUARDO DE CRESCENZO / LIVE (2002)
 Eduardo De Crescenzo(エデュアルド・デ・クレッシェンツォ)は1980年ころから活動しているナポリ出身のカンタウトーレ。初期のころはClaudio Mattone(クラウディオ・マットーネ)から曲提供を受けるなど、比較的恵まれたデヴューをしたようです。南イタリア出身らしいやわらかな明るさと暖かさ、そして哀愁が感じられます。
 このアルバムは、トップの1曲のみスタジオ収録で、あとは1995年に行なわれたコンサートを収録したもの。隙間と空間を感じさせる、あまり音数の多くない落ち着いた演奏が聴けます。ヴォーカルの合間合間に現われるアコーディオンの音色も印象的で、曲にほどよい哀愁を与えています。また、曲によってはヒューマンヴォイスも上手に使い、奥行きと深みを与えています。
 声の質や曲の装いは違いますが、もしかしたら1990年代以降のMango(マンゴ)に歌い方が似ているかもしれません。あまりロングトーンを使わず、それぞれの言葉の連なりの最後をフェイドアウト気味に歌うところに類似性を感じます。この歌い方が、はかない哀愁を醸し出すのにも役立っているといえるでしょう。
 Eduardoの曲をMangoに、Mangoの曲をEduardoに、それぞれ歌わせてみたら、また違った魅力がありそうだなと感じます。(2002.04.21)



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EMILIO LOCURCIO / L'ELIOGABALO (1977)
 参加アーティストが豪華なエミリオ・ロクルチオ(Emilio Locurcio)のアルバム。一応、カンタウトーレのアルバムですが、演奏面ではプログレ的なアレンジが施されており、非常に密度が濃い感じがします。エミリオの声も絡み付くような感じがあり、いっそう豊潤な印象を与えます。イタリアらしい叙情を、繊細で緊迫感のある演奏でくるんだような音楽です。
 部分的にピエロ・リュネール(Pierrot Lunaire。バックで参加しています)風味なところもあります。(1999.01.03)



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ENNIO MORRICONE & DULCE PONTES / FOCUS (2003)
イタリア映画音楽界の巨匠、Ennio Morricone(エンニオ・モッリコーネ)の曲を、Morricone自身の指揮による演奏で、ポルトガルのファド・シンガー、Dulce Pontes(ドゥルス・ポンテス)が歌うというアルバム。収録されているのは『ニュー・シネマ・パラダイス』『ザ・ミッション』など、おそらく彼の作品のなかでも有名な曲ばかりなのだろうけれど、じつは自分、あまり知りません。イタリア映画ってあんまり見たことないし。
大きな流れとゆったりしたメロディを持っている曲が多く、おだやかでゆるやかなオーケストラが曲の美しさを高めます。味わいのあるDulceの歌声もトラッド風味があっていい感じです。
ただ演奏形態が基本的にオーケストラ+ヴォーカルといったかたちで、リズム楽器が入っていないものが多いため、個人的には、少しものたりなさを感じてしまいます。当たり前なのですが、やはり映画音楽的、BGM的で、きれいでいい曲なんだろうけどあんまり世界に入っていけないというか、ちょっと退屈を感じてしまいます。
クラシックもそうなんですが、あのメロディ・構成・オーケストラ演奏に、ロック・フィーリングを持ったドラムとベースが入ればどれだけいいか、さらにエレキ・ギターも入れば完璧なのに……と中学生のころに感じてしまった自分は、やはりなるべくしてプログレッシヴ・ロック・ファンになったのだなと思います。
このアルバムも、この演奏にロック・バンドが絡んでいればなぁと思ってしまうのですが、その時点でアルバムに求めるものが間違っていますね、自分。 (UNIVERSAL MUSIC: 980 829-0 / EU盤CD) (2004.03.13)



