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SWEDEN


さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


Morte Macabre / Par Lindh Project / Silver Mountain / Therion / Yngwie Malmsteen




MORTE MACABRE / SYMPHONIC HOLOCAUST (1998)   alla "Musica"
Anekdoten(アネクドテン)Landberk(ランドベルク)のメンバーによるプロジェクトらしいです。どういう音楽なのかもわからないまま手に入れたのですが、その実態?は、ホラー映画に使われた曲をMorte Macabre(モルト・マカブル)がカバー?したもの。基本はあくまでも「サウンド・トラック」の寄せ集め。プログレッシヴ・ロックとしてのダイナミズムとかは、あまり期待できません。全曲にわたってメロトロンが鳴り響いていますが、これが本当に効果的なメロトロンの使い方かというと、そうは感じません。悪くはないのだけど、やっぱりサウンド・トラック的、BGM的だなぁ。雰囲気のなかでうつらうつらするのによさそうなアルバムでした。 (MORTE MACABRE / MELLOTRONEN: MELLOCD 008 / スウェーデン盤CD) (2004.12.25)



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PAR LINDH PROJECT / GOTHIC IMPRESSIONS (1994)
パイプ・オルガンやメロトロン・フルート、チェンバロなども導入されたキーボード・プログレッシヴ・ロックです。さらに混声合唱も入り、そういう点ではプログレッシヴ度がかなり高いといえます。高いはずなんだけど、あまりワクワクしないのは、Par Lindh(パール・リンダー)の奏でるキーボードと、その他の演奏およびヴォーカルとのあいだに、あまりにも力量の差があるというか、バランスの悪さがあるからでしょうか。それとも、楽曲の方向性とヴォーカルの雰囲気があまりにも違うからでしょうか。
キーボードを前面に押し出したスリリングでテクニカルでハード・ドラマティックなプログレッシヴ・ロックになるはずが、もさもさとキレのないドラムがまずスピード感にブレーキをかけ、ちからのないファンタジックなヴォーカルがさらに曲の勢いを止めてしまいます。とくにこのヴォーカルのミスマッチ感を強く感じます。たとえばMandaraband(マンダラバンド)Fantasy(ファンタジー)などのドリーミーなブリティッシュ・プログレッシヴなら合うかもしれませんが、このアルバムの曲調で歌うには、メリットを感じません。1980年代のジャパニーズ・プログレッシヴ・グループ、たとえばDeja-vu(デジャ・ヴ)Social Tension(ソシアル・テンション)を聴いたときと同じような「座りの悪さ」をヴォーカルに感じてしまいます。
楽曲的には、ハードな部分あり、スローで美しい部分あり、荘厳な部分ありと、場面展開もそれなりに考えられていて聴かせるものがあるだけに、こういったアンバランスが残念です。Par Lindh Projectというグループ名どおり、Par Lindhが「自分の好きな音楽」を「自分のために」演奏しているのだろうけれど、それに他のミュージシャンがうまくついてこれていないような印象を受けました。(2003.06.15)



