MiniRevueTitle


HUNGARY


さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


Color / Crystal / East / Kormoran / Locomotiv GT / Muzsikas es Sebestyen Marta / Omega / Piramis




COLOR / COLOR (1978)
ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ。同じハンガリーのOmega(オメガ)のように、東欧らしい哀愁にあふれた曲を聴かせてくれます。ただ、Omegaよりはすっきりとした清涼感があり、それほど演歌臭くないところが魅力です。スペーシー感の漂うキーボードに抑え気味のヴォーカルが、ちょっと冷たい空気を感じさせます。
随所でヴァイオリンなども入り、なかなか質の高いプログレッシヴ・ロック、シンフォニック・ロックになっています。あまり話題になることの多くないグループな気がしますが、Omega、Soraris(ソラリス)、East(イースト)などに決して引けを取らないハンガリアン・グループでしょう。曲の終わり方やアレンジなどに「あっさりしすぎかな」という印象を抱く部分もありますが、あまり引っ張らないバランス感覚がかえって、最近の音楽ファンには合いそうな気もします。
M4「Kolcson」などはちょっとありきたりな古い感じのポップスですが、ストリングス・キーボードやひずんだギターのストローク、さわやかなコーラスなど、出始めのころの産業ロックふうな味わいがけっこう心地いいです。
M8「Panoptikum」では東欧トラッドふうの味付けも聴かせます。また、どことなくBarcley James Harvest(バークレイ・ジェームス・ハーベスト)ぽいニュアンスもあったりします。
ボーナス・トラックのM9「Vallomas」、M10「Fenyes Kovek」では女声ヴォーカルやコーラスも入り、なんか幸せなゆるいキーボードのバッキングなどとともに、フラワー世代を思い起こさせるような雰囲気を持っています。(MAMBO RECORDS/HUGAROTON: HCD17567 / ハンガリー盤CD) (2003.07.20)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



CRYSTAL / TRILOGIA (2004)   alla "Musica"
男性ふたりに女性ひとりのヴォーカル・グループです。ハンガリー・ソニーが大々的にプッシュしてるんだそうです。なんか、変なアルバム。オープニングはアイリッシュ・トラッド風の哀愁に満ちた音色とメロディが聞こえてきて、ハンガリーでトラッド風味といえばKormoran(コルモラン)?とか一瞬あたまに浮かんで期待したのですが、その後はいかにもダンス・ビート風な強調されたリズム隊に乗ったポップスになってしまいました。かと思うと、バラードではもうべたべたで、韓国の恋愛系映画の主題歌ですかみたいな感じになってしまい、と思ってたら今度は突然のシンフォニー。思いっきりオーケストラです。以下、ダンス・ビートのうえにきれいなメロディ&哀愁トラッド風味ちりばめ系の曲、バラード系の曲、ロック・シンフォニーが交代で現われる、というようなアルバムになってます。アルバムとしての構成、これでいいのでしょうか? (EPIC/SONY MUSIC ENTERTAINMENT: EPC 518954 2 / ハンガリー盤CD) (2006.02.05)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



EAST / JATEKOK (1981)   alla "Musica"
ハンガリーのロック・グループ、East(イースト)のデビュー・アルバムでしたっけ。シンセサイザーによるコズミックでスペーシーな味付けと、ロックを感じさせる太い音のエレキギター。この組み合わせがなんとなく、音色的にはマッチしていないというか、いい意味での違和感を醸し出し、けっこうポップな曲調で印象が流れてしまうのを防いでいるように感じます。そして、ハンガリー語によるヴォーカル。ハンガリー語って微妙にリズムに乗りにくい言語のような気がするのですが、それが独特の哀愁を加味します。Eastの音楽って意外と軽やかで明るいと思うのですが、そこにもっさりしたハンガリー語が乗ることで、東欧らしい陰影が生まれるのでしょう。 (HUNGAROTON: HCD 17679 / ハンガリー盤CD) (2005.10.10)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



