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さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


*** canta(u)tore ***
Paolo Capodacqua / Paolo Conte / Paolo Frescura / Paolo Marino / Paolo Meneguzzi / Paolo Mengoli / Paolo Pietrangeli / Paolo Vallesi / Patrizio Martucci / Philippe Eidel / Pierangelo Bertoli / Piero Ciampi / Pino Beccaria / Pino Daniele / Pino Mauro / Pippo Pollina / Pupo

*** canta(u)trice ***
Paola Turci / Patty Pravo

*** gruppo ***
il Paese dei Balocchi / i Panda / Paola & Chiara / Piccola Orchestra Avion Travel / Pierrot Lunaire / i Pooh / Premiata Forneria Marconi





I PANDA / L'ANIMA E L'AMORE (1998)
 たぶん、1970年代に数枚のアルバムを出したイ・パンダ(i Panda)のベスト盤だと思います。オリジナルを見たことも聴いたこともないので確認できませんが。ちなみに録音は新しいもののようです。
 タイプとしてはコッラージェ(Collage)などと同様の、イタリアらしい甘いメロディに美しいコーラスとオーケストレーションが乗るものです。緊張感や同時代性などとは無縁ですが、いつ聴いてもこちらを優しく迎えてくれる、イタリアのアモーレーがあります。(1999.01.03)



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PAOLA & CHIARA / CI CHIAMANO BAMBINE (1997)
 Paola & Chiara(パオラ・エ・キアラ)はPaolaとChiaraのIezzi(イエッツィ)姉妹によるデュオ。一部の日本のファンの間では、彼女らのことを「イタリアのPUFFY(パフィー)」と呼んでいるとかいないとか。そういわれてみると、どこか投げやりで、あまり情感の入らない歌い方や声の感じなどが、ちょっとPUFFYに似ているかもしれません。しかし、あのだらだらとした感じ、やる気や活力がない歌い方、なのにどこか許せてしまうというPUFFYの特異性は、Paola & Chiaraには感じられませんので、彼女らを「イタリアのPUFFY」と呼ぶのはどうかなと思いますが、PUFFYとの類似性なんてどうでもいいことですね。
 曲調は、イタリアというよりは、十数年前のイギリスあたりのガール・ポップに近いんじゃないでしょうか。ほどほどに華やかなアレンジとメロディ、可愛らしく媚びて歌えばとても女の子女の子した感じにあるであろうに、そうしないヴォーカルがキュートです。あ
 まり抑揚はありませんが明るい歌声には、強迫的なところも、逆に甘えた感じもなく、どちらかというと突き放した歌い方です。しかし、きれいに響く声、姉妹ならではの調和したハーモニー、ときに出始めのころのニューウェーヴのような、そして、ときにオールディーズのようなポップさを持ったメロディは嫌味がなく、素直に響きます。
 どことなく「青春」という言葉も浮かんでくるようなこっ恥ずかしい感じもありますが、それもまた、ひとつの魅力といえそうです。(2001.04.22)



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PATRIZIO MARTUCCI / EUROPA (1998)
 ちょっと詰まった感じの声が印象的なロック・シンガー。メロディアスだけどしつこさはなく、意外とスケール感のあるポップ・ロックが聴けます。
 典型的なイタリアン・ポップスとも、最近はやりのブリット・ポップ系とも違う、キャッチーながらもドラマティックな感じは、メロディ指向のハードロック/ヘヴィメタルグループ、たとえばBon Jovi(ボン・ジョヴィ)Def Leppard(デフ・レパード)などが演奏するバラードに似たところがあるように思います。そういう意味では、イタリアン・ポップスのファンだけでなく、メロディアス・ハードロックのファンにもアピールするかもしれません。(1999.06.05)



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PHILIPPE EIDEL / RENAISSANCE (2001)
 フランスで制作されたアルバムのようです。歌詞は全部イタリア語ですが、ケースのシーリングに張られたシールにはフランス語のキャッチコピーらしきものが書かれていますし、歌詞カードにもイタリア語のほかにフランス語と英語の訳詞がついています。
 Philippe Eidel(フィリッペ・エイデル)という人の名前を聞くのは、自分ははじめてです。イタリア人なんでしょうか? アルバムに参加しているミュージシャンは、名前からすると、ほとんどがフランス人のような感じですが。
 Philippeは、自分でもヴォーカルをとりますが、基本的にはブズーキやチャランゴなどといった民族楽器の奏者のようです。このアルバムの大半は歌入りの曲ですが、Philippeが歌っているのはほんの数曲で、他の曲ではLucio Dalla(ルーチォ・ダッラ)Vinicio Caposella(ヴィニチオ・カポセッラ)、Lucilla Galeazzi(ルチッラ・ガレアッツィ)といった人がヴォーカルをとっています。彼らとPhilippeの関係はよくわかりません。
 収録されている曲は、トラッド風のものに民族音楽とテクノ・ポップ風のアレンジを施したもので、たとえばフランスのDeep Forest(ディープ・フォレスト)などと近いのでしょうか。イタリアの音というよりは、なんとなくフランスの音のような気がします。
 いくぶん原始っぽいリズムにミステリアスな音がかぶさり、シャーマニックなイメージが醸し出されたりもします。そこに乗るVinicioLucioの抑制の聴いた歌が、さらに曲に深みを与えます。またLucillaの歌はよりトラッド風で、厳かな感じすらあります。(2002.03.17)



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PAOLA TURCI / PAOLA TURCI (1989)   alla "Musica"
クールで落ち着いた歌声が魅力的です。キンキンしたところがなく、耳に優しい声質ですね。そのうえ、深みと暖かみもあります。これといって歌唱力が高いわけでも表現力が豊かなわけでもなく、どちらかというと淡々としたヴォーカルなのですが、声の味わいが曲に奥行きを与えています。こういった声と歌い方には、あまり凝ったアレンジは必要がなく、それよりも素朴なフォーク・タッチの曲のほうが魅力を表現できそうです。
アルバムにはフォーク・タッチの曲やスロー・ジャズ風のもの、いくぶんアップ・テンポのものなども収録され、それなりのバラエティ感がありますが、ヴォーカルに求心力があるので、どの曲もPaola Turci(パオラ・トゥルチ)ならではの味わいになっています。ヴォーカルによって与えられる、大人の落ち着きと、いくらかのミステリアスさが、曲の魅力を高めています。Ornella Vanoni(オルネッラ・ヴァノーニ)Mina(ミーナ)などに通じるところもあるように思いますが、そこまで貫禄がついていないところが自分にとっては好ましいです。(2003.07.20)

PAOLA TURCI / OLTRE LE NUOVE (1997)
素直な歌い方がいい感じです。低めで、すごく薄くノイズがかぶさっているような、落ち着いた感じの声が好ましいです。ただ、イタリアらしいパッションとはちょっと縁遠い感じで、そこが個人的にものたりなくはあります。ヴォーカルの表現力や表情といったものが弱く、ちょっと一本調子な感じです。
ヴォーカルが単調な分、曲調で派手にしたり、落ち着いたバラードにしたり、明るいポップ・チューンを入れたりといったバラエティ感があれば、もう少し魅力的になるように思うのですが、残念ながら、おんなじようなテンションの曲が多く、聴いていて、ちょっと飽きてきてしまいます。Carmen Consoli(カルメン・コンソリ)くらい声と歌い方に個性があれば、それはそれで曲が単調でも味になるのですが、Paolaには、そこまでの個性はないですね。
エレクトリック楽器は使われているものの、曲調的にはフォークタッチのものが大半です。よくいえば素直、悪くいえばあまりヒネリのないアレンジで、全体に優しい感じに仕上がっています。M2「Ho bisogno di te」などでは演奏でちょっと広がりを感じさせるようなところもあります。M5「Non ti voglio piu'」やM8「E' solo per te」などは、アレンジは少しイージーかなとは思うもの、あたたかな情感があって、なんかほっとする曲です。 (WEA: 398422263 2 / ドイツ盤CD) (2004.01.04)



