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J


さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


*** canta(u)tore ***
Jovanotti / Juri Camisasca

*** canta(u)trice ***
Jenny Sorrenti

*** gruppo ***
Jacula / J.E.T. / Jumbo





J.E.T. / FEDE, SPERANZA, CARITA' (1972)   alla "Musica"
 マティア・バザール(Matia Bazar)の前身グループとして、プログレ・ファンの間ではそれなりに認知度があるジェット(J.E.T.)。ヘヴィでノイズィなギターの音に時代を感じさせますが、ポップで美しい唄メロを持ってます。といっても、マティアのようなおしゃれさはありませんが。(1998.05.31)



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JENNY SORRENTI / SUSPIRO (1976)
 1970年代に2枚のアルバムをリリースしたSaint Just(サン・ジュスト)のヴォーカリスト、あるいは、独特の浮遊感を持ったカンタウトーレ、Alan Sorrenti(アラン・ソッレンティ)の妹(姉?)──どちらにしても、一般のイタリアン・ポップス・ファンにはあまりなじみのないであろうJenny Sorrenti(ジェニー・ソッレンティ)のソロアルバム。
 彼女のどこか抜けきらない声は幻想的で、初期のAlan Sorrentiによく似ています。さすが兄弟といった感じです。Saint Justでは、そんな彼女の声が、いくぶんサイケ・フォーク的な透明感を持った演奏とうまく溶け合い、1970年代のイタリアン・プログレッシヴ・ミュージックとして強い個性と存在感を放つアルバムをリリースするに至りました。
 では、このソロアルバムはどうでしょうか。
 特徴のある声と歌い方はそのままですが、曲の持つメロディは意外と普通です。ほのかな幻想味は、やわらかい草花の香りを運んでくるようです。
 メロディは比較的普通とはいえ、やはり中心となるリスナー層はプログレッシヴ・ミュージックも好きなカンタウトーレ・ファンといったところになるのでしょう。普通のポップスにしてはあまりにも風変わりな歌、だけど曲や演奏はけっこう普通という、ちょっと位置づけが難しい作品になっています。
 でも、このアルバムからは幻想味と南イタリアの光が感じられ、自分はけっこう好きです。ギターにナポリのスーパースター、Pino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)が参加していることも、この作品に南イタリアのキラメキを与えているのでしょう。
 その意味では、プログレッシヴのファンやカンツォーネのファンよりも、ナポリ・ポップスのファンに聴いてもらうのがよいのかもしれません。(2000.12.17)



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JACULA / TARDO PEDE IN MAGIAM VERSUS (1975)   alla "Musica"
イタリアン暗黒ミサ・プログレッシヴ・バンド(?)Jacula(ヤクラ)の、唯一の正式アルバム。めちゃめちゃはったりが利いたゴシック系暗黒シンフォニックを奏でます。いきなり鳴り響くチャーチ・オルガンで聴く者の不安をかきたて、チェンバロの演奏に乗ったシャーマニックな女性ヴォーカルでいっそうおびえさすという、安っぽいオカルト・ホラー映画のようなつくり。アルバム的には、このM1「U.F.D.E.M.」のはったり具合がもっとも聴きどころでしょう。 (MELLOW RECORDS / MELOS: 004/MMP136 / 日本語解説つきイタリア盤CD) (2007.07.29)

JACULA / ANNO DEMONI (1992)   alla "Musica"
イタリアン暗黒ミサ・プログレッシヴ・バンド(?)Jacula(ヤクラ)の、セカンド・アルバムというか、未発表曲寄せ集め集というか、まぁ、そんなアルバムです。あいかわらずチャーチ・オルガンが全編に鳴り響いてます。でも、それだけ。ロックとしてのエナジーとか、パッションとか、そういったものを感じません。そもそもリズム隊がリズム隊としての役割をほとんど与えられていなくて、SE的な使い方になっているので、ロックとしてのリズムやビートがないのです。暗黒な雰囲気だけで、これといって精神的高揚やロックとしてのカタルシスといったものも感じられない、退屈な作品でした。 (MELLOW RECORDS: MMP 118 / イタリア盤CD) (2006.02.25)



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JOVANOTTI / LORENZO 1990-1995 (1995)
 自分はソウルやR&Bといった、いわゆるブラック・ミュージック系音楽が苦手で、当然ラップもぜんぜん楽しめません。なのでJovanotti(ジョヴァノッティ)も、イタリアで大人気なのは知っていたけれど、ラップ・シンガーというだけで、いままで聴かずにいたのですが、たまたまアメリカのショップで安く売っているのを見つけたので、試しに買ってみたところ、いいじゃないですか。
 Jovanottiの場合、ラップとはいっても、R&B的というか、クラブ音楽的な空気は非常に希薄です。リズムに乗せて歌詞をかぶせるというラップの形態はとっていますが、ベースになっている音楽がアメリカのR&Bというよりは、やはりイタリア的な雰囲気を持っているからでしょう。ヴォーカルが歌メロに乗るところはもちろんですが、ラップ・パートのバッキングにもメロディが強く感じられます。だから、いわゆるラップが苦手な自分でも、イタリアン・ポップスの一種として楽しめます。
 また、すっきりと澄み切らない、どこか空気の抜けたような、それでいてちょっと鼻が詰まっているような独特の声にも、ヨーロッパ的な暖かさが感じられます。(1999.12.05)