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ENRICO BOCCADORO / STANNO AMANDOSI (1994)
 優しくて、ちょっと気の弱そうな、まじめでロマンティストな好青年といった感じがジャケットからうかがえるカンタウトーレです。そして、彼の作り出す音楽は、このイメージからそうはずれてはいないようです。
 これまでにアルバムをどれくらい出しているのか、そしてこのアルバム以後も活動をしているのか、情報を持っていないのですが、このアルバム自体はどうやら、ライナーなどを見た感じではベスト盤的色彩を持ったもののようです。たぶん、過去数枚からのベスト・セレクション+新曲といった内容になっているのでしょう。本当のところはよくわかりませんが。
 やわらかい声で明るくさわやかなミディアムテンポのメロディアスなポップスを歌うというのが、彼の持ち味のようです。そういう点で、日本のオメガトライブ(古いなぁ - 苦笑)系ともいえるかもしれません。夏が似合いそうだけど汗の臭いはせず、都会的でしゃれた感じもあり、海というよりはアメリカのロマンティック・コメディ映画などに出てきそうな都会のナイトライフといったおもむきもあります。
 イタリアらしいきれいなメロディもたくさんあり、それなりに楽しめるのですが、曲の展開力やアルバム全体の構成力の点でかなりおとなしめなため、BGM的になってしまっているように思います。このあたりにもまじめで気の弱そうな好青年ぽさを感じますが、できればもう少し展開力を持ってほしかったです。
 1曲1曲を聴くにはいいのだけど、アルバムとして聴くと全体の詰めが甘く、ちょっと飽きてしまいます。(2000.09.16)



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ENRICO NASCIMBENI / AMORI DISORDINATI (2002)   alla "Musica"
 収録されている曲はどれも、なんということのない曲ばかりなのですが、なんとなく「よい感じ」に聴こえるのは、ほどよく深みとやさしさのある少しひび割れた声のせいでもあるのでしょう。それに、こじんまりとはしているものの、どこか人懐こくて好感の持てるメロディやフレーズが多いこともあるでしょう。アレンジも、派手ではないけれど清涼感や哀愁、軽やかさといったものがバランスよく配されていて、陰影の濃いイタリアの街並みを思い起こさせます。(2003.03.02)



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ENRICO RUGGERI / CONTATTI (1989)
 全部で11曲収録されているのですが、自作曲は4曲で、他はカバーのようです。もしかしたら企画ものなのかもしれません。
 カバーされているのはFrancesco De Gregori(フランチェスコ・デ・グレゴーリ)Sergio Endrigo(セルジォ・エンドリゴ)、gli Alunni del Sole(アルンニ・デル・ソーレ)などの曲で、バックには旧ソ連のオーケストラを従えていますが、それほどドラマティックにサポートされているわけではなく、どちらかというとひなびた哀愁を演出するのに役立っているといえます。口先で唄うようなEnrico Ruggeri(エンリコ・ルッジェーリ)のちょっとカスレ気味のヴォーカルは、奥行きや厚みには欠けますが、それなりに個性があって、イタリアン・ポップス・ファンには楽しめるものでしょう。
 Alunni del Soleのカバーの「'A Canzuncella」では途中にイギリスのQueen(クイーン)の「Somebody to Love」を挿入するなど、工夫をしています。他の曲も、古いイタリアらしいもの、最近ふうのもの、ロシアふうのものなど、それぞれの曲には楽しめる要素も多いのですが、アルバムとして聴いた場合の印象は多少、散漫に感じます。(1999.08.15)

ENRICO RUGGERI / GLI OCCHI DEL MUSICISTA (2003)   alla "Musica"
2003年のサンレモ音楽祭参加曲「Primavera a Sarajevo」を含んだアルバム。そのサンレモ曲もそうでしたが、全体にどこか懐かしい感じの、グッド・オールド・タイムのイタリアを思わせる曲が多く収録されています。アコーディオンなどが導入され、古いナポレターナの味わいを漂わせるM1「Gli occhi del musicista」など、最近の曲にはあまりない、いい感じです。M14「Primavera a Sarajevo」は2003年のサンレモ参加曲。東欧と南欧のひなびた感じをあわせ持ったような、ちょっと独特な雰囲気のある曲です。サンレモでの評価はあまり芳しくなかったようですが、個人的には、この年のサンレモ参加曲のなかではかなり気に入っています。 (2004.01.13)