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PATTY PRAVO / SI...INCOERENZA (1972)
 シンフォニックというよりは劇判風のオーケストラ・アレンジが、いま聴くにはちょっと恥ずかしいですが、正しくカンツォーネ的な音楽が多く収録されたアルバムです。ところどころシャンソン風にも聞こえるのは、Patty Pravo(パティ・プラーヴォ)の声が低くてドスのきいた、迫力のあるものだからでしょうか。
 Claudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)の「Poster」を思わせるメロディなど、イタリアらしい旋律がたくさんあり、古くからイタリアのメロディを愛してきた人には懐かしく思えるところも多いでしょう。ただ、最近のポップスからイタリアのファンになった人には、古臭くてアピールしないかもしれません。有名な「My Way」のイタリア語ヴァージョンが収録されていますが、要するにそういう時代の音楽だし、アルバムだと思います。
 個人的には、メロディやアレンジはいいのだけど、ヴォーカルがちょっとおっかないな。(1999.12.05)

PATTY PRAVO / TANTO (1976)
 元Aphrodite's Child(アフロディテス・チャイルド)、というよりは映画『炎のランナー』や2002年サッカー・ワールドカップのテーマ曲を作曲・演奏したシンセサイザー奏者といったほうが、最近の人にはわかりやすいだろうギリシャ人のVangelis(ヴァンゲリス)がキーボードとアレンジを担当したPatty Pravo(パッティ・プラーヴォ)のアルバム。
 1970年代中ごろのVangelisはイタリア音楽界とつながりが深かったのか、Riccardo Cocciante(リッカルド・コッチァンテ)『Concerto per Margherita』(1976年)やClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)『E tu...』(1974年)などでもキーボードとアレンジを担当しています。これらのアルバムではどれもVangelisのキーボードが目立っていて、個人的には『E tu...』以外は「やりすぎ」といった印象があります。ただ、ClaudioにしろRiccardoにしろ、そして本作のPattyにしろ、シンガーとしての個性がはっきりしているので、クセの強いアレンジに歌が左右されることはありません。
 このアルバムではヒューマン・ヴォイスによるコーラスなども導入され、Pattyの落ち着いたなかに凄みのあるヴォーカルをドラマティックに響かせています。それでもやはり全体にVangelisのキーボードのフィルインがうるさくて、曲を邪魔することが多いように思います。もっとシンプルなアレンジで聴きたいところです。
 アルバム・タイトル曲のM1「Tanto」や、最後を締めるM10「Eri la mia poesia」などでは、声のなまめかしさが光ります。
 M8「E io cammino」とM9「Dove andranno i nostri fiori」は、たぶんPatty以外の歌で、もしかしたら歌詞もイタリア語以外で聴いたことがある気がするのですが、誰かのカヴァーなのでしょうか。(2002.10.19)

PATTY PRAVO / PATTY PRAVO (1976)   alla "Musica"
シンセサイザーの導入のしかたがどことなくプログレッシヴ・ロック風な「La mela in tasca」で幕を開けるこのアルバム。なんとなく全体にシンセサイザーの使い方がVangelis(ヴァンゲリス)っぽい感じがするのですが、とくにアレンジや演奏にVangelisがかかわっているわけではないようです。
Patty Pravo(パッティ・プラーヴォ)って、低くてドスのきいた声を活かしたパワフルなロック・ヴォーカリストのようなイメージが自分にはあるのですが、このアルバムに収録されている曲は、けっこうなめらかなメロディを持ったイタリアン・ポップスが中心です。ただ、声の存在感はあいかわらずで、そのために、優しい感じの曲にも重厚さと力強さが感じられます。(2003.06.15)



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PAOLO CAPODACQUA / BIANCHIROSSIGIALLINERI (2001)
 透明で丸い音のアコースティック・ギターによるアルペジオが美しい、夢想的な浮遊感があるフォーク・ソングで始まるアルバム。その後もアルペジオを中心とした、おだやかでやさしい感じの曲が続きます。
 Paolo Capodacqua(パオロ・カポダックァ)という人の名前を聞くのははじめてです。ジャケットは子供のお絵かきのようだし、ブックレットの裏表紙には「少しを娘のIlaria(イラリア)に、少しをその他のすべての子供たちに、そして残りを、私たちに多くのことを教えてくれ、20年前に亡くなったGianni(ジァンニ)に」と書いてあるので、たぶんこのアルバムは、幼くして亡くなった(のであろう)Gianniという子供(Paoloの息子でしょうか?)に捧げられているのでしょう。
 曲調は全体に、とても地味。これはStorie di Noteレーベルのカラーといえばそれまでなのですが、もう少しコミカルなところなどがあってもよかったのではないかなと思います。たぶん亡くなった子供に捧げられているのであろうから穏やかな感じになっているのであろうということを考慮したとしても、ポピュラー・ミュージックの楽しみといった点では、やはり弱いと思います。透明なやわらかさや夢見がちっぽいところは、それなりに楽しめるのではありますが。(2001.03.17)



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PAOLO CONTE / JIMMY BALLANDO (1989)
 Paolo Conte(パオロ・コンテ)の音楽を愛するファンというのは、いわゆるイタリアン・ポップスのファンとは別の層なのでしょう。Paoloの音楽は、たとえばサンレモ・ミュージック的な、あるいはナポレターナ的な、つまり、多くの日本人が「イタリアン・ポップス」と聞いて真っ先に思い浮かべるであろうカンツォーネ的な色彩がありません。アコースティック・ピアノを中心にした演奏はジャズ的、シャンソン的で、感情を抑えながらも力強さを感じさせる、低くてしわがれた声は、あまりにも渋いのです。
 こういったクールなジャズ風味というのは、北イタリアの特徴なのでしょうか。Ivano Fossati(イヴァーノ・フォッサーティ)の近作にもこういったクールなアーティスティックさはうかがえますが、Paoloの場合は、Ivanoの音楽よりもはるかにイナタイといえます。
 タバコの煙とウィスキーが似合いそうな、そんな雰囲気がある音楽です。そして、そこに大人の男が持つロマンティシズムと、ほんのちょっとの寂しさのようなものが加わり、音楽を厚みのあるものにしています。(2000.08.13)



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PAOLO FRESCURA / BELLA DENTRO (1975)
 Paolo Frescura(パオロ・フレスクラ)といえば1978年のサード・アルバム『Paolo Frescura』が、キーボーディストにLuis Enriquez Bacalov(ルイス・エンリケス・バカロフ)、Ciro Dammicco(チロ・ダンミッコ)、Claudio Simonetti(クラウディオ・シモネッティ)という有名人が参加していることもあり、プログレッシヴ・ロックのファンの間でもよく知られているようです。
 『Bella Dentro』と題されたこのアルバムはPaoloのデヴュー作のようです。とてもシンプルでおだやかな作品で、控えめなオーケストレーションとやわらかなアコースティック・ギターの音からは、素朴な暖かさが伝わってきます。Paoloのヴォーカルもはかなげで、繊細な若者の完成が素直に表現されています。なめらかなメロディは美しく、ほどよい少しの哀愁が曲に奥行きと広がりを与えます。
 同じRCAレーベルということもあってか、アレンジなどにどことなく1970年代前半のClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)にも通じる香りを感じます。ただしPaoloのヴォーカルは、強い存在感のあるClaudioとは違い、さりげなくやさしいものです。声や歌の感じとしては、たとえばUmberto Bindi(ウンベルト・ビンディ)Sandro Giacobbe(サンドロ・ジァコッベ)などのほうが近いといえるでしょうか。
 地味な作品ですが、1970年代のイタリアン・プログレッシヴ・ロックからカンタウトーレへと興味が転じていったようなファンには、とても愛らしい作品として楽しめるでしょう。また、アレンジの美しいフォーク・ミュージックが好きな人にも愛される作品ではないでしょうか。最近の若いイタリアン・ポップスのファンが楽しめるかどうかはわかりませんが、よいアルバムだと思います。(2002.04.21)