JOVANOTTI / LORENZO 1999 - CAPO HORN (1999)   alla "Musica"
Jovanotti(ジョヴァノッティ)といえばイタリア・ラップ界の第一人者なわけですが、ラップやヒップ・ホップのファンだけでなく、ひろくイタリアン・ポップスのファンにも愛されているのは、その音楽の背景にイタリアらしいメロディアスな面が強くうかがえるからなんでしょう。とくに近年の作品にはそういう要素が強いと思います。
もともとラップやヒップ・ホップは、虐げられた層から生まれた、ある種の「怒りの音楽」なのだろうと思うのですが(まちがっているかもしれません)、Jovanottiはスタイルとしてのラップをうまくイタリアン・ポップスに取り込んだなという印象です(初期のころは、もっと本格的なラップだったのかもしれませんが、自分はよく知りません)。その取り込み具合が巧みなので、基本的にヒップ・ホップ系の音楽が苦手な自分にも、それなりに楽しめるのでしょう。(2003.07.20)



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JUMBO / VIETATO AI MINORI DI 18 ANNI? (1973)
アルバム・タイトルの意味は「18歳未満禁止」ということらしいです。なにが禁止なのでしょうか?
それはともかく、投げやりで、いくらか凶暴な感じのするヴォーカルがいい感じです。演奏も全体的にハードで、ロックぽいギターやヘヴィな感じのサキソフォンなど、Osanna(オザンナ)などにも通じる往年のイタリアン・プログレッシヴ・ロックらしい演奏が聴けます。そんななかに入ってくるフルートの音色は、こういったタイプのプログレッシヴ・ロックでは多くの場合、ツバ飛ばし系のハードな感じのものが多いのですが、このアルバムではどちらかというとリリカルで幻想的ですらある、美しい響きを聴かせてくれます。他の演奏やヴォーカルがけっこう凶悪(?)な感じがする分、よい対比となっています。
このころのプログレッシヴ・ロックは、最近の「ヘヴィ・メタル・ベース」のものとは違い、「ハード・ロック」がベースとなっていて、自分としてはこのほうが好ましいです。M5「Gil」ではうっすらとメロトロンも導入され、また初期のClaudio Rocchi(クラウディオ・ロッキ)Alan Sorenti(アラン・ソレンティ)にも通じそうなサイケデリック風味も見せるなど、意外と懐が深いです。(2003.07.20)

 イタリアン・ロック・ファンの間でも通常「ジャンボ」と発音されているJumboですが、イタリア語的に発音するならきっと「ユンボ」でしょう。1970年代にアルバムを3枚ほどリリースした彼らの、これは最終作にあたる作品です(その後再結成してアルバム・リリースなどしていなければ)。
 非常に熱いパッションを感じさせるヴォーカル、ブルーズの匂いの残るハードなギター、ドタバタとしたドラムに彩られたパワフルな演奏のなかに現われるフルートやアコースティック・ギターの美しく牧歌的な調べ──まさに1970年代イタリアン・プログレッシヴの匂いが強く感じられるアルバムです。強引な展開、極端な静と動の対比など、1980年代以降のスタイリッシュで洗練されたプログレッシヴ・ロックにはなかなか聴けなくなってしまった、ある意味無理やりでなんでもあり的なプログレッシヴ・ロックの楽しさが感じられます。
 メロトロンも導入し、幻想的でサイケデリックな雰囲気もあります。(2000.09.16)



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JURI CAMISASCA / ARCANO ENIGMA (1999)
 Franco Battiato(フランコ・バッティアート)ファミリーのカンタウトーレ。アルバムは多分、これで4作目だと思います。1st『La Finestra Dentro』(1973)はClaudio Rocchi(クラウディオ・ロッキ)にも通じるような、独特の浮遊感を持ったサイケデリック風味のポップス、2nd『Te Deum』(1988)はPopol Vuh(ポポル・ヴフ)やグレゴリオ聖歌なども思わせるような宗教音楽(だったはず。LPを聴いたのは何年も前なので、記憶が不確かです)、3rdは聴いたことがないのですが、Battiato的なポップスらしいです。
 そして、このアルバム。かなりデジタリックな色合いが強く、近代的な力強さが感じられる作品になっています。曲によっては初期ゴシック・ニューウェーヴ的なところもあって、ちょっと懐かしさを覚えました。演奏はこんな感じですが、歌メロ自体は意外と素直です。デジタリックではあるけれど、奥行きと深みがあります。
 ポップス・ファンよりはロック・ファンのほうが楽しめるアルバムかもしれません。Battiato的な作品という評価もされていますが、Battiatoよりもヴォーカルに力があって、自分には聴きやすいです。それでいて神への祈りの声のような暖かさ、柔らかさもあるあたりは、やはり個性派といえます。(2000.01.10)



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