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ENZO AVITABILE / SOS BROTHERS (1990)
 自分はジャズやソウルをベースにしたポップス、いわゆるアメリカの黒人系音楽に類するものが苦手です。世の中的にはソウルやR&Bが大流行な感じの昨今ですが、ほとんどの曲について、自分にはいいと思えません。
 これはアメリカや日本のミュージシャンに限らず、イタリアのミュージシャンでも、そういったテイストを持ったものは基本的に楽しめません。なので、イタリアン・ポップスのファンのあいだで評価の高いNino Buonocore(ニーノ・ブオノコーレ)Pino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)も、そんなに良いと思えないことのほうが多くあります。
 Enzo Avitabile(エンツォ・アヴィタービレ)も、タイプとしてはジャズやソウルをベースとしたポップスを演奏するカンタウトーレです。なので、自分の好みには合わないはずなのですが、なぜか、そんなに嫌な感じがしません。声の感じがEnzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ)に似ていて好みのタイプだからでしょうか。
 それと多分、Nino BuonocorePino Danieleの音楽は、おなじジャズ・ベースでもアメリカの音楽を思わせるのに対し、Enzo Avitabileはイギリスの音楽、いわゆるホワイト・ソウルやブルーアイド・ソウルに近い感じがしたり、あるいは地中海音楽的な感じがしたりで、アメリカをあまり感じさせないからかもしれません。
 小気味良いギターのカッティングにちょっとメロウなサキソフォンがからみ、どことなく色気があります。アメリカの場合、この色気が濃厚すぎたり、あるいは逆に、あまりにもあっけらかんとしていて、そこが興ざめなところがあるのですが、Enzoはそのあたりのバランス感覚が優れているのでしょう。ときにコミカル、ときにセンチメンタルで、こういったジャンルの音楽が苦手な自分でも、最後まで飽きずに聴くことができました。(2000.11.12)



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ENZO CAPUANO / STORIA MAI SCRITTA (1975)   alla "Musica"
 エンツォ・カプアーノ(ENZO CAPUANO)のこのアルバムは、タイプとしてはプログレの範疇に入るのでしょう。エンツォはギタリスト/ヴォーカリストで、彼のリーダーアルバムですが、ヴォーカル・パートは最初と最後の、ほんのちょっとしかありません。
 アコースティック・ギターと各種鍵盤楽器(マリオ・パンセーリ Mario Panseli がひいてます)を中心とした、繊細で透明感のある、どこか張り詰めた哀しみを感じさせる曲が展開されます。(1998.12.06)



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ENZO GRAGNANIELLO / FUJENTE (1990)   alla "Musica"
 1999年のサンレモ音楽祭参加曲「Alberi」を収録したアルバム『Oltre gli alberi』では、いぶし銀的な、かなり渋い唄を聴かせたEnzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ)ですが、このアルバムではもっとポップです。ふやけたキーボードや、ファンキーなブラスのアレンジもあり、ナポリ・ポップならではの「なんでもあり」な雑多な感じも楽しめます。
 ガット・ギターを導入し、南欧のジプシー音楽風なエキゾティシズムを持った曲では、素朴ななかに生命の輝きを強く放つ彼の唄声から、海辺で日光浴する人々、狭い路地の石畳を細く照らす太陽の光と影、そしてそこに暮らす人々の喧騒が、鮮烈なイメージとして浮かび上がります。(2000.11.12)

ENZO GRAGNANIELLO / POSTEGGIATORE ABUSIVO (1995)
 だみ声シンガーの多いイタリアですが、なかでもナポリ出身のカンタウトーレ、Enzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ)のだみ声は、その強烈な個性という点で一歩抜き出ています。
 熱いパッションを感じさせる、少し鼻にかかったようなしわがれ声は、南部の強い陽射しと力強さを感じさせます。Banco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)のギタリスト、Rodolfo Maltese(ロドルフォ・マルテーゼ)らが結成した地中海ロックを演奏するグループ、Indaco(インダコ)のアルバムにスキャットで参加しているEnzoですが、彼の声が入ったとたん、Indacoの演奏から南イタリアの強い陽射しが一気に注ぎだされるような感覚にとらわれ、改めて彼の声の持つパワーを再認識しました。
 彼は自分で曲をつくるカンタウトーレですが、1995年リリースのこのアルバムには自作曲がひとつも収録されていません。その代わり、彼の出身地であるナポリで古くから愛されているナポレターナが、愛情深く歌われています。自分は古いナポレターナに詳しくないのでよく知らないのですが、たぶん、どれも有名な曲なのでしょう。ちなみに「Tu ca nun chiagne」という曲はil Giardino dei Semplici(イル・ジャルディーノ・デイ・センプリーチ)Massimo Ranieri(マッシモ・ラニエリ)なども歌っているので、かなり有名な曲でしょう。それらの曲をガットギター1本のみによる演奏をバックに、Enzoが表情豊かに歌い上げるという作品になっています。
 その点で非常に地味だし、ポップスやフォークというよりは純粋にナポレターナなので、聴き手を多少、選ぶアルバムとはいえるかもしれません。しかし、ある種の南イタリアらしさを感じるには充分であり、楽しめる作品だと思います。(2000.09.16)