Paolo Frescura / same (1978)   alla "Musica"
 自分としては非常に懐かしい感じの、往年のプログレッシヴ・カンタウトーレなアルバムでした。豊潤でドラマティックな曲がいっぱい。(1998.05.31)



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PAOLO MARINO / SENZA FRONTIERA (1992)
Paolo Marino(パオロ・マリーノ)という名前を聞くのは初めてな気がするのと、某インターネット・ショップのニュー・リリースのコーナーにあったことから、新人カンタウトーレのデビュー・アルバムかもと思って入手したのですが、どうやら旧譜のCD再発だったようです。このアルバムをプロデュースしたPiero Cassano(ピエロ・カッサーノ)のサイトに記載がありました。それ以外の情報は、オフィシャル・サイト等がないため、バイオグラフィもディスコグラフィもわからないのですが、どうやらこのアルバム1枚のみで消えてしまったようです。
曲を聴いてみると、それも致し方なし、といった感じです。自分で作詞作曲をする(作曲にはPiero Cassanoも協力しています)カンタウトーレですが、そこから生み出された曲は、平均点はクリアしているけれど、これといって個性のないもの。ほのかにひび割れた歌声はイタリアらしい心地よさを持ってはいるけれど、こういった声の人はMassimo Di Cataldo(マッシモ・ディ・カタルド)などをはじめイタリアには多数いて、やはり平均点といった感じです。悪くないのだけど、聴きどころというか、Paoloならではの個性が感じられないのが残念です。
とはいえ、アルバムとしては、ほどよく都会的に洗練されたロック色が強めのポップスと、ゆったりとメロディアスなバラード系の曲とが、よいバランスで配置されていて、気持ちよく聴けます。あまりイタリアぽさは強くなく、ゴスペルチックなコーラスが入るなどアメリカ系哀愁の匂いが強めです。声も曲もそれなりによいので、BGM的に聞き流す分には悪くないと思います。LPの内容をそのままCD化したようで、とくにボーナス・トラックなどもないため、収録時間が40分程度というのもコンパクトで、自分にとっては好ましいです。 (FIVE RECORD / CGD: CD FM 8013-2 / イタリア盤CD) (2007.04.22)



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PAOLO MENEGUZZI / UN SOGNO NELLE MANI (2001)
 2001年のサンレモ音楽祭新人部門に出場したPaolo Meneguzzi(パオロ・メネグッツィ)の、たぶんデヴューアルバム。サンレモ参加曲の「Ed io non ci sto piu'」は、最近はやりのブリティッシュ風味がまぶされている以外にはとくにどうといったことのない曲で、サンレモのコンピレーションCDを聴いたかぎりではそれほど興味を引かなかったのですが、このアルバムはなかなかよい出来です。
 アルバムの冒頭にはサンレモ参加曲が収録されていますが、この曲のようなちょっとブリティッシュ風味の曲はそれほど多くなく、全体には明るさと軽やかさのなかにおだやかな哀愁を感じられるイタリアらしいポップ・ミュージックになっています。最近の若いカンタウトーレの例にもれず、濃厚な感情移入や劇的な展開といったものはありません。もっと都会的でスッキリとしています。でも、ちょっと詰まったような声の出し方ややわらかい歌メロ、アレンジなどに、「やっぱりイタリアだなぁ」という印象を抱きます。
 何曲かのクレジットにRosario Di Bella(ロザーリオ・ディ・ベッラ)の名前がありますが、そういえば曲のスタイルなどにRosarioと似た感じがあるかもしれません。ロックでもフォークでもない、あたたかなポップスが聴けます。
 じっくり聴き込むタイプのものではないとは思いますが、イタリアの明るく強い陽射しと気温は高いけどあまりベタベタしない夏の空気が感じられる、心地よい作品です。(2001.08.19)

PAOLO MENEGUZZI / LEI E' (2004)
一部でTiziano Ferro(ティツィアーノ・フェッロ)のパッチもんともいわれているらしい?Paolo Meneguzzi(パオォ・メネグッツィ)。たしかに声や曲の感じに似たところがあります。ほどよくR&B/ソウル風味のあるポップスです。ただTizianoほど歌に色気はないかな。
要するに、最近のはやりのタイプの曲なのでしょう。ほんのりとセンチメンタルなフレーズとオーケストレーション。静かに穏やかに情熱を込める歌い方。おだやかなラップの導入。上手にできていると思います。アコースティック・ギターのナチュラルな響きとシンセ・ベースやキーボードのデジタルな響きをぶつけるようなアレンジも、最近のグループやアルバムでよく聞かれますね。
それらも含めて、標準的なアルバムだし、標準的なシンガーだと思います。これといって強い個性があるわけではないけれど、とくに悪い点も見当たりません。曲調にヴァリエーションがあまりなく、ずっと聴いてるとちょっと飽きてくるかなとは思いますが。せめてアレンジだけでも、もっとヴァリエーションがほしい感じです。
しかしほんと、曲によってはTizianoによく似てるな。 (BMG RICORDI / AROUND THE MUSIC: 82876603002 / EU盤CD) (2004.12.25)



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PAOLO MENGOLI / PERCHE' L'HAI FATTO (1991)
 何度か来日経験もあるカンツォーネ歌手なのだそうです。タイプとしてはオーソドックスで、今からするとちょっと古い感じのイタリアン・ポップスが聴けます。もともと歌唱力のあるシンガーのようですが、このアルバムでは軽やかでポップな曲が多く、彼のヴォーカルのもっともおいしいところを引き出しているかというと、そうではない気がします。といっても、彼の他の作品を聴いたことがないので断言はできませんが。もともとこういう感じの曲が多いのかもしれません。ただ、それにしても、たとえばバックが薄っぺらい電子楽器ではなく、生のオーケストラなどだったら、もっと奥行きの深い作品になったでしょう。
 彼の歌が生きるのは、やはり素直で伸びやかなメロディを持った曲を歌うときでしょう。たとえばRiccardo Fogli(リッカルド・フォッリ)の曲などを歌わせたら似合いそうに思います。Riccardoのような甘さ、青さがない分、落ち着いた、それでいてどこか甘酸っぱい世界を演出できるのではないでしょうか。
 歌メロもヴォーカルもそれなりにいいものを持っているのだけど、オールド・スタイル。それはそれで味わいがあって楽しめますが、やはりこういうタイプの曲には豊潤なストリングス・アレンジが似合います。中途半端に現代風なアレンジ、音づくりが残念です。(2000.01.10)



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PAOLO PIETRANGELI / TEMPO SENSIBILE (1998)
 表ジャケおよび裏ジャケで優しそうに微笑んでいる恰幅のいいおじさんが、きっとPaolo Pietrangeli(パオロ・ピエトランジェリ)なのでしょう。もう、けっして若いとはいえない、というか、明らかに中年以降のカンタウトーレのようです。彼がつくり歌う曲も、1970年代以降のカンタウトーレたちがつくったようなものとは違い、それ以前の音楽に近いのだと思います。
 アコースティック楽器の演奏に優しさと落ち着きをたたえた渋い声が乗るその音楽は、イタリアン・ポップスというよりは、ジャズの影響を強く残した50年代、60年代のポピュラー・ミュージックといった感じです。カリビアン・リゾートを思わせるような軽やかで楽しげな曲、オールド・スタイルなフォークソング、ちょっとブルージーなフォークロックなどもあり、どれも今からするとひと昔もふた昔も前の音楽だと思うのですが、なんとなくほんわかとした心地よさがあるのは、Paoloの人柄のせいなのでしょうか。
 なかなか人にはすすめにくい地味な作品ですが、古くからのイタリアン・ポップスや50's、60'sを愛し、たくさんのアルバムをそろえているようなファンなら、コレクションのなかに紛れ込ませておいても邪魔にならないアルバムではないでしょうか。(2000.08.13)



