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U.K.


さらっと聴いたときのアルバムの印象を簡単に紹介します。


All About Eve / Asia / Barclay James Harvest / Caravan / David Bowie / Electric Light Orchestra / England / Flaming Youth / It Bites / Iron Maiden / Jon & Vangelis / Karda Estra / Mandalaband / Matthew Fisher / Pink Floyd / Procol Harum / Robert John Godfrey / Roger Waters / Strawbs / Supertramp / Uriah Heep / Van Der Graaf Generator / Wally




ALL ABOUT EVE / SCARLET AND OTHER STORIES (1989)
 CD屋のジャンル分けではニューウェーヴに入れられることが多い気がするAll About Eve(オール・アバウト・イヴ)ですが、彼らの音楽のベースは、単純にいってしまえば「ブリティッシュ」ということに尽きるでしょう。耽美派ニューウェーヴ的でもあり、フォーク的でもあり、プログレッシヴ・ロック的でもある音楽性の根底には常に、イギリスならではの歴史の重みに基づいたゴシック・ロマン的豊潤さがあります。透明感のある冷たい空気のなかに漂う湿り気は、古くからの逃れられない不安と悲しみをたたえているようでもあります。
 こういった感触は、初期のKate Bush(ケイト・ブッシュ)などにも通じるところがあるかもしれません。音楽のスタイルは違いますが、伝統が重くのしかかる国ならではの狂気の断片が、垣間見えるような気がするのです。
 Kateの場合、極端な話、ヴォーカルのみでそれを表現していましたが、AAEはバンド・サウンドのなかでそれが表現されています。
 Julianne Regan(ジュリアンヌ・リーガン)のヴォーカルは、女性ヴォーカリストにありがちな、キンキンとしたもの、あるいは自意識過剰で押しつけがましいものではなく、落ち着きと陰影のある、非常にヨーロッパ的なものです。このアルバムの時点ではまだ若かったため、技術や情の込め方といった点ではあっさりしていますが、それがかえって透明感と幻想味を深めているともいえるでしょう。
 初期のGenesis(ジェネシス)が持っていた、大英帝国の神秘の森の奥で奏でられるかのような音楽のスピリットは、その後のGenesisフォロワーやポンプ勢にではなく、じつはAAEに受け継がれていたのかもしれません。(2001.01.21)



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ASIA / same (1982)   alla "Musica"
正直にいって、自分は彼らがあんまり好きじゃなかったんですよ、デヴューしたころ。King Crimson(キング・クリムゾン)、Yes(イエス)、EL&Pのメンバーが集まって、なんでこんなにアメリカンな音になっちゃうんだろうって。これじゃJourney(ジャーニー)Styx(スティックス)とたいして変わらんと。でもいまは、グループのメンバー構成だとか、それぞれのメンバーの履歴だとかにあまり興味がなくなってしまい、単純に「いま聞こえている曲」をどう感じるかという聴き方をするようになってきたためか、これはこれでいいんじゃないかなぁと、べつにJourneyもどきでもいいかなぁと、そんなふうに思えます。プログレッシヴとかポップスとかにこだわらず、お手軽に気軽に楽しむ「ブリティッシュ風な雰囲気も持ったアメリカンなロック」(みんなイギリス人なのに)として楽しむのが、自分にとっては正解な感じのアルバムです。 (2004.12.25)



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BARCLAY JAMES HARVEST / OCTOBERON (1976)   alla "Musica"
イギリスの田園風景を思わせるような牧歌的な香り、ゆったりとしたあたたかなメロディ、美しくやわらかなオーケストレーション。ときにロック風のギターも入るけれど、基本は典型的なシンフォニック・ロックでしょう。いまではほとんどみることのできない「ヘヴィ・メタルの洗礼を受けていない」グループ(古いグループだから当然ですが)。演奏もけっしてうまくないし、難しいこともやっていない。大仕掛けな構成や展開があるわけでもない。そういった見かけ上のものではなく、もっと根源的な「ハート」のあたたかさを大事に大事に表現しているような、そんなアルバムだと思います。 (MCA RECORDS: MCA-2234 / アメリカ盤LP) (2004.07.25)