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SILVER MOUNTAIN / SHAKIN' BRAINS (1983)
スウェーデンをはじめとした、いわゆる北欧メタルって、クラシカル・フィーリングにあふれてて、けっこう好きなんです。いわゆるイギリスの様式美メタルなどもプログレッシヴ・ファンの心を妖しく揺らしますが、北欧メタルやドイツのメロディック・スピード・メタルなどはそれ以上に、もっとダイレクトにプログレ心に訴えかける部分があるように思うのですが、どうでしょう。Silver Mountain(シルヴァー・マウンテン)もそういった北欧メタル、スウェディッシュ・メタルのグループです。
少なくとも日本では、北欧メタルといえばその中心はスウェーデン産のものをいうように思いますが、スウェディッシュ・メタルってじつは、けっこうもっさりしていると思いませんか。北欧=スウェーデンのイメージは、たぶんEurope(ヨーロッパ)Yngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)の成功からきているのではないかと思いますが、彼らの音楽も、とくに初期のころはもっさりしています。Yngwieだって、ギター・ソロこそ華麗かつ超スピードですが、バッキングはかなりイモ臭い。こういった、もうひとつ冴えない感じを持ったクラシカルな美しさが、スウェーデン(北欧)メタルの魅力に思います。
そういう意味でSilver Mountainは、まさに北欧メタル。あふれるクラシカル・フィーリング、スピードはあるのにもっさりした感じ、ちょっと無理やりな場面転換によるドラマティックな構成などなど、たまらないです。演奏力があまり高すぎないところも好ましい。楽曲の出来も、のちのアルバムよりいいし、愛すべき北欧メタルの典型アルバムという感じです。
ちなみに、キーボードのJens Johansson(イェンス・ヨハンソン)はのちにYngwieRising Force(ライジング・フォース)で活躍したのは有名ですね。(2003.07.20)

SILVER MOUNTAIN / ROSES & CHAMPAGNE (1988)   alla "Musica"
ファーストとセカンドは、もっさりと垢抜けないところは多分にあったけれど、それがある種独特な哀愁となって、クラシカルなフレーズをかえって魅力的にしていたところがあったと思います。その点、このサード・アルバムは、もっさり感が減り、すっきりポップなクラシカル・フレーバーになって、以前ほど陰影に満ちた哀愁は感じられなくなりました。曲自体もずいぶんポップな要素が増えました。それでもJonas Hansson(ヨナス・ハンソン)の弾くギターは哀愁があって素敵です。ビブラートのかけ方とか、ちょっと線の細い音色とか、変わりません。そして、キーボードのアルペジオ風のフレーズをふんだんにちりばめたメロディは、Yngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)の5倍くらいスピードは遅いけど、北欧クラシカル・メタルらしい情感を持っていて好ましいです。 (HEX RECORDS / FUN HOUSE: 28GD-7026 / 日本盤CD) (2004.12.25)



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THERION / DEGGIAL (2000)
アルバム『Secret of the Runes』でユーロピアン・ドラマティカル・クラシカル・クワイア・メタル(いま勝手に名付けてみました)の頂点を極めたTherion(セリオン)『Deggial』『Secret〜』の前作にあたるのですが、このアルバムでもドラマティックなクワイア・メタルというスタイルは完成されています。
とはいえ、完成度の高さではやはり『Secret〜』にかないません。もともとデス・メタル出身のグループですが、曲づくり、とくに歌メロ面とギターのバッキング・アレンジに、デス・メタルの呪縛(?)がまだあるのかな。ちょっと単調なんですよ。なので、せっかくのクワイアがあまり効果的に神聖さとその対局にある邪悪さの両方を感じさせることをできずにいると思います。
でも、このアルバム(ステップ)があったからこその『Secret〜』なんでしょうね。そういう意味では、着実にスタイルを進化させ、自身のスタイルに対する理解度も深めてきたグループなんだろうと感じます。先に『Secret〜』のを聴いてしまい、その衝撃があまりにも大きかったため、あとから聴いたこのアルバムに対しては少しものたりなさを感じてしまいますが、アルバムリリース順に聴いていたら、そのスタイルの深まり方にワクワクしたに違いないと思います。 (2004.12.25)

THERION / SECRET OF THE RUNES (2001)   alla "Musica"
合唱ロック/ポップス・ファンの自分にとってストライク・ゾーンど真ん中です。全編が合唱(クワイア)。男声、女声、混声が入り混じり、バックにはオーケストラが鳴り、めちゃめちゃクラシカル&ドラマティック! クラシックの持つ重厚さとドラマティックさ、そして美しいメロディに、ロックのリズムと力強さが乗る、そんなロックを探していました。それがいま、目の前に。ドラマティックで厚みのある演奏、美しく重厚でヨーロッパのロマンと哀愁あふれるメロディ。もうヨーロッパでしかありえないロック・ミュージック。素晴らしい!! (EPIC/SONY MUSIC ENTERTAINMENT: EPC 503229 2 / オランダ盤CD) (2004.07.25)