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Paolo Vallesi / same (1991)   alla "Musica"
哀愁のあるひび割れ声と美しいメロディ。Marco Masini(マルコ・マジーニ)の暑苦しさとしつこさとくどさを薄めたような歌声と曲調が楽しめます。ミディアム・テンポの曲が中心で、美しいメロディとやわらかな哀愁が心地よく響きます。デビュー・アルバムということでか、たとえば次作のアルバム・タイトル曲である「Forza della vita」のような印象的な曲がないこと、メロディに少し伸びやかさや素直さが不足している感じがすることなど、成長途上にある作品という印象はあります。だけど、それらを補って余りある「可能性」を感じられること、次作以降に「期待」が持てること。これって、新人のデビュー・アルバムを聴く楽しみだったりしますよね。多少未熟だけど、これからが楽しみな若者、そんなPaoloの若かりし日の姿がここにあります。 (INSIEME / SUGAR / POLYGRAM: 508 309-2 / イタリア盤CD) (2005.06.04)


 Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)のデヴューアルバム。ちょっとかすれた声で暖かいバラードを唄います。情緒に流されすぎず、大袈裟に感情移入することもないですが、イタリアらしい美しさがいっぱいです。
 イタリアが古くから持っている美しいメロディを大事にしているカンタウトーレだと思います。また彼はキーボーディストなのですが、キーボーディストらしい、流れるようななめらかさを持った曲が特徴的です。
 ちなみにこのアルバムでは、RAFの曲を1曲、唄っています。
 それぞれの楽曲ごとに聴くと、どれも非常に美しく、水準も高いのですが、アルバム全体として聴くと、もうひとつヴァリエーションというか、起伏に乏しい感じはします。ただ、それぞれの曲自体の持つ哀愁度、せつなさ度という点では、このアルバムがいちばんではないでしょうか。(1999.04.10)

PAOLO VALLESI / LA FORZA DELLA VITA (1992)   alla "Musica"
明るい感じのポップな曲、哀愁のあるバラード、ほんのりジャズ風味な曲など、いくつかのタイプの曲が収録されています。比率としては哀愁系が多いこのアルバムですが、佳曲ぞろいのこのアルバムのなかでも、アルバム・タイトルになっているM3「La forza della vita」はかなりの名曲だと思います。おだやかに始まり、徐々に演奏に厚みが増し、後半に向けてどんどん盛り上がっていく。午後の陽だまりのようなやさしく暖かい感じから、少しずつ明るさ、力強さ、前向きさを増していく。シンプルで素直な美しいメロディの連なりを上手に構成しアレンジし、曲のなかに小さなドラマをつくりあげるのがうまいのが、イタリアン・ポップ・ミュージックの魅力のひとつだと思うのですが、そういう意味では、まさにイタリアン・ポップ・ミュージックの魅力が凝縮された1曲だといえるでしょう。 (INSIEME / RTI MUSI / DISCHI RICORDI: SGR 4422-2 / イタリア盤CD) (2005.04.03)

Paolo Vallesi / Non Mi Tradire (1994)
 Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)の3rdアルバム。伝統的なイタリアン・メロディを今日的なすっきりとしたアレンジで、ときに甘く、ときに熱く歌い上げます。 今回は曲づくりにEros Ramazzotti(エロス・ラマゾッティ)Irene Grandi(イレーネ・グランディ)、Biagio Antonacci(ビアージォ・アントナッチ)が参加したものもあり、より楽曲のクオリティ・アップがはかられています。なお、Erosはギターで、Ireneはコーラスで、それぞれ参加しています。
 現代的なイメージを持った曲が多くなってきていて、アルバム全体を見ると、1stで聴かれたような「どうしようもないようなせつなさ」を持った曲の比重は少なくなっています。リズムアレンジなども派手な感じになってきています。しかしそれでもPaoloのヴォーカルは優しさ、せつなさを失わず、あいかわらず魅力的に響きます。彼の声の魅力を残したまま、楽曲的には明るく、前向きな感じにしたといえばよいでしょうか。
 また、これまでよりもロックぽい感じがします。(1999.04.10)

Paolo Vallesi / le Sue Piu Belle Canzoni (1996)
 Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ) のベスト盤。過去3枚のアルバムから5曲ずつ、まんべんなく収録しています。さらに「La Forza Della Vita」のスペイン語ヴァージョン(だと思うんだけど)「La Fuerza De La Vida」も収録されています。
 ベスト盤と呼ぶにふさわしく、彼の魅力がたっぷり発揮されている楽曲ばかりを集めてあります。たおやかで流れるような美しいイタリアン・メロディのうえを、少しカスレ気味だけど伸びやかな彼の声が、聴き手の心をそっと包むように運ばれます。(1999.04.10)

PAOLO VALLESI / NON ESSERE MAI GRANDE (1997)
 ベスト盤を出してSugarレーベルに区切りをつけ、Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)はCGD East Westに移籍しました。
 オリジナル・アルバムとしては4枚目ですが、新しい環境での最初のアルバムとなる本作は、それまでの彼の魅力をしっかりと残しつつ、さらにスケールアップした楽曲を聴かせてくれます。
 前作ではずいぶん現代的な楽曲、アレンジが増え、ロックをさえ感じさせる曲がいくつかありました。本作では、前作で見せたこれらの特徴に、彼がデヴュー当時から持っていた伸びやかなヴォーカル・ラインを上手に乗せ、演奏の持つ力強さと彼の声の持つ哀愁味が微妙なバランスの上に均衡を保つアルバムになっていると思います。(1999.04.10)

PAOLO VALLESI / SABATO 17:45 (1999)   alla "Musica"
 Paolo Vallesi(パオロ・ヴァッレージ)の5枚目のアルバムは、今までとはちょっと違った肌合いのものになりました。
 前作では現代風味と彼の哀愁ヴォーカルがバランスを取り合っていたのですが、本作では現代風味のほうに比重が移っています。その結果、これまでの彼の音楽における大きな魅力だった繊細さ、切ない感じといったものは大幅に後退し、現代風でイギリスのポップスを思わせるような感じになっています。
 もちろん彼のヴォーカルは健在で、彼らしい歌唱を聴かせてくれますが、それを包む楽曲全体の雰囲気がかなり変わっているので、そのあたりで評価を分けそうなアルバムです。
 それぞれの楽曲自体のクオリティは高いので、彼に対してとくに思い入れや予備知識を持っていない人にとっては、文句なく楽しめるのではないかと思いますが、古くからの彼のファンとしては、とまどいを感じるのも事実です。
 PaoloはPaoloでしかなく、このアルバムも間違いなくPaoloのアルバムだということはわかるのですけどね。(1999.04.10)



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PIERANGELO BERTOLI / CANZONE D'AMORE (1987)
 Pierangelo Bertoli(ピエルアンジェロ・ベルトーリ)は自分でも曲を書くようですが、このアルバムでは、自作曲は11曲中の2曲しかありません。他の曲はPaolo Conte(パオロ・コンテ)、Luigi Tenco(ルイジ・テンコ)、Fabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)などによる曲です。そのため、このアルバムで聴かれるのが彼の標準的な曲想なのかはわかりません。
 非常に渋く落ち着いた、いわば“おっさん”な声は、地味だけれども味わいがあります。また、それぞれの曲のアレンジも、彼のヴォーカルに合うような、シンプルですきまのたくさんあるものになっています。
 彼の歌を「森繁久弥みたいだ」と表現した友人がいますが、あながちはずれてはいないでしょう。その点で、若いポップス・ファンにはアピールする部分が少ないかもしれません。でも、こういうおだやかな音楽も、いいものです。(2000.03.12)