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CARAVAN / FOR GIRLS WHO GROW PLUMP IN THE NIGHT (1973)
夜ごとに太る女たちのために。邦題はたしか、こんなでしたよね。Caravan(キャラヴァン)の名盤『For Girls Who Grow Plump in the Night』です。
ひさしぶりに聴いたのですが、プログレッシヴ・ロックは「重い・暗い・長いの三重苦」といわれるなか(笑)、Caravanの奏でる軽やかでどこかのほほんとしたプログレッシヴ・ロックは貴重です。ヨーロッパの田園を思わせるのんびりした感じと、アメリカのカントリーやフォークソングにも通じるようなやわらかさ。だけどアメリカほど乾いてなくて、ちょっと湿ったあたたかさなのがやっぱりイギリス? ヴァイオリンというよりはフィドルの音色で、でもメロディやフレーズはフィドルというよりはヴァイオリンな、だけど実態はヴィオラだったりする弦楽器も魅力。
そんなのんびりのほほんなCaravanですが、「A Hunting We Shall Go」Yes(イエス)「Close to the Edge」と並ぶブリティッシュ・シンフォニック・プログレッシヴの最高のサンプルかつ名曲だと思います。 (MANTRA: 004 / フランス盤CD) (2004.07.25)



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DAVID BOWIE / HEATHEN (2002)
David Bowie(デヴィッド・ボウイ)のアルバムを聴くのって、すごくひさしぶりです。というか、自分は彼のアルバムってほとんど聴いたことなかったんですけどね。でも『Heroes』とかはかっこいいアルバムだと思ってました。
しかし、Davidって何歳になるんだろう? もう結構な年のはずなんですが、ぜんぜん衰えを感じさせませんね。独特の陰影をまとった少しエロティックなヴォーカルとか、むかしとまったく変わらない気がします。
ちょっと落ち着いた、抑えた感じの曲から始まり、その感じが少し続くので、このまま落ち着いたアルバムになるのかなと最初は思いました。バックで楽器はけっこう鳴っているのだけど、比較的空間があって、その空間の広がりを上手に活用しているあたりは、新人にはなかなかできないヴェテランならではの味だと思います。
落ち着いた作品になるように見せかけて?おいて、「Slow Burn」あたりから一気に音が分厚く、ゴージャスになります。こういったゴージャスさはグラム・ロックを思い出させますね。グラム・ロックがはやった1970年代って、印象はゴージャスなんだけど、演奏自体は意外と軽い感じがしたりしたものですが、いまは当時とくらべると楽器自体の持つ音圧の高さなどが違うので、印象だけでなく、音自体もかなりゴージャスに鳴ってます。
抑えた感じの曲でも、ゴージャスな感じの曲でも、リズム隊の音がいいな。ベースとドラムの音に重さと厚みがあります。こういったところがやっぱりブリティッシュですね。Davidの声やヴォーカル・スタイルも、やっぱりブリティッシュだよなという印象を強く受けますし、メロディやアレンジにも往年のブリティッシュの香りがたっぷりです。ロマンティックで、ドラマティックで、どこか危険?な感じがして、音でさまざまな映像や心象を思い浮かばせる ―― 1970年代から80年代くらいにかけてイギリスのロックが持っていた魅力が失われずに現代の音楽として表現されている、という感じがします。 (2004.12.25)



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ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / NO ANSWER (1971)
 1980年代に大活躍したイギリスのポップ・ロック・グループ。これはELOのデヴュー・アルバムです。
 華麗なストリングス、クラシカルで優美なアレンジ、抜群のポップ・センスが持ち味のELOですが、このアルバムではいくぶん実験色の強い、アート・ロック風の音楽を演奏しています。ビートルズ(the Beatles)風のポップさ、60年代風のノスタルジーを持ちながらも、ELOらしいクラシック的なアレンジはすでに聴かれます。ざらざらしたストリングスの音は、のちの艶やかさとはまったく違った、重く沈んだヨーロッパを思わせます。(1999.02.28)