ENZO GRAGNANIELLO / CONTINUERO' (1996)   alla "Musica"
 キラメキと哀愁の交錯する地中海ポップスをベースにした音楽が楽しめます。広く東西ヨーロッパからアラブ、中近東へと広がるイメージが、現れては消えていきます。素朴なカンタウトーレ風であったり、雑多なアレンジの入り混じった地中海ポップス風であったりと、収録されている曲の感じには幅がありますが、個性的なヴォーカルによって、アルバムとしての求心力が与えられています。一見ごちゃごちゃとしていながらも、なんとなくまとまっている感じがするところが、いかにも地中海的です。(2002.12.01)

ENZO GRAGNANIELLO / OLTRE GLI ALBERI (1999)
 低めの渋いしわがれ声を持ったカンタウトーレ。一応、現代風のスッキリしたアレンジもありますが、ポップスというよりは「燻し銀」という言葉が似合うような、演歌や漁師唄のような感じです。たとえば「兄弟船」のような声と唄い方に感じが近いように思うのですが、どうでしょうか。とくに1999年のサンレモ参加曲で、Ornella Vanoni(オルネラ・ヴァノーニ)とデュエットした「Alberi」などはその傾向が強いように感じます。
 ドラマティックな展開や、高音域での張りのある熱唱などは期待できません。また、コーラスでil Giardino dei Semplici(ジャルディーノ・デイ・センプリーチ)が参加していますが、とくに効果も影響も感じません。ちょっと困りました。とにかく渋いです。(1999.07.03)

ENZO GRAGNANIELLO / BALIA (2001)   alla "Musica"
地中海音楽アーティストらしい「なんでもあり」的な要素がうかがえます。基本はナポリに根ざした哀愁の歌ですが、それが広く南イタリア、南ヨーロッパ的な哀愁へと広がります。かと思うと、曲によってはパンフルートが入ってフォルクローレ風になったり、日本の琴のような楽器の音色が聞こえる曲もあります。また、ラップもあります。このように曲調にいくつかの変化をつけてはいますが、どのような曲でもEnzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ)の個性の強いヴォーカルが乗るだけで「Enzoの曲」になります。うなるような渋いだみ声で、日本の演歌とか漁師歌に似合いそうなヴォーカルが、強烈な求心力を持っているからでしょう。こういった、個性の強い歌声を持ったカンタウトーレって、自分は大好きなんです。日本ではあまり(ぜんぜん?)人気がない感じですが、非常にイタリアらしいカンタウトーレだと思います。 (MULTIVISION ENTERTAINMENT / SONY MUSIC ENTERTAINMENT: MTS 503132 2 / オランダ盤CD) (2004.12.25)

ENZO GRAGNANIELLO / CU' MME' (2003)
1954年8月20日ナポリ生まれのEnzo Gragnaniello(エンツォ・グラニャニエッロ)は、好きなカンタウトーレのひとりです。オーソドックスなナポレターナから哀愁のイタリアン・ポップス、実験的要素の入ったモダンなポップスまで、彼がつくり歌う曲の幅は広いのですが、どんな曲を歌っても「Enzoの歌」を強く主張する個性的な歌声が、自分には非常に魅力的に響くのです。
この『Cu' mme'』というアルバムは、イタリアのネット・ショップで安く売っていたので購入してみたのですが、どうやら新録によるベスト盤のようです。リリース元がD.V.MORE RECORDで、ちょっと嫌な予感はしたのですが、全体に軽い、スカスカ・パタパタした演奏になっています。ある意味でいえばモダンなアレンジなのかもしれませんが、味わい深いEnzoの声には、こういった薄っぺらい感じのアレンジは似合わないと思います。へなちょこなキーボード・オーケストラをつけるくらいなら、ガット・ギター1本で歌ったほうが、彼の魅力が強く感じられることでしょう。
ベスト盤だけあって、魅力的な曲が選曲されているようなのですが、せっかくの曲のよさとヴォーカルのよさを演奏が打ち消してしまっているような印象です。初めて彼の作品に触れようという人が、安いからといってこのアルバムを選ばないことを祈ります。 (D.V.MORE RECORD: CDDV 6681 / イタリア盤CD) (2006.06.18)



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ENZO IACCHETTI / LA VERA STORIA DI BABBO NATALE (1996)
 いわゆるひとつのクリスマス企画アルバムなのかもしれません。有名な「ホワイト・クリスマス」のイタリア語ヴァージョンで始まり、アルバム・タイトルになっている「サンタクロースの本当のお話」の語りと、Enzo Iacchetti(エンツォ・イアッケッティ)作によるクリスマス・ソングと子守唄が交互に現われる構成になっています。ヴォーカルも、多分Enzo本人であろう大人の声と子供たちによるコーラスとがあり、純粋にイタリアン・ポップスとして楽しむアルバムではないのですが、それぞれの曲の持つメロディがとても暖かく、優しさにあふれています。
 質素に飾り付けられたNatale(クリスマス)の夜、窓の外は厚い雪が積もっていて寒いのだけど、部屋のなかは暖炉の火が柔らかい灯りを投げかけ、おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さん、それに子供たちが、穏やかな雰囲気のなかでそれぞれのありふれた幸福を祝いあう──そんな風景が浮かぶような、心暖まるアルバムです。(2000.01.10)