KORMORAN / KELJ FEL PETOFI... ZUGJATOK HARANGOK, 1848 (2003)
ハンガリーのKormoran(コルモラン)は、もともとはトラッド系のグループらしいです。でも、このアルバムを聴くかぎりでは、トラッド的な要素を持ったポップス/ロックとして充分に楽しめます。キーボードのコードワークをバックに、だんだんと感情の高まっていく詩の朗読から始まるこのアルバムは1998年のライブを収録した作品らしいのですが、観客の歓声等は入っていないので、いわれないとそうとは気づかないでしょう。
男性ヴォーカルをメインに、けっこう力強い歌が聴けます。男声、女声、混声といったコーラスの導入頻度も高く、合唱ロック/ポップスが好きな自分としては、かなり好感触。ただ、コーラスの導入がある種の宗教的な厳かさを出すことに寄与するのではなく、どちらかというとラヴ&ピース系の、フラワームーヴメントを思わせるタイプなのがちょっと残念。こういうのも嫌いではないのだけど、重厚さと厳格さを感じさせるコーラスだったらもっと自分好みだったのですが。
とはいえ、メロディ展開や構成はなかなかにドラマティックで、聴き応えがあります。シンフォニックなアレンジを施されたものやスケール感のある曲も多くありますが、演奏主体ではなく、あくまでも「声」が中心になっているところが好ましいです。女性ヴォーカルがメインになるところではトラッド風味が高まり、味わい深いです。
曲によって、エレクトリック楽器を中心にしたロックぽい演奏だったり、ヴァイオリンを導入した哀愁トラッドだったり、アコースティックな響きの美しいポップスだったりして、曲のバリエーションも楽しめます。うん、なかなかの名盤かもしれません。 (KORMORAN: 2003/1 KG BT. / ハンガリー盤CD) (2004.01.04)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



MUZSIKAS ES SEBESTYEN MARTA / A ZENEAKADEMIAN - LIVE AT LISZT ACADEMY (2003)
ハンガリアン・トラッド・アーティストによるライヴだそうです。ハンガリアン・トラッドというとKormoran(コルモラン)などもトラッド・ベースのグループだそうですが、少なくとも自分が持っているKorumoranのライヴ盤とは、かなり趣が違う音楽が演奏されています。
フィドルを中心とした演奏は、東欧的なひなびた哀愁を存分に醸し出していますが、そのなかに東洋的なエキゾチシズムが強く感じられるのが興味深いです。とくにヴォーカルのメロディやスタイルにアジアを感じます。
ハンガリアン・トラッドのアルバムを聴いたことがほとんどないので、これがある種の典型的な音楽なのかはわからないのですが、ハンガリー人(マジャール人)はもともとモンゴルを越えてきたアジア系民族らしいので、こういったアジアと東ヨーロッパが混じり合ったような音楽性は、とても「らしい」といえばらしい気がします。西ヨーロッパの古楽ぽい雰囲気もあり、ヨーロッパもアジアもひと続きの大陸なんだなぁと思いました。
基本的には演奏中心のインストゥルメンタルな曲が多いのですが、一部では合唱も入り、ヨーロッパの歴史の重みを感じさせます。ただ、ジャンルとしては完全にトラッドの範疇に入るのでしょう。トラッドぽいロックやポップスはそれなりに楽しんで聴ける自分ですが、完全なトラッドは、ちょっと好みからははずれてしまうなぁ。 (MUZSIKAS: MU-005 / ハンガリー盤CD) (2004.03.13)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



LOCOMOTIV GT / RINGASD EL MAGAD (1972)
初期のころにOmega(オメガ)から分派・独立したメンバーを中心に結成されたグループだったと思います。基本的にブルージーな要素を持ったハードロックで、そういった面は初期のOmegaにもありましたが、Omegaが持っていたそれ以外の要素、たとえば哀愁だとか歌心だとかいった部分は、ほとんどOmegaに置いてきたようです。
ソリッドなギターとドコドコしたドラム、アートロック風なオルガンなど、よくも悪くも1960年代後半から70年代前半にかけてのブリティッシュ・ロック影響下にあるといえそうです。M1「Cirkusz」ではいくぶんプログレッシヴな展開を見せるし、M3「Szerenad-a szerelmemnek, ha lenne」ではそれなりに叙情的な面も見せてくれますが、Omegaにつながるような音楽性は見つけにくいです。たとえばイギリスのArmageddon(アルマゲドン)や初期Deep Purple(ディープ・パープル)などにも通じる感じのロックでしょうか。フルートも導入されていますが、これも幻想美やクラシカルな美しさというよりは攻撃的な使われ方です。
ヴォーカルはハンガリー語ですが、もし英語で歌われていたら、きっとイギリスのグループと思うのではないでしょうか。そういう意味では本格的なブリティッシュ・ロックを体現したハンガリアン・グループといえるかも。一方でM7「Kakukkos karora」ではバンジョーが導入され、なぜかカントリー風だったりもするのですけどね。(2003.07.20)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