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA / A NEW WORLD RECORD (1976)   alla "Musica"
美しく、あたたかく、なめらかで、ポップなセンスにあふれた曲に、ストリングスが華やかさを加味する。導入されるオーケストラは、ときにクラシカルでときにドラマティックなのだけれど、壮大だったり深刻になったりすることはなく、やさしく、ロマンティックに、曲を彩る。イギリスのグループだからか、やさしくロマンティックなアレンジがされていても、アメリカのように、それが甘くなりすぎたり、いかにもとってつけたような大仰な感じになったり、といったふうにならないところも好ましいです。 (CBS/SONY RECORDS: CSCS 6031 / 日本盤CD) (2006.07.02)



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ENGLAND / GARDEN SHED (1977)   alla "Musica"
彼らの音楽って、可愛らしいです。Genesis(ジェネシス)風な演奏やアレンジもあって、いわゆるブリティッシュ・シンフォニック・プログレッシヴの音なのだけど、プログレにありがちな大仰さとか押し付けがましさとか小難しさといったようなものがないんです。コーラスもポップな感じだし。彼らの音楽の根底にあるのはプログレッシヴじゃなくて、ブリティッシュ・ポップスなんじゃないかしら。曲の端々に出てくるフレーズやパッセージなどがいちいちキャッチーで可愛らしいです。 (ARISTA RECORDS / BMG VICTOR / EDISON: ERC-32004 / 日本盤CD) (2007.07.29)



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FLAMING YOUTH / ARK 2 (1969)
プログレッシヴ・ロックのアルバムのひとつとして、古くから日本のプログレッシヴ・ファンのあいだでは知られていた作品。でもこれ、プログレッシヴ・ロックじゃありませんね。たんに、Genesis(ジェネシス)に加入する前のPhil Collins(フィル・コリンズ)が参加していたからというだけでプログレ的知名度があるにすぎないものだと思います。
1969年リリースということを考えればしかたがないのかもしれませんが、録音はもこもこで、演奏でなにをやってるんだかよくわからないパートがいくつもあります。Philのドラムも、Genesisのアルバムでは「すげぇ」と思ったものですが、このアルバムではほとんど目立たず。いまとなっては古臭さばかりを感じてしまうオルガンの響きが支配的な感じです。
オーケストラの導入があったり、いくぶんサイケデリックな味付けがあったりもしますが、けっきょくこれはプログレッシヴ・ロックではなく、1960年代終盤のブリティッシュ・ポップ・ロックだと思います。アート・ロックにも達していません。なので、プログレッシヴ・ロックの範疇で語られるのではなく、Move(ムーヴ)とかPilot(パイロット)なんかと一緒に語られるのが本筋なんじゃないでしょうか。あえてプログレッシヴ・ロックの方面から彼らの音楽の持つ雰囲気を表現するなら、プログレッシヴな要素のないThe Moody Blues(ザ・ムーディ・ブルース)、シンフォニックな要素の薄いBarclay James Harvest(バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト)、ポップなきらめきがない初期Electric Light Orchestra(エレクトリック・ライト・オーケストラ)……といった感じでしょうか。
楽曲のクオリティも、演奏のクオリティも、たいして高くない、どちらかというと資料的価値で聴かれるべきアルバムなんでしょうね。ただ、それでもメロディ・ラインやのどかな?コーラスなどには古のブリティッシュ・ポップな雰囲気が濃く漂っていて、ブリティッシュ・ファンとしてはそれなりに楽しんで聴けてしまうのではありますけど。そういう意味では、まったくの駄作というわけではないと思います。 (MASON RECORDS: MR 56420 / EEC盤CD) (2004.12.25)



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IT BITES / THE IT BITES ALBUM (1989)   alla "Musica"
演奏がすごくうまいです。むちゃむちゃテクニカルで複雑なことをやってるんだけど、さっと聴いた感じではそんなことをぜんぜん思わせない、必死さとかとはまったく無縁に、すごくナチュラルかつ楽しげに演奏してる。うますぎる演奏、破綻のない構成、流れるような展開 ―― すべてがスタイリッシュでソフィスティケイトされてます。一見スマートだけど細かいところに職人の技が見えるという点で評価される、玄人ウケ、通ウケのするグループだろうと思います。 (VIRGIN RECORDS: VJD-2502 / 日本盤CD) (2004.07.25)