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EROS RAMAZZOTTI / CUORI AGITATI (1985)
 Eros Ramazzotti(エロス・ラマッゾッティ)といえば、ゆったりとしたおおらかなメロディ、イタリアの強い太陽を思わせる明るさ、ちょっとクセのあるやわらかなヴォーカルが魅力のカンタウトーレですが、Matia Bazar(マティア・バザール)Piero Cassano(ピエロ・カッサーノ)がプロデュースしたこのデヴューアルバム『Cuori agitati』(「揺れる心」といった意味でしょうか)では、のちに彼の特徴、魅力となるこれらの要素は、それほど開花していません。曲のはしばしにその一端はうかがえますが、まだ開幕前あるいは序章といった感じです。
 アルバムの制作された年代のせいもあると思いますが、派手な音使いのキーボードが、使い方としては派手ではないのですが、曲の印象を深みのないものにしてしまっています。Erosのヴォーカルもまだ硬く、伸びや声の出方の面で未熟を感じます。曲も、のちの作品にくらべれば小粒で、曲から広がるイメージに豊かさがあまりありません。結果として、それほど特徴や個性のない、比較的ありがちなアルバムになっていると思います。ただ、そのなかでもErosの声は、未熟ながらも個性的で、耳に残ることはたしかです。
 このアルバムだけで終わっていたら、どうということのないシンガーだったでしょうが、これ以降も一定のレベルの作品を発表しつづけ、曲にも歌にもErosならではの色、スタイルを確立できたのは立派です。その点で彼はやはり、優れたカンタウトーレだといえます。(2001.03.18)

EROS RAMAZZOTTI / NUOVI EROI (1986)
 Eros Ramazzotti(エロス・ラマゾッティ)のセカンドアルバム。デヴュー作の『Cuori agiti』では、まだErosらしさといったものがあまり出ておらず、端々に良い面はうかがえるものの、けっこう凡庸な作品でした。しかし、このセカンドアルバムでは、のちの作品で彼の個性として確立されるおおらかで美しいメロディが、ふんだんに聴けます。
 近年は軽やかで明るくポップな作風が多いErosですが、ここではそういった面もある一方で、より哀愁度の高い曲も多く収録されています。その点で、近作よりもイタリアらしいポップスだといえるでしょう。イタリアならではのやわらかな叙情と哀愁が好きなポップス・ファンには、こういった初期の作品のほうがアピールしそうです。
 キーボードの音色やアレンジなどは、いま聴くと少し古臭く、安っぽさも感じます。しかし、Erosの乾いたヴォーカルには、こういった音色とアレンジは、けっこう合っているとも感じられますし、思ったよりみずみずしさがあります。メロディや曲構成に大げさな展開やいかにもなドラマティックさがなく、そのかわり良いフレーズを多く持ったシンプルなメロディアス・ポップスになっているため、意外と時代のほこりに埋もれることなく、みずみずしさを保てるのかもしれません。(2001.08.19)

Eros Ramazzotti / Musica e' (1988)
 いまや大スターとなったエロス・ラマゾッティ(Eros Ramazzotti)が1988年に出したミニアルバムに、3曲のボーナストラックを入れて、95年に再発されたアルバム。
 タイトル曲は大ヒットしたらしい長編バラードだけど、もう少しサビでの爆発力・瞬発力があればなぁ。もともと声に密度があまりない人なので、こういう濃いタイプの曲より、最近のような軽いタイプの曲のほうがあうように思います。
 他の曲についても、まだ自分のスタイルを模索中という感じで、魅力のひとつであるおおらかさも、まだこの時点ではあまり感じられません。ところどころいいものはあるのだけどね。(1998.10.04)