THERION / LEMURIA (2004)   alla "Musica"
前作『Secret of the Runes』でドロマティック・オーケストラル・クワイア・メタルの頂点を極めたTherion(セリオン)の待望の新作は、それぞれ『Lemuria』『Sirius B』と名づけられた2枚のアルバムが1つのパッケージに収められた2枚組みとなりました。『Sirius B』でも感じられたのですが、Therionは、傑作となった『Secret of the Runes』の次に進む方向として、この路線をさらに高い次元にまで持っていくことをめざすのではなく、原点回帰というか、初期のころの自分たちが持っていたアイデンティティをもう一度確認することを選んだのかなという気がします。このアルバムでも、男声・女声を巧みに使ったクワイアは健在です。でも、その密度は下がってきているように感じます。また、ひさしく聴いていなかったデス声(ヴォォォォォ〜とかいうヴォーカル)がこのアルバムでは一部導入され、彼らがもともとはデス・メタル・グループであったことを思い出させますし、さらにはちょっとハイ・トーンめのシャウト・ヴォーカルもあり、ヘヴィ・メタル・グループであることも主張しています。 (2004.12.25)

THERION / SIRIUS B (2004)   alla "Musica"
前作『Secret of the Runes』でドロマティック・オーケストラル・クワイア・メタルの頂点を極めたTherion(セリオン)の、待望の新作は、それぞれ『Lemuria』『Sirius B』と名づけられた2枚のアルバムが1つのパッケージに収められた2枚組みとなりました。初期のデス・メタルから、オーケストラおよびクワイアの導入により独自のドラマティック・メタルをつくりユーロピアン・ロマンを前面に押し出してきたわけですが、前作でその頂点を極めてしまったので、次の方向としては、同じ道筋でさらに高みをめざすか、あらたな道筋を探すか、あるいは自分たちのたどってきた道筋を一歩引いて見つめなおすかといったことになるのでしょう。そしてTherionは、最後の道筋、自分たちのたどってきた道筋を客観的に見つめなおすという方法をとったような気がします。オーケストラとクワイア、それにヘヴィ・メタルな演奏がすぐれたバランスのうえで渾然一体となって鳥肌モノのユーロ世界を築きあげた前作とくらべると、バランス感が悪いです。それでも、パイプ・オルガンから始まり、アコースティック・ギターのアルペジオのうえで混声合唱が厳かに響きわたるM7「The Wonderous World of Punt」などは、プログレッシヴ・ファンとしての心がかなり揺さぶられました。 (2004.12.25)



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YNGWIE MALMSTEEN / THE SEVENTH SIGN (1993)   alla "Musica"
初期のころのYngwie Malmsteen(イングヴェイ・マルムスティーン)のアルバムにはクリスタルのような透明さが満ちていて、英米のロックとは違うスウェーデンならではの陰影とクラシカルな響きに魅了されたものです。ギターソロのスピードやディミニッシュ・スケールを多用したフレージングは素晴らしく、それがバッキングの凡庸さや意外と艶のないヴォーカル・ラインといった部分を充分以上にカバーしていました。
そのころの作品とくらべると、このアルバムでは透明さが後退した反面、より力強さが出てきていて、ヘヴィ・メタルらしいサウンドになっています。バッキングのアレンジもいくらかあか抜けてきたし、曲調も北欧らしいクラシカルなものやアメリカンなもの、ドラマティックなスピード・メタルなど、幅が広がっています。ヴォーカル・ラインも、艶のなさはあいかわらずですが、それでもかなりこなれた感じです。(LEWIS ENTERTAINMENT / PONY CANYON: PCCY-00531 / 日本盤CD) (2003.09.07)



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