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IRON MAIDEN / FEAR OF THE DARK (1992)
スピーディなリフと美しいハーモナイズド・ギター、リズム楽器に収まらない自由なベース、ときどき現われるプログレッシヴでドラマティックな展開 ―― Iron Maiden(アイアン・メイデン)ってプログレも好きなハード・ロック・ファンの心をくすぐるグループだと思います。このアルバムでもM3「Afraid To Shoot Strangers」やM4「Fear is The Key」などは、いかにもIron Maiden的で、ひきつけられます。
ジャンル的にはヘヴィ・メタルに分類されているけれど、最近のヘヴィ・メタルやプログレッシヴ・メタルとはずいぶんと肌触りが違って、ヘヴィ・メタルというよりはブリティッシュ・ロックという言葉のほうがふさわしく感じます。Diamond Head(ダイアモンド・ヘッド)や、ときにはWishbone Ash(ウィッシュボン・アッシュ)にも通じるところがあるように思います。
そんなわけで、自分はけっこう好きなグループなんですが、このアルバムはちょっと冗長な感じがするかな。ところどころに魅力的なフレーズやアレンジはあるのだけど、なんか切れが足りないというか、突っ走るところとドラマティックにいくところの役割分担がうまくいっていないというか、そんな印象を受けてしまいます。全体にゆっくりめの曲が多いこともあって、ちょっと単調というか、アルバムとしての起伏に欠けますね。また、今回はベースがあまり活躍していないことも、アルバム全体に勢いのあるドラマティックさがもうひとつ感じ切れない理由かもしれません。
Iron Maidenにはもっと疾走するドラマティックさを求めたい自分なのでした。 (TOSHIBA EMI: TOCP 7155 / 日本盤CD) (2004.12.25)



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JON AND VANGELIS / PRIVATE COLLECTION (1983)
じつは自分、あんまりVangelis(ヴァンゲリス)が好きではありません。Aphrodite's Child(アフロディテス・チャイルド)『666』はすごいアルバムで、学生時代によく聴きましたが、ソロになってからのアルバムは『Heaven and Hell』しか持ってないし、それもそれほど聴いていません。
VangelisといえばClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)Riccardo Cocciante(リッカルド・コッチァンテ)など、イタリアのカンタウトーレたちのいくつかの作品でアレンジを担当していますが、それらの作品についても「Vangelis以外の人がアレンジしていればなぁ」と思ってしまうことのほうが多いです。Vangelisの感性って、自分のツボと違うんです。
また、Jon Anderson(ジョン・アンダーソン)についても、Yes(イエス)『Close to the Edge』はプログレッシヴ・ロック史上に燦然と輝く大傑作で大好きですが、Yes自体はそれほど好きではないし、Jonのヴォーカルについても、とくにいいとも悪いとも思いません。
けっきょくVangelisJon Andersonも、どちらかというと自分にとってはどうでもいいアーティストですから、Jon and Vangelisのアルバムにも、ほとんど期待していません。このアルバムについても、なんていうか、予想どおりな感じです。アンビエントというか、『南極物語』風というか、ゆったりとした曲と広がりのあるキーボード・オーケストレーションにピコピコしたシンセがちょろちょろと顔を出し、Jonのクリア・ヴォイスがなだらかな歌メロをなぞります。べつに悪くはないのだけど、やっぱり自分にとっては眠い曲ばかりでした。(2003.06.15)