PIERANGELO BERTOLI / MASTERPIECE (2000)
廉価でリリースされたベスト盤「MASTERPIECE」シリーズの1枚です。Pierangelo Bertoli(ピエランジェロ・ベルトーリ)はそれなりに名も知られていてアルバムもけっこう出しているカンタウトーレですが、うちにはCDが1枚くらいしかないので、試し聴き?のために買ったのだったわ。
このCDには1970年代半ばから1980年代後半にかけてまでの曲が収録されているのですが、渋い。地味だ。ほとんどビブラートをかけない歌い方。ひなびた声。味わいがありすぎです。Francesco Guccini(フランチェスコ・グッチーニ)などと感じが少し似てるかもしれません。
曲のタイプとしては、完全なアメリカ系フォーク・ソングですね。歌詞についてはわかりませんが、曲に関してはBob Dylan(ボブ・ディラン)フォロワー直系といった印象です。なかにはストリングスが導入され、幾分ロマンティックな印象のものもあるのですが、基本的にはおっさん声で歌われるフォーク・ソング。せっかちでせわしないカントリー風味のものがあったり、ゆっくりした感じのものもありますが、ベーシックな部分ではどの曲も同じに聞こえます。
ベスト盤ということで、おそらく彼の代表曲、人気のある曲を寄せ集めたのでしょうが、その結果、おんなじような曲ばかりがピックアップされてしまったのかなぁ。聴いてて途中で飽きてきちゃいました。たぶん、オリジナルのアルバムならもう少し変化やアルバムを通しての流れのようなものがあるのではないかと思うのだけど。そういう意味でいうと、よく知らないアーティストを聴くときに最初にベスト盤を選ぶのって、危険なことも多いよなと思う今日この頃です。 (NUOVA FONIT CETRA / WARNER FONIT: 8573 84807-2 / ドイツ盤CD) (2005.06.04)



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PIERO CIAMPI / PIERO LITALIANO (1963)
 たぶん1960年代から70年代にかけて主に活動していたPiero Ciampi(ピエロ・チァンピ)『Piero Litaliano』というアルバムだと思うのですが、自信がありません。というのは、曲のクレジットはLitalianoとなっているからです。もしかしてPiero Ciampiは本名をPiero Litalianoというのでしょうか。それとも、Piero Litalianoという人の『Piero Ciampi』というアルバムなのでしょうか。
 それはともかくとして、内容的にはゆるやかなメロディとおだやかなオーケストレーションが美しい、1960年代らしいやわらかなカンツォーネ・イタリアーナとなっています。落ち着いた声で抑えめに歌われているため、とてもロマンティック。あの年代のメロディにアレンジといってしまえばそれまでですが、古き良き時代のあたたかいポピュラー・ミュージックが聴けます。Umberto Bindi(ウンベルト・ビンディ)などが好きな人にアピールしそうに思います。オーケストレーションはG.F.Reverberiという人が担当しています。
 やさしいオーケストラに包まれたゆったりとした曲が醸しだすふわぁっとした肌触りがとても心地よく感じられます。過ごしやすい夕暮れや月夜を思わせるような、おだやかで美しいアルバムです。(2001.10.20)

PIERO CIAMPI / PIERO CIAMPI (1971)
Piero Ciami(ピエロ・チァンピ)の1971年のアルバムです。彼のデビューがいつか知らないのですが、歌手名がそのままアルバム・タイトルとなっているところからすると、もしかしてこれがデビュー作なんでしょうか?
M1の「Sporca estate」はほとんどのパートがピアノだけの伴奏で、Pieroの渋いおっさん声のヴォーカルがロマンティックに響きます。他の曲ではふんだんにオーケストラが配置され、曲によってはチェンバロも導入され、淡々としたおっさん声のヴォーカルとともにロマンティックな曲想が楽しめます。ドタバタとしたドラムなど、時代を感じさせる古さはありますが、それがいまとなってはノスタルジックな魅力にも感じられるといえそうです。いくぶん軽快な曲もあるのですが、全体にはスローからミディアム・テンポの曲が中心です。
Pieroの歌声は、けっして力強く歌い上げることも情熱的に盛り上がることもなく、非常に地味です。タイプとしてはGino Paoli(ジーノ・パオリ)とかUmberto Bindi(ウンベルト・ビンディ)などに似てるかな。そういえばM13の「Il vino」Gino Paoliも自分のアルバムで歌っていた気がするのだけど、Pieroも彼らと同じジェノヴァの出身なのでしょうか。
ピアノやアコースティック・ギターとオーケストラ。古いイタリアン・ポップスとフォーク・ソングの持つやわらかで暖かい感じと、少しセンチメンタルなロマンティックを楽しめるアルバムです。派手さはないので若いポップス・ファンには物足りないかもしれませんね。(RCA / BMG ITALY: 82876598202 / EU盤CD) (2005.10.10)

PIERO CIAMPI / ALL THE BEST (1995)
 Piero Ciampi(ピエロ・チァンピ)は、1960年代から70年代にかけて活動していた人のようです。今も活動を続けているのかは、自分は知りません。
 このアルバムは70年代の曲が収録されていますが、ポップスというよりはフォーク・ソング、あるいはムード・ミュージックに近い感じがします。力強い熱唱を聴かせることはなく、さりげなく歌うシンガーです。
 メロディやバックのアレンジは美しく、全体の印象はとても暖かいものになっています。歌を主体に聴かせるには、表現力、説得力といった面で弱い気がしますが、古いヨーロッパの映画を思わせるようなノスタルジーがあり、心が静かになります。
 刺激に満ちた最近の音楽を愛好する人にとっては、なんとも平凡でおもしろみのない音楽かもしれません。でも、この平凡な美しさが、最近ではなかなか出会えない貴重なものだったりするのではないでしょうか。(1999.10.11)



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PIERROT LUNAIRE / GUDRUN (1977)
 一般に“ソプラノ・ヴォーカルの入ったプログレッシヴ・ロックの名盤”として知られているPierrot Lunaire(ピエロ・リュネール)の『Gudrun』ですが、簡単に“プログレッシヴ・ロック”と呼ぶには前衛音楽要素が強すぎるように思います。その点で、プログレッシヴ・ロック・ファンのなかでもリスナーを選ぶタイプの音楽ではないでしょうか。
 このアルバムは北欧の神話をテーマにしたコンセプト・アルバムらしいですが、残念ながら元となった神話についての知識を自分は持っていません。しかし、冷たい空気のなかに漂う神秘的な“なにか”がところどころで感じられるので、神話というテーマを音楽表現したという点では成功しているのでしょう。
 神話云々というコンセプトを抜きにしても、音楽的なクオリティの高い作品だと思います。多くのイタリアン・プログレッシヴ・ロックとは多少、肌触りが違いますが、ミニマム・ミュージック風のキーボードや前衛音楽的アレンジ、そして合間に現われる、あるときは神の使いのような、またあるときは邪悪な魂のようなソプラノ・ヴォイスが、混沌と調和を繰り返します。聴き手の心をもてあそび狂わすかのような音の合間に現われる美しさは、非常に効果的といえるでしょう。中世と近代、神話と現実が入り混じった空間を映し出します。
 この作品と同じようにソプラノ・ヴォイスを擁したアルバムとして、Jacula(ヤクラ)の『Tardo Pede In Magiam Versus』やOpus Avantra(オプス・アヴァントラ)の『Introspezione』と比較されることも多いようですが、このアルバムで聴けるJacqueline Darby(ジャクェリーネ・ダルビィ)のヴォーカルは、Opus AvantraDonella Del Monaco(ドネラ・デル・モナコ)には及ばないものの、JaculaFiamma Dello Spirito(フィアッマ・デッロ・スピリト)よりも明らかに上でしょう。個人的にはJacquelineのヴォーカルを聴いて思い浮かんだのは、これらイタリアのグループではなく、スペインのCanalios(カナリオス)のアルバム『Ciclos』で聴けるヴォーカルでした。(2000.05.14)