EROS RAMAZZOTTI / TUTTE STORIE (1993)
 ゆったりとしたおおらかなメロディとおだやかな明るさは、このころのEros Ramazzotti(エロス・ラマゾッティ)の大きな魅力でしょう。Piero Cassano(ピエロ・カッサーノ)のプロデュースも時代を感じさせるエレ・ポップ的な部分がなくなり、やわらかなメロディが引き立つようなアレンジが中心となっています。のちにPieroのもとを離れEros自身でアルバムをプロデュースするようになってからの作品には薄れてしまったイタリアらしい情感が、このころの作品には色濃く残っています。
 Erosの声には明るく乾いた響きがあるので、イタリアらしい情感に満ちたロマンティックな曲調のものでも、情に流される感じはしません。このあたりのバランスのよさは、PieroのプロデュースとErosのアーティストとしての感性がうまく作用した結果なのでしょう。
 歌も、バックの演奏も、とても伸び伸びとしているように聴こえます。あたたかく、ほんのりとロマンティックなイタリアン・ポップスが楽しめるアルバムです。
 なお、Renato Zero(レナート・ゼロ)のアルバムのプロデュースなどでも知られるPhil Palmer(フィル・パーマー)がギターで、King Crimson(キング・クリムゾン)Claudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)のツアーなどに参加していたスティック奏者のTony Levin(トニー・レヴィン)がベースで、それぞれゲスト参加しています。(2001.09.16)

EROS RAMAZZOTTI / EROS LIVE (1998)
 Eros Ramazzotti(エロス・ラマッゾッティ)の音楽性って、日本でいういわゆるカンツォーネやナポレターナのあとの世代の、典型的なイタリアン・ポップスの一種だと思います。おおらかなメロディと明るさと軽やかさと、そしてほんのり味付け程度の哀愁が、イタリアぽくありながらもあまり濃い感じがなく、イタリアン・ポップスのファンだけでなく、いわゆる洋楽ポップスのファンにも受け入れられやすそうだなと感じます。
 このアルバムは、そんなErosのライヴ盤で、デヴュー作『Cuori agiti』から当時の最新オリジナル・アルバムである『Dove c'e' musica』の曲まで、幅広く選曲されています。
 オーディエンス席の音声があまり入っていないのは、意図的にカットしたのでしょうか。曲間の歓声は聴こえますが、イタリアのライヴ盤によくあるオーディエンスの大合唱は聴こえません。そのあたりが自分としてはちょっと不満です。
 M7「That's All I Need To Know / Difendero'」ではJoe Cocker(ジョー・コッカー)と、M11「Cose della vita / Can't Stop Thinking Of You」ではTina Turner(ティナ・ターナー)とデュエットしています。Joeとは声の相性がよい感じですが、Tinaには声量でも歌い方でもパワー負けしていて、デュエットの魅力がそれほど感じられません。といっても、Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)Luciano Pavarotti(ルチアーノ・パヴァロッティ)といったテノール歌手とのデュエットほどの相性の悪さはないですが。
 全体的にはErosらしい軽やかさがきちんと収録されていて、Erosらしいライヴではないかと思います。聴きやすいイタリアン・ポップス・ライヴのひとつでしょう。(2003.03.02)

EROS RAMAZZOTTI / 9 (2003)
自分にとってEros Ramazzoti(エロス・ラマッゾッティ)って、いまやすっかり定番というか、メジャーすぎて、その気になればいつでも聴ける、いつでもCDが手に入るという感じが強く、そのためにかえって聴かないアーティストのひとりだったりします。実際、初期のころのアルバムはけっこう持っているけど、最近のアルバムって、あんまり持ってません。ひさしぶりに聴いたこのニューアルバムも、なにげにコピーだったりするし(苦笑)。
それはさておき、すでにデビューから20年以上経ち、すっかりヴェテランの域に入った感のあるErosですが、曲やヴォーカルの持つイメージは、むかしとほとんど変わりませんね。デビュー当時よりも曲やアレンジが多少スタイリッシュになったのと、キャリアを重ねたことによるだろう落ち着きがヴォーカルに出てきたかなという以外に、基本的にはおんなじな気がします。
おおらかで暖かみのある歌で、ほどよく哀愁もあり、メロディアスで聴きやすい。デビュー当時は少しクセがあった声も、いまではすっかりこなれて、いっそう「王道イタリアン・ポップス」に近づいた気がします。M6「Un'ancora nel vento」などでは最近のエレクトリック・ロック風なアレンジもほんの少し(ほんとにほんの少しだけ)導入したりといった工夫もありますが、全体にはM3「Un'emozione per sempre」に代表されるような、いかにもErosらしい軽やかなポップスが中心になっていますし、またこういったタイプの曲のクオリティがアルバムのなかでも高いように思います。
力作とか名作とはいいませんが、イタリアンの初心者にも中級者にも(こういった区分けに意味があるのかわかりませんが)すすめやすいし、聴いて楽しめるアルバムだと思います。 (2004.01.04)