OMEGA / GAMMAPOLIS (1978)
 ハンガリーの叙情派ロック・グループ(ド演歌バンドといわれたりもします)。このアルバムは以前、ハンガリー語によるオリジナル・ヴァージョンの日本盤LPがリリースされたこともあるのですが、自分が持っているCDはドイツのベラフォン・レーベルからリリースされた英語ヴァージョンです。やはり、ヴォーカルがハンガリー語から英語に替わっただけで、ずいぶんスッキリとした印象になります。
 ただ、彼らの音楽は、哀愁味たっぷりの曲、歌メロ、ギター・ソロなどに大きな魅力があるわけで、そういう意味では、スッキリしないハンガリー語ヴァージョンのほうが本来の持ち味を発揮しているといえます。ハンガリー語盤のCDもリリースされているようなので、これから彼らの音楽を聴こうという人には、オリジナル録音のものをすすめます。
 そういった点を割り引いても、やはり彼らの曲は心に染みます。それほど演奏力の高いグループではないので、複雑なアレンジやテクニカルなプレイは期待できませんが、なんといっても“唄心”という強い武器が彼らにはあります。東欧らしい、垢抜けないけれど暖かい美しさが満ちたアルバムです。
 ところでこのCD、なぜLPのB面から先に収録されているのだろう?(2000.01.10)

OMEGA / TRANS AND DANCE (1995)
夜明け直前の、新たに生まれ来る1日に思いをはせるような印象を持った、スペイシーな広がりのある曲「Nyitany」で幕を開けるアルバム。『Trans and Dance』なんていうタイトルだし、リリースされたのも1995年なので、テクノ&ヒップ・ホップな曲ばかり収録されていたらどうしようと、聴く前は心配だったのですが、そこはやはりOmega(オメガ)、味わいのあるヴォーカルとやわらかなフレージングのギターは健在でした。
初期のようなハードさや、「ど演歌プログレ」と呼ばれた時期(?)のような強い哀愁はないものの、スッキリとまとめられた曲には東欧らしい少しひなびたロマンティシズムとノスタルジアが盛り込まれています。また、ほんのりブルージーなギター・ソロも哀愁を感じさせます。こういった部分はOmegaが以前から持ち続けている魅力のひとつでしょう。表面に聴こえる音の肌触り(耳あたり)には時代ごとにいくらかの違いはあるものの、ベーシックな部分での「よさ」は変わりません。
1980年代以降のOmegaのアルバムって、じつはあまり聴いたことがないもので、自分にとっての彼らの音楽に対するイメージはどうしても1970年代のものになってしまいます。そういった古いものと比較すると、曲はコンパクトにはなったものの、『Gammapolis』の頃にもあったスペイシーな味付けが強くなり、また全体に演奏力が上がったかなという印象があります。
けっして難しいことはやっていないけれど、ヴォーカルにも演奏にも「歌」があるOmega。だから自分はOmegaが好きなんでしょうね。(2003.07.20)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



PIRAMIS / PIRAMIS (1977)   alla "Musica"
アルバム1曲目冒頭の素っ頓狂な声のヴォーカルで、一気につかまれてしまいました。もちろん、ハンガリー語で歌ってます。音楽のタイプとしては、ハード・ロック・ベースのプログレッシヴ・ロックといったところでしょうか。様式美系も入ってますね。ほどよくハードでほどよく哀愁のある、バランスの取れたグループです。バランスが取れている分、強い個性のようなものは感じにくいのだけど、ハンガリー語で歌っているというだけで充分だったりします。 (HUNAROTON: HCD 17528 / ハンガリー盤CD) (2005.07.18)



INDEX A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z



Musica

Pensiero! -- la Stanza di MOA

(C)MOA

inserted by FC2 system