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PINO BECCARIA / FOTOSINTESI (2000)
 よく知らないのですが、Ragazzi Italiani(ラガッツィ・イタリアーニ)のメンバーらしいです。Ragazzi Italianiってどんな音楽をやっているグループでしたっけ? イタリアのSMAPとかいわれていたのだったかな。
 演奏やアレンジに1980年代のブリティッシュ・ポップ的なチープさが紛れ込んでいたり、ちょっとニューウェーブ的な歪んだ音のギターが使われていたりと、ところどころにイギリスを感じさせますが、全体のベースはイタリアらしいメロディと美意識に満ちています。基本的にはやさしくて気のいい兄ちゃんだけど、ときどきは都会に出てちょっと悪ぶってみるような、そんな微笑ましさを感じます。おだやかに気持ちよく伸びるクリアな声も、どことなく頼りなげな面を拭いきれず、それを隠そうとするかのようにディストーション・ギターが入ってきたりもします。
 本質はたぶん、ロマンティックでセンチメンタルな人なのではないかと思いますが、そこに最近の若いイタリアン・カンタウトーレたちによく見られるブリティッシュ・テイストがうまく乗り、ほのかな哀愁を振りまきながらも湿っぽさやベタつきのない、かといって必要以上に英米的にもならない、メロディアスなイタリアン・ポップス/ロックとしてバランスのよい作品になっています。
 青い空と緑の大地の美しさを感じさせる、聴きやすいアルバムです。(2001.01.21)



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PINO DANIELE / TERRA MIA (1977)
 いまや大物カンタウトーレとして知られるナポリ人、ピーノ・ダニエーレ(Pino Daniele)の1st。1980年代以降の彼は、ソフィスティケイトされ、アメリカのジャズ風、AOR風になっているようですが、このアルバムでは、素朴で荒いけれどイタリアらしい魅力に満ちた音楽が聴けます。
 古くからその地域に根づく、そこの住民のための音楽、地域音楽という印象があり、とくに数曲で聴けるトラッド風な女性ヴォーカルは、透き通ったナポリの空と青い海のキラメキがちりばめられているかのようで、非常に印象的です。また、そこはかとなく香る地中海音楽風味も魅力的です。
 多少とっ散らかった感じはしますが、ラジオやテレビではなく「生活のある街」のなかで聴きたくなるような音楽で、自分は好きです。(1999.01.03)

PINO DANIELE / PINO DANIELE (1979)
M1「Je sto' vicino a te」の歌い出しがどうしても「寂しいなって」と聞こえてしまう(実際は「Je sto' vicino a te」と歌ってます)Pino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)のセカンド・アルバム。この後のアルバムではどんどんアメリカ風のジャジーな感じが強まっていくPinoですが、ここではまだナポリの泥臭い面がけっこうしっかり残っています。
M2「Chi tene 'o mare」などはかなりエキゾティックな感じで、1980年代以降の作品にはあまり聴かれないタイプだと思います。またM4「Je so' pazzo」もちょっとプリミティブというか、洗練されていないがゆえのよさが感じられる泥臭フォークです。
一方でM3「Basta na jurnata e sole」やM7「Ue man!」のように、アメリカンな面も出てきつつあります。しかし、後年の作品のように、それに全体が覆われてしまうことはなく、どちらかというとナポリ風味のほうが前面に出ているのが好ましいです。
M5「Ninnananinnanoe'」もナポリぽいエキゾティシズムあふれるメロディとほのぼのとしたフォーク・アレンジがいい感じで、ナポリ・ポップスの名作だったPinoのファースト・アルバムを思い出させます。
M6「Chillo e' nu buono guaglione」は軽やかなテンポを持った曲で、サンバふうのリズムとキラキラと輝く太陽を思わせる南国イメージが楽しめます。
M8「Donna cuncetta」などは、曲のタイプはぜんぜん違いますが、メロディのなかにOsanna(オザンナ)に通じるものを感じます。かたやカンタウトーレ、かたやプログレッシヴ・ロック・グループと、ジャンルは違いますが、同じナポリ出身だからでしょうか。
アルバムを締めくくるM12「E cerca 'e ne capi'」では穏やかなストリングスも入り、穏やかに、しかし唐突に、曲が終わります。これはこれで余韻があります。
前作同様、このアルバムでもナポリ方言で唄われているらしく、歌詞カードにたくさんのイタリア語注がついています。ドラムで元フォルムラ・トレ(Formula 3)トニー・チッコ(Tony Cicco)が数曲、参加しています。 (EMI ITALIANA: 0777 7 46792 2 0 / イタリア盤CD) (2003.10.19)

PINO DANIELE / FERRYBOAT (1985)   alla "Musica"
1980年代以降のPino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)ってアメリカ風味が強くて、さらにジャズ・テイストも強くて、以前はあんまり好きじゃなかったのですが、最近はそれほど拒否反応を示さずに聴けるようになってきました。アメリカ風味もジャズ・テイストも、個人的にあまり好きじゃないのは変わらないのですが、Pinoの音楽にはそのなかに、ほんのりながらも南イタリアの空気が流れているからでしょう。そこはやはりイタリア人のなかでもキャラの強いナポリ人だからなんでしょうね。表面はアメリカふうになっても、消せない「イタリア」が顔を出すのだと思います。そして自分としては、そんな「ほんのりとしたイタリア」を以前より楽しめるようになったんだろうな。
アメリカっぽいAORふうのジャジーなポップスが中心のアルバムで、全体としてはそれほど自分の好みでないことに変わりはありませんが、明るい太陽の下である種のリゾート気分を味わうために年に何回かプレーヤーにかけるのも悪くないなという気もします。
M2「Bona Jurnata」はアメリカのゴージャス(?)なAORみたい。派手なアレンジと、Pinoにしては力強いヴォーカル、なめらかなメロディが楽しめます。
M3「Sara'」もAORっぽいけれど、そのなかにほんのりと地中海ふうの明るさがあるのが心地よいです。やわらかなホーンも入り、「Hard to say I'm sorry (素直になれなくて)」のころのChicago(シカゴ)みたいです。(SCIO RECORDS/EMI: CDP 7468072 / イタリア盤CD) (2003.09.07)

 アメリカの有名なジャズ・ドラマー、Steve Gadd(スティーヴ・ガッド)をゲストに迎えたこのアルバムには、アメリカ的なおしゃれジャズ・ポップ要素が多くありますが、そのなかにナポリならではの哀愁や、さんさんと輝く太陽の光と海の反射を感じさせるキラメキが見え隠れしています。丸く暖かな声もなめらかに響きます。
 演奏があまりにもクリアでスッキリしているために、よりアメリカぽさを感じてしまいますが、その音楽のベース、とくに彼の歌とギターには、きちんとナポリが流れているのが聴き取れます。(2001.02.18)

PINO DANIELE / MASCALZONE LATINO (1989)
 1980年代以降のPino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)って、アメリカンなジャズ風味が強くて、個人的にはあまり好きではなかったりします。デヴュー・アルバムが南イタリアらしいキラキラした輝きに満ちたナポリ・ポップスのよいアルバムだっただけに、より強くそう感じるのかもしれません。
 というわけで、どちらかというと苦手な1980年代以降のPinoですが、このアルバムはなかなかです。アメリカンなジャズ風味もいくらかはあるのですが、それ以上にこのアルバム全体を支配しているのがラテン・ミュージックのテイストだからでしょう。
 洗練されたジャズ・ポップスに地中海らしいキラキラした太陽と海の輝きがちりばめられています。Pinoの丸くやわらかな声も、ときに甘く、ときに力強く、楽曲を引っ張ります。ガットギターの響きも柔らかい音のなかに情熱と哀愁を感じさせ、魅力を高めています。
 ときにBanco del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)などの演奏する地中海ポップスを思わせるところもあり、またときにはスパニッシュなフレーバーを感じさせるなど、南欧ラテンなポップス・アルバムとして楽しみどころがたくさんあります。(2002.05.19)