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EUGENIO FINARDI / SUGO (1976)
1952年7月16日、ミラノ生まれ。1970年代にデビューして、おそらくいまも現役で活動中の硬派なカンタウトーレ、Eugenio Finardi(エウジェニオ・フィナルディ)が、テクニシャン集団であるジャズ・ロック・グループ、Area(アレア)のメンバーをバックに従えてリリースしたアルバムです。
Eugenioの曲って、自分はあまり聴いたことがなく、アルバムも、この『Sugo』と、ベスト盤と思われる『La forza dell'amore 2』しか持っていません。曲のメロディや構成の美しさで聴かせるタイプというよりは、おそらくなにかのメッセージ色がある歌詞を力強いヴォーカルで聴かせるタイプといった印象を自分は持っていて、イタリア語がわからない自分にはとっつきにくいし、その良さを感じにくいアーティストのひとりです。
『Sugo』は、バックがAreaということもあってイタリアン・プログレッシヴ・ファンのあいだではよく知られた作品なのですが、自分はあんまり興味を持てず。カンタウトーレ(歌もの)作品として楽しむには歌メロの魅力に欠けるし、プログレッシヴ・ロックとして楽しむには構成の魅力に欠ける、といった印象です。
ただ、バックの演奏そのものはテクニカルでキレがあり、ほんのり地中海風な香りもあったりして、なかなか魅力的。手元にあるのはLPをMDにコピーしたものなのですが、リズム・セクションが非常に良い音で録れていて、力強くて引き締まった演奏を聴かせてくれます。インスト曲も数曲あります。
Eugenioのファンがこのアルバムをどう捉えているのかわかりませんが、なんとなく、EugenioファンにとってもAreaファンにとっても微妙な位置づけにあるような気がする、そんな作品でした。(POLYGRAM DISCHI/CRAMPS RECORDS: 5205 152 / イタリア盤LP) (2007.03.17)

EUGENIO FINARDI / LA FORZA DELL'AMORE 2 (2001)   alla "Musica"
 1980年代以降の曲を集めたベスト盤です。自分はこれまで、Eugenio Finardi(エウジェニオ・フィナルディ)のことを、どちらかというと硬派でアーティスティックな、ちょっととっつきにくいカンタウトーレと感じていました。しかし、このベスト盤を聴くと、意外とやわらかで美しいメロディを持っていて、それほどとっつきにくい感じはありません。比較的多様なアレンジの曲が収録されているので、彼の音楽を総体的に知るためのサンプルとしては、なかなかよいのではないかと思います。(2001.04.22)



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ELENA LEDDA / MAREMANNU (2000)   alla "Musica"
半分以上はサルデーニャのトラッド・ミュージックのようです。歌詞もサルデーニャ語のようですが、手元のCDはドイツでリリースされたものなのか、ドイツ語訳詞と英語訳詞がついてます(標準イタリア語訳はなし)。完全なトラッドというわけではなく、地中海ポップス的なアレンジもあるのですが、それでも、トラッド風の音楽に興味がないポピュラー・ミュージック・ファンには少しつらいかもしれません。 (VOLTON MUSIKVERLAG / BIBER RECORDS: BIBER 76691 / ドイツ盤CD) (2007.07.29)



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ELSA LILA / ELSA (2003)   alla "Musica"
もう、なんていうか、すごく正統派なイタリアン・ポップス。最近のイタリアン・ポップ・ミュージックを(だけでなく、世界中のポップ・ミュージックも)侵食しまくりのR&B/ヒップ・ホップ色が皆無で、個人的にとても好印象です。曲のタイプとしては、Laura Pausini(ラウラ・パウジーニ)直系といった感じでしょうか。イタリア語の響きの美しさを存分に生かした素直なメロディ。ゆったりとしてておおらかなフレーズ。シンプルだけどストレートに「きれいな旋律だよなぁ」と思う歌メロを丁寧にやさしく包み込むオーケストレーション。収録されているのはミディアム・スローなバラードが中心ですが、それぞれの曲にちょっとしたロング・トーン・パートがあり、イタリアらしい「歌い上げ系」ヴォーカルが堪能できます。 (BMG RICORDI: 82876513122 / EU盤CD) (2004.12.25)