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KARDA ESTRA / VOIVODE DRACULA (2004)
Karda Estra(カルダ・エストラ)というのはRichard Wileman(リチャード・ワイルマン)という人を中心に集結したプロジェクト・グループのようです。「ドラキュラ伯爵」というタイトルのとおり、吸血鬼ドラキュラの物語をテーマにしたコンセプト・アルバムです。
このてのオカルト系ロック(?)としては、スロヴェニア出身でイタリアで活動をしているDevil Doll(デヴィル・ドール)という素晴らしいグループがあって、ついそちらとくらべてしまうのだけど、くらべるまでもなく、Devil Dollの勝ちという感じです。Karda Estraはイギリスのグループですが、イギリスといえばゴシック・ロマンの本場なのに、東欧とカトリックのタッグにはかなわなかったということでしょうか。
陰鬱さのなかにある神秘的な美しさと重厚感があまり感じられません。緊張感がありません。なんとなくゴシック風味なのだけど、たんにフレーズやアレンジをそうしているだけで、そこにゴシックなソウルやスピリットが感じられません。演奏が邪悪さや「忌むべきもの」「触れてはいけないもの」といった感じを出せていないため、対比的に入る女性コーラスの美しさも引き立ちません。このあたり、なみのゴシック・メタル・グループにも勝ててないと思います。
吸血鬼は、邪悪であり、忌むべきものであり、恐怖であると同時に、哀しい存在でもあるはず。そういった複雑な感情や状況がきちんと音楽化されているとは思えず、なにか、安っぽいゴシック・ホラー映画のサントラを聴いているよう。
Cyclopsレーベルから「プログレッシヴ・ロック」としてリリースされているアルバムだけど、プログレッシヴでもロックでもないと思います。どういうときに、なんのために聴けばいいのか、自分にはよくわからない作品でした。 (CYCLOPS RECORDS: CYCL 143 / 日本盤CD) (2004.12.25)



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MANDALABAND / MANDALABAND (1975)
 壮大なシンフォニーを奏でるマンダラバンド(Mandalaband)の1st。イギリスのグループです。
 プログレッシヴ・ロックの名盤と呼ばれているアルバムですが、とくにLPではA面全部を使った組曲は、もっともティピカルなシンフォニック・プログレといえるでしょう。ムーディ・ブルース(the Moody Blues)にも似たギターのトーンはまさに英国的で、深い奥行きと疾走感を持った、趣き深いアルバムです。ボーカルが弱いのが残念ですが、逆にそれが牧歌的でファンタジックな印象を与えているともいえます。(1999.01.03)



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MATTHEW FISHER / JOURNEY'S END (1973)   alla "Musica"
ソロ・デヴュー作。Procol Harum(プロコル・ハルム)の超名曲「青い影(A Whiter Shade of Pale)」で印象的なハモンド・オルガンを弾いてた人です。このアルバムでもハモンド・オルガンはあいかわらず魅力的な音色で響いています。でも、導入比率はあまり高くありません。全体にリラックスした、ちょっとひなびた、いうなれば「疲れたおじさん」風なある種の色気?がイギリスらしい趣をともなって響きます。そもそもファースト・アルバムなのに「旅の終わり」なんていうタイトルをつけるあたり、なんだかお疲れって感じです。田園風景がずっと続く電車の窓から外を眺めているような、気持ちよすぎて眠くなってしまうような、そんな印象のアルバムでした。 (RCA / BMG FUNHOUSE: BVCM-37487 / 日本盤CD) (2004.12.25)



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PINK FLOYD / ANIMALS (1977)
最近はイタリアン・ポップスを中心に聴いているけれど、自分はもともとはプログレッシヴ・ロックのファンなんですよ。なかでもPink Floyd(ピンク・フロイド)。それまで普通の(?)洋楽ロックしか聴いたことがなかった高校1年のときにはじめて聴いた『The Dark Side of the Moon』は、ほんとに衝撃でしたわ。その後の音楽生活が全部変わっちゃいましたからね。
というわけで、基本的にPink Floydは全肯定です。全肯定なんだけど、そのなかにやはり好きなアルバムとそうでもないアルバムがありまして、じつは『Animals』はそうでもないアルバムなんですの。
正直にいってしまって、全体に曲が退屈でない? あまりにもわかりやすすぎるコンセプト・アルバムっていうのも、どうかなぁと思ってしまうし。SEの使い方も、あまりにもひねりがない感じ。David Gilmour(ディヴィッド・ギルモア)のギターも、「Dogs」ではそれなりに活躍しているし、あいかわらずいい音を出してると思うのだけど、他の曲ではあまり目立たないよね(自分はギター弾きだったこともあり、Davidのギターが好きなんです)。
その他もろもろもあって、彼らのディスゴグラフィのなかでのこのアルバムの個人ランキングは、あまり高くないのでした。 (COLUMBIA RECORDS: CK 34474 / アメリカ盤CD) (2004.12.25)