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PINO MAURO / GESU' (2004)
タイトルが「Gesu'(イエス・キリスト)」で、ジャケットが(おそらく)十字架上のイエスの顔アップですから、いったいどんな恐ろしげな、あるいは哀しげな音楽が聞こえてくるのかと思いきや、意外と普通のナポレターナでした。アルバム・タイトル曲のM1は「Gesu'」は哀しげですが、ほかには明るい感じの曲もあれば哀愁のバラードもあります。とくにイエス・キリストがアルバムのテーマというわけでもなさそうです。
たぶん、Pino Mauro(ピーノ・マウロ)の歌を聴くのは、自分は初めてだと思うのですが、彼自身はもう30年くらい(以上?)前から活動を続けているナポレターナ歌手のようで、ベスト盤等も含めアルバムも大量にあるようです。もうおじいちゃんに近い年齢のようですが、ナポレターナ歌手らしく、美しくて力強い歌声を持っています。フレーズの語尾が少し震えるような感じでフェードアウトしていく歌い方が優しい感じを出しています。
いかにもナポリといった感じのメロディ自体には目新しさとかはないけれど、素直な流れは単純に心地よく響きます。ただ、ナポリ・ローカルの歌手のアルバムにありがちに感じるのですが、電子楽器(とくにキーボード系)の使い方や音づくりが薄っぺらくて安っぽいのはなぜなんでしょうね。 (FUEGO/SELF DISTRIBUZIONE: FCD 3064 / イタリア盤CD) (2006.06.18)



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PIPPO POLLINA / ELEMENTARE WATSON (2000)
 アコースティック・ギターの弾き語りを中心とした、シンプルなフォーク・ロックです。曲によっては生ピアノやヴァイオリンなどのサポートがつきますが、基本は1本もしくは2本程度のギター・サウンドしか聴こえません。
 いかにもフォークソング的な曲、ちょっと泥臭い感じの曲、いくぶんジャズ・ヴォーカルを思わせる曲など、曲想に幅があり、アルバムを通して聴いても起伏を感じられます。そのため、シンプルな演奏が続いても、とくに飽きるといったことがありません。
 ピアノやストリングスの入る曲はロマンと哀愁があり、心にしみます。曲の展開やメロディ、演奏に派手さがない分、余計に、おだやかな空気で聴き手を包み込んでくれるかのようです。
 歌い方も、声を張ったり、歌い上げたりということもなく、どちらかというと淡々と、サビの部分で少し力が入るといった感じで、男性ならではの奥行きとやさしさがあります。
 いわゆるポップス・ファン、ロック・ファンには地味すぎて退屈かもしれませんが、冬の冷たい空気のなかで赤く燃える焚き火にあたっているような、おだやかさと暖かさ、質素な幸福が感じられる作品です。(2001.01.21)



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PUPO / TORNERO' (1998)
 Pupo(プーポ)は、本名をEnzo Ghinazzi(エンツォ・ギナッツィ)というらしいです。この名前からどうしてPupoという愛称(?)になるのか、ぜんぜんわかりません。出身はMarco Masini(マルコ・マジーニ)と同じイタリア中部、トスカーナ州のフィレンツェだそうです。だからといってMarcoの音楽性とのあいだに類似性は感じませんが、方向性は違うものの、Marcoに負けない美しいメロディを持ったカンタウトーレです。
 ただ、Pupoの場合、カンタウトーレというよりはポップ・シンガーといったほうがぴったりするような曲を書きます。甘くやさしい曲調の、耳ざわりがよいメロディをやさしい声で歌います。曲自体に深みや背景にまで意識を向かわせるような奥行きは感じませんが、日常のさまざまなシーンでBGMとして流しておきたいような心地よさがあります。
 このアルバムは新録のベスト盤ですから、その性格上、アルバムとしてのドラマ性やストーリー性といったものは期待できません。ただ、こういったベスト盤では、数曲を聴く分にはよくてもCDを1枚聴きとおすのは途中で飽きてしまうようなことが少なくないのですが、PupoのこのCDは最後まで飽きずに聴けます。それは、ひとつは収録時間が50分弱と、最近のベスト盤にしては手ごろなこともありますが、それ以上に、それぞれの曲の持つメロディが魅力的でポピュラリティがあることが大きいでしょう。また同時に、シンガーとしての力量も、一見(一聴?)平凡に感じますが、じつは優れているのだと思います。
 これといって強いクセがなく、しかしイタリアらしいメロディと大衆性を存分に持ったアルバムです。イタリアン初心者のポップス・ファンにもすすめられるでしょう。
 ちなみに、アルバム・タイトル曲の「Tornero'」は、i Santo California(イ・サント・カリフォルニア)のヒット曲のカバーです。(2001.08.19)



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IL PAESE DEI BALOCCHI / IL PAESE DEI BALOCCHI (1972)   alla "Musica"
 オルガンを中心にベースとドラムの重たい響きがユニゾンでかぶさるオープニング・テーマの印象からか、このアルバムをOsanna(オザンナ)などと似たタイプの、ダークなドロドロ系シンフォニック・ロックと評する人もいるようですが、自分としては、このアルバムの本質は、ドロドロ感と透明な繊細さの両立にあるように思います。重いテーマ・メロディのあとに突如入ってくる艶かしい弦の響き、ハードな演奏の合間に現われる静謐なコーラス、弦楽をバックに歌われる詩情あふれるメロディなど、静と動、聖と邪、明と暗が、アルバムを包むジャケット・アートさながらにモザイク状に現われては消え、独特の夢世界をつくっています。(2002.03.17)



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PICCOLA ORCHESTRA AVION TRAVEL / FINALMENTE FIORI (1995)
 イタリアン・ポップスというよりは、ロマンティックなラテン・ミュージックといったほうが感じが近いように思います。それに、ユーロピアン・サロン・ミュージックふうのリラックスした感じが混ぜ合わさっていて、ところどころシャンソンを思わせるところもあります。
 グループ名はPiccola Orchestra Avion Travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)というのですが、オーケストラといってもクラシック的なところはなく、ムーディなジャズとラテンをベースにしたような、ちょっと変わったポップスが聴けます。柔らかい音のアコースティック楽器を中心にした演奏と落ち着いたヴォーカルは、大人の音楽といった感じがします。(1999.08.15)

PICCOLA ORCHESTRA AVION TRAVEL / VIVO DI CANZONI (1998)   alla "Musica"
もともとは1997年にリリースされた『Vivo di canzoni』に、1998年のサンレモ参加曲「Dormi e sogna」を追加収録して再リリースされたもの。「Dormi e sogna」以外は、アルバム・タイトルからも想像がつくように、ライヴ収録となっています。1996年の夏に行なったツアーから収録したようで、それぞれの曲の収録日と収録場所が記されています。アコースティックな楽器群(ピアノ、ギター、ベース、管など)に落ち着いたヴォーカルが乗る、大人の音楽。スローからミディアム・テンポの曲が多く、ジャズやラテンの風味がただよう魅惑のムード・ポップスといった感じです。 (CATERINA CASELLI SUGAR/INSIEME/UNIVERSAL MUSIC: SGR D 77816 / イタリア盤CD?) (2006.07.02)

PICCOLA ORCHESTRA AVION TRAVEL / CIRANO (1999)
 Piccola orchestra avion travel(ピッコラ・オルケストラ・アヴィオン・トラヴェル)の音楽には、独特のロマンティシズムがあります。ベースとギターがほとんどアコースティックなせいもあるのでしょうが、現代のポップスというよりは、ひと昔もふた昔も、いえ、場合によってはもっと前の、音楽がおだやかだった時代を思わせます。といっても、けっして古臭いわけではなく、楽曲自体は洗練されています。
 彼らはナポリの北にあるカゼルタというところが出身ですが、彼らの音楽から感じられるのはナポレターナやカンツォーネ・イタリアーナの匂いよりも、もっと広いラテン・ポップスにシャンソンの香りでしょうか。そこに演劇的な印象も加わります。落ち着いたヴォーカルには深みと広がりがあって、おだやかな演奏が歌にさらなる奥行きを与えます。
 たとえば、時間帯でいえば夕暮れから夜、場所は古いヨーロッパの街角を思わせるような、ロマンティックで趣きにあふれた映像が浮かび上がるような音楽です。わかりやすい哀愁や派手な色彩はないため、どちらかというと通好みのグループだとは思いますが、アーティスティックな感性とポピュラリズムがバランスよく表現された、非常に質の高いグループであり、作品でしょう。(2002.04.21)