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EQUIPE 84 / ID (1970)   alla "Musica"
 1960年代から70年代に主に活動したグループ。もともとはビート・ポップスを演奏していたらしいですが、1970年代の初期にプログレッシヴな要素を持った作品をリリースし、プログレッシヴ・ファンにも愛されています。メロトロンとプリミティヴなパーカッションによる神秘の森に迷い込んだかのようなオープニングはプログレっぽい感じですが、その後は古いブリティッシュ・ポップスのような、やわらかくあたたかい曲が中心になります。フレーズのそれぞれにはイタリアらしいおおらかさとなめらかさがあり、よい時代のイギリスとイタリアのポップスのエッセンスがうまく混ざり合っている印象を受けます。(2002.03.17)

EQUIPE 84 / CASA MIA (1971)   alla "Musica"
 1970年にリリースされた前作『ID』は、ブリティッシュ・ポップスな風味が全体に強かったのですが、このアルバムではイタリアンな味わいが強くなっているように思います。もちろん、ところどころにブリティッシュな印象も残っていて、とくにアルバムの後半にくるとその傾向が強いのですが、メロディやアレンジその他に、いにしえのイタリアン・ポップスや古いカンタウトーレのような、やわらかな香りが漂っています。(2002.04.21)

EQUIPE 84 / I SUCCESSI DEGLI EQUIPE 84 (1995)
 1960年代後半の曲を集めたベスト盤です。『ID』などのプログレッシヴな(?)アルバムをリリースする前で、それほどイタリアらしさというものが強くは出ていません。古いイギリスやアメリカのフォーク・ロックなどに印象が近いでしょう。やわらかくほのぼのとした感じの曲が多く、こじんまりとしていますが、あたたかいフレーズが好ましいです。
 M2「Un anno」では木管やマンドリンも導入され、たおやかなメロディと展開はなんとなくProcol Harum(プロコル・ハルム)を思い出しました。またM8「Nel cuore, nell'anima」では粗い肌触りのオーケストラが大きく導入されていて、初期のElectric Light Orchestra(エレクトリック・ライト・オーケストラ。ELO)を思い出させます。
 そのほかにもフルートやストリングスの導入されている曲が多く、それらが豪華な艶やかさを演出するのではなく、ちょっとひなびた人懐っこさを醸し出しているのが好感触です。また美しいコーラスも多くの曲で楽しめます。
 全体に初期のELOMoody Blues(ムーディ・ブルース)、それにProcol HarumThe Mamas & The Papas(ママス・アンド・パパス)などに似た肌触りがあり、そこにイタリアなフレーズが乗ります。センスのないブラスのアレンジはいかにも古臭くていただけませんが、素直なメロディ・ラインに好感が持てます。(2002.12.01)



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ERA DI ACQUARIO / ANTOLOGIA (1973)
アルバムは、美しいアコースティック・ギターのアルペジオとフルートから始まります。
このままスペインのGotic(ゴティック)のようになっていくのかと思ったら、M2「Padre mio」ではいかにもなイタリアらしいパッションにあふれた熱いヴォーカルが聴けます。フルートはここでも使われているものの、ドタバタしたリズムが暴れていて、今度はDelirium(デリリウム)などのようなツバ飛ばしフルート系ヘヴィ・シンフォになるのかと思ったら、M3「Idda」ではアコースティック・ギターのストロークにスライド・ギターがバックに響くサイケ・フォーク風になり、次々とこちらの予測を裏切ってくれて楽しいです。
こういった「なんでもあり」っぽいところが、この時代のプログレッシヴ・ロック、イタリアン・ロックの魅力ですね。
ところがM4「Solitudine」、M5「Vento d'Affrica」、M6「Monika aus wien」はアコースティック・ギターのストロークと薄いキーボード・オーケストレーションをバックにフルートがロマンティックなフレーズを奏でるインストゥルメンタル。こうなってくると古い映画のサントラ風です。Stelvio Cipriani(ステルヴィオ・チプリアーニ)とか思い出しちゃいました。
かと思えばM7「L'indifferenza」では女性コーラスも入り、Osanna(オザンナ)などにも通じる(?)呪術的な雰囲気を漂わせます。おどろげなアコースティック・ギターと清らかなフルートの音色の対比、抑制されたヴォーカルが、いかにもイタリアン・ロックぽいです。
M8「Fuori al sole」、M10「Statale」はけっこう平凡なインスト・ロック、M9「Geraldine」は初期のころのNew Trolls(ニュー・トロルス)などにも通じそうな独特の重さを持ったポップスと、なんだかアルバムとしては脈絡がありません。
けっきょくこのグループ、なにをめざしてたんですかねぇ。 (RCA ITALIANA/BMG ITALY: 74321982862 / イタリア盤CD) (2004.03.13)



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