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PROCOL HARUM / A WHITER SHADE OF PALE (1967)
 あまりにも有名なアルバム・タイトル曲「A Whiter Shade of Pale(青い影)」のために、クラシカルでエレガントなグループと思ってしまいがちなProcol Harum(プロコル・ハルム)ですが、じつはもっと猥雑で世俗的な、ヨーロッパの古いキャバレー音楽にも似た味わいが大きな魅力だったりします。よく聴けば「青い影」も、オルガンの音色とフレーズこそクラシカルですが、ヴォーカルはいなたい感じが存分に発揮されていますね。
 このアルバムではストリングスの導入等もなく、シンプルな、コアの部分のProcol Harumの音楽が聴けます。「青い影」のエレガンスさは、むしろ異色といえるでしょう。アルバム全体にそれを期待すると裏切られることになりますが、ちょっとひなびた、雑然とした演奏は非常にイギリス的で、彼らの魅力のベースが感じられます。(1999.06.05)

PROCOL HARUM / SHINE ON BRIGHTLY (1968)
セカンド・アルバムです。Procol Harum(プロコル・ハルム)らしい、大英帝国の気品をふんだんに漂わせつつもじつは世俗でいなたい酒場ミュージックの雰囲気もふりまく音楽が堪能できます。
このアルバムではまだマシュー・フィッシャーが在籍しているので、かれのひなびた哀愁オルガンも楽しめます。ただ、ファースト・アルバムに収録されている大ヒット曲「Whiter shade of pale (青い影)」のような泣きのクラシカル・オルガンを期待すると、ちょっと期待はずれかもしれません。
あらためて気づいたのですが、初期のProcol Harumにはギターが入ってたんですよね。ファースト・アルバムはしばらく聴いてないので古い記憶になりますが、あまり(というか、ほとんど)ギターの記憶がありません。でもこのアルバムでは、ずいぶんとギターが元気よく鳴っています。思えばギタリストは、ジミ・ヘンドリックスの再来などといわれたこともあるロビン・トロワーですから、このくらいのヘヴィな音色を鳴らして当然ですね。しかし、ロビン・トロワーProcol Harumって、あまり印象が重なりません。だから早くに脱退してしまったのでしょうか。
ロビンの脱退は、自分としてはどうでもいいといえばどうでもいいのですが、マシューの脱退は、やはりちょっと残念です。彼のオルガン・サウンドは、Procol Harumのイメージの一端を担っていたと思うので。
ゲイリー・ブルッカーのヴォーカルはやはり味わい深く、そこに彼の弾くピアノとマシューのオルガンがかぶさったときに、Procol Harumのもっとも「イギリス的」な音ができあがるように思います。このアルバムでいえばM6「Magdalene」〜M7「In Held Twas in I」あたりの流れに彼らの魅力が強く感じられます。
やっぱりいいグループだなぁと思います。もう少しアルバムそろえようかな。 (CUBE RECORDS / VICTOR ENTERTAINMENT: VICP-61310 / 日本盤CD) (2004.12.25)

PROCOL HARUM / A SALTY DOG (1969)   alla "Musica"
Procol Harum(プロコル・ハルム)のサード・アルバムで、彼らの初期のサウンドを彩った、枯れた音色のオルガンを弾くMatthew Fisher(マシュー・フィッシャー)が在籍した最後の作品。一般に、彼らのアルバムのなかでも名作のひとつといわれています。ジャケットのイメージから無理なくつながるM1「A Salty Dog」は、やはり名曲でしょう。かもめの鳴き声で始まり、かもめの鳴き声で終わります。たおやかでゆったりとしたオーケストラも導入されます。のんびりとした気品。派手に盛り上がることなく、淡々とした美しさ。非常に英国的な優雅さを感じます。まるで映画のワンシーンを眺めているようです。 (WESTSIDE: WESM 534 / イギリス盤CD) (2008.04.20)