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I POOH / BUONA FORTUNA (1981)   alla "Musica"
オープニングのタイトル曲「Buona fortuna」でしびれてしまいます。リズミックなピアノのストロークにかぶさってくるギターのティキトゥクティキトゥクというフレーズ、そしてズチャチャチャァラァ〜とユニゾンでコードを鳴らしてヴォーカル・パートへ。このまま単純なコード・ストロークでバックの演奏が続くのかと思いきや、ギターは常にフレーズを奏で続け、キーボードはコードを響かせ、ベースもメロディを弾き、ヴォーカル・ラインとあわせて重層的なハーモニーを構築してる。単純なコードのユニゾン・ストロークとかぜんぜんない。それぞれの楽器がそれぞれの役割とメロディを持って全体のコードやハーモニーを構成してるんです。すごいアレンジだ。なのに、そこにすごさとか重さとかくどさとか押し付けがましさを感じさせず、ひたすら明るく軽やかにさわやかなポップスなのが、さらにすごいです。アルバム全体を見ても、ポップで速いテンポの曲からスローなバラードまで、曲のヴァリエーションや配置も非常によく考えられています。もちろん、かんぺきに美しいコーラスもたっぷり導入されています。 (CGD: CDS 6044 / フランス盤CD) (2005.10.10)

I POOH / UN POSTO FELICE (1999)   alla "Musica"
 いつもどおりのPooh(プー)の音楽、つまり、明るい陽射しと青く澄んだ空、ちょっとおしゃれでドラマもあり、メロディとコーラスはどこまでも美しいという、ある意味で典型的なイタリアン・ポップスが聴けます。目新しさや珍しさはありませんが、優しい気持ちにあふれた音楽です。(2000.06.17)

I POOH / CENTO DI QUESTE VITE (2000)   alla "Musica"
 明るくさわやかなメロディと甘いセンチメンタリズム、そして豊かな音空間は、Pooh(プー)の大きな魅力ですが、今作でもそういった持ち味は充分に発揮されています。ただ、曲の傾向として、感情を素直に出したり、抜けるようなイタリアの空の青さを感じさせるクリアな性格を持ったものよりも、そこからうしろに1歩引いた、いくぶん客観的なかたちで感情を伝える……そんな感じの曲が多いように思います。
 結果として、このアルバムは、Poohらしさは失わずに、より重量感、密度の感じられる作品に仕上がっているといえるでしょう。相変わらず演奏はうまく、厚みのあるコーラスワークも健在です。短調の曲が多いですが、1970年代のような濃密な哀愁はなく、コントロールされた落ち着きのある哀愁を表現しています。
 都会的なロマンティシズムを持ったアルバムです。(2000.12.17)

POOH / ASCOLTA (2004)   alla "Musica"
あいかわらずPooh(プー)らしさ全開、Poohの魅力満載です。Poohならではのヴォーカル・アンサンブル、コーラス・ワークは健在です。いつもどおり、素晴らしい歌声を聞かせてくれます。演奏力も高く、ギターなんかずいぶん活躍してます。シングルカットされた「Capita quando capita」など、いかにもPoohらしい曲ですよね。シンフォニックなオープニング曲から、ポップなシングル曲、美しいバラード、ちょっとハードなロック・チューンなど、さまざまなタイプの曲が収録されていて、それぞれのクオリティがとても高いと思います。曲のヴァリエーションが多彩なのに、アルバムとしてばらけた感じがしない、きちんとPoohのアルバムとしてのまとまりとストーリーを見せるところなど、完成度は高いです。優れたイタリアン・ポップスのアルバムだといえるでしょう。(2004.12.25)



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PREMIATA FORNERIA MARCONI / CHOCOLATE KINGS (1975)   alla "Musica"
 初期のPFMには、演奏力は圧倒的に高いのに、ヴォーカルがいかにもひ弱で頼りなく、演奏とのバランスが悪いという弱さがあったと思います。その点、このアルバムにはBernardo Lanzetti(ベルナルド・ランゼッティ)という専任ヴォーカリストがいるため、ヴォーカル・パートでの整合性やダイナミズムが上がっています。それにより、PFMというグループの持つ演奏力の高さが一層発揮され、グループ全体のパワーが上がったように感じます。
 ワールドワイドなロックとしてのダイナミズムと地中海的なキラキラとした明るさ、そして南の海を渡ってくるあたたかくさわやかな潮風を受けているかのような、やわらかくなめらかなフレーズがバランスよく展開する構成は、イタリアン・グループとしてのアイデンティティとクオリティの高さを充分に表現しています。(2002.03.17)

PREMIATA FORNERIA MARCONI / JET LAG (1977)   alla "Musica"
演奏が始まると「あ、PFMだ」と感じさせるあたり、やはり彼らはすごいですね。楽器の音づくりとアンサンブル・アレンジに特徴があるのかな。テクニカルなんだけど、どこかおおらかなところもあって、独特の澄んだ明るさが感じられます。演奏はあいかわらずめちゃめちゃうまくて、インストゥルメンタル志向のジャズ・ロック系プログレッシヴ・ロックなどが好きな人には充分満足の内容じゃないかと思います。アルバム冒頭で聞かれるFranco Mussida(フランコ・ムッシーダ)のアコースティック・ギター・ソロ曲には南イタリアを思わせるキラキラとした太陽の輝きなどが思い浮かべられ、とても魅力的です。 (BMG FUNHOUSE: BVCM-37591 / 日本盤CD) (2006.07.22)

PREMIATA FORNERIA MARCONI / PASSPARTU' (1978)   alla "Musica"
自分はプログレ・ファン&PFMファンのあいだではあまり評判のよくないBernardo Lanzetti(ベルナルド・ランゼッティ)のヴォーカルが意外と好きだったりしまして、この『Passpartu'』Bernardoのヴォーカルがうまくはまってるよなぁなどと思いながら楽しんでいます。アルバム後半はどうってことのない、演奏がうまいだけの中途半端なポップスに聴こえてしまうのですが、前半が素晴らしい。地中海風味たっぷりのプログレッシヴ・ポップス。きらきらした地中海を思わせるようなアコースティック・ギターが冴えまくってます。テクニカルで動きの多いベースも曲に奥行きと広がりを与えてます。 (RCA/BMG ARIOLA: ND 75235 / イタリア盤CD) (2006.03.21)

PREMIATA FORNERIA MARCONI / SUONARE SUONARE (1980)   alla "Musica"
Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)といえばイタリアン・ロックの最高峰、イタリアのトップ・グループのひとつとして多くのイタリアン・ミュージック・ファンから支持と賛辞を得ているビッグ・ネームですが、自分は彼らの音楽があまり好きではありません。演奏はうまいのだけど、ヴォーカルが弱いのと、いわゆる「歌心」があまり感じられない(自分には)ところが、彼らの音楽に夢中になれない理由なんだろうな。それでも『Per un amico』とか『Chocolate Kings』とか『Passpartu』などはけっこう気に入ってたりするのですが、この『Suonare suonare』は微妙というか、個々の曲には魅かれるものがあったりはしても全体としては魅力を感じられないという、自分にとってのPFMの位置を再確認するような作品でした。 (RCA / BMG ARIOLA: 74321 100812 / イタリア盤CD) (2007.12.16)

PREMIATA FORNERIA MARCONI / DRACULA - OPERA ROCK (2005)   alla "Musica"
このアルバム、PFMだと知らずに聴いたなら、きっとPFMのアルバムとは気づかなっただろうなと思います。タイトルどおり、吸血鬼ドラキュラをテーマにしたロック・オペラのサウンドトラック。そんなこともあってか、PFMなのにすごく音が重い。そして、暗い。こういった重厚な感じのする音楽はいかにもユーロ・ロック的ではありますが、PFMからこういう音が出てくるとは、自分は想像してませんでした。舞台用音楽らしく、ドラマティックでスリリングなオーケストラがふんだんに導入され、音楽に厚みと物語性をたっぷりと加えています。さらには混声合唱まで入ります。 (MUSIZA/SONY BMG MUSIC ENTERTAINMENT: 82876723062 / EU盤CD) (2006.07.22)



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