PROCOL HARUM / LIVE - IN CONCERT WITH THE EDMONTON SYMPHONY ORCHESTRA (1972)
バックにオーケストラを従えたライヴ・アルバム。M2「Whaling Stories」やM5「In Held 'Twas In I」では合唱も入り、かなりクラシカル&ドラマティックな部分もあるのですが、全体には、オーケストラ=クラシカル&シンフォニック大会というわけではなく、Procol Harum(プロコル・ハルム)の持ち味である、古い酒場の音楽を思わせるような、少しいなたく、一方で大英帝国らしいたおやかな肌触りのある、独特の魅力が存分に発揮されたアルバムになっています。
「青い影(A Whiter Shade of Pale)」のヒットのためにクラシカルな印象が強い彼らですが、彼らの魅力は、じつはそのメロディの根底に流れる「イギリスのいなたさ」みたいなところにあるわけで、なのにアレンジ面でのシンフォニックさやクラシカルさについ気を取られてしまいがちなところは、the Moody Blues(ムーディ・ブルース)Barcley James Harvest(バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト)あたりと似ているかもしれません。
このライヴでも、オーケストラが入ることでクラシカルな面に気を取られがちなんですが、それでもやはり、くすんだハモンド・オルガンやエレキ・ギターの音色のかもしだす少し世俗的かつたおやかなイギリスっぽさの魅力があらためて感じられます。オーケストラが入ることでクラシカルなダイナミズムは強調されていますが、それが同時にメロディのイギリスらしさを強調することにもなっていて、Purocol Harumらしさをきちんと高めることに成功したオーケストラ導入のしかただと思います。
古き良き時代のイギリスの趣深いロックが聴ける、よいアルバムです。 (CHRYSALIS: CDP 32 114 2 / イギリス盤CD) (2003.10.19)

PROCOL HARUM / GRAND HOTEL (1973)
 プロコル・ハルム(Procol Harum)といえば「青い影(a Whiter Shade of Pale)」が有名なイギリスのグループ。このアルバム『グランド・ホテル』は、彼らの最高傑作と呼ばれています。
 オーケストラやコーラスを導入し、ハモンドの音などもあいかわらずクラシカルなのですが、なぜかあまり深遠でシンフォニックな感じにはなりません。彼らの場合、基本的な曲づくりが、非常に世俗的なんじゃないかと思います。ゲイリー・ブルッカー(Gary Brooker)のヴォーカルも、技術的には決してうまいとは思いませんし、メロディライン的にもそれほど特徴はないのだけれど、なんともいえない味わいがあります。なんというか、酒場の楽団のような、とても身近な空気を持っています。
 やりようによってはもっとクラシカル&シンフォニックにもなるはずなのに、そうしない(できない?)ところが彼ららしくもあり、愛らしいところなのでしょう。イギリスの雰囲気たっぷりのグループです。(1999.04.04)

PROCOL HARUM / EXOTIC BIRDS AND FRUIT (1974)   alla "Musica"
前作が彼らの最高作との呼び声も高い『Grand Hotel』で、ここではオーケストラやコーラスを導入してクラシカルな雰囲気を強く出そうという意識が見えましたが、続くこのアルバムではもっとリラックスした、イギリス風味たっぷりのロックが中心になっています。全体的に、Procol Harum(プロコル・ハルム)の音楽としかいいようのない曲ばかりが収録されています。ほんのりクラシカルで、だけどエレガンスというよりは世俗っぽい身近さがたっぷりで、イメージの中にある古いヨーロッパのパブにあるような、ひなびた哀愁と他愛のない楽しみがゆるゆると漂っているような、そんな音楽です。 (CASTLE COMMUNICATIONS / ESSENTIAL RECORDS: ESM CD 291 / イギリス盤CD) (2008.02.17)

PROCOL HARUM / SOMETHING MAGIC (1977)   alla "Musica"
おそらく船の甲板にある椅子に座る、首のない貴婦人。注に浮かぶ逆さまの金魚鉢(金魚入り)。空を埋め尽くす黒雲と水平線上に輝く光。意味ありげなモチーフがふんだんに配置されたジャケット・アートは、プログレッシヴ・ロック風です。収録されている曲にもオーケストラもふんだんに使っていて、このアルバムではたおやかなクラシカル・エレガンスを意識したのかもしれません。それぞれの曲は愛らしいのではあるけれど、曲そのものの持つ魅力や、アルバム全体の持つ吸引力といった点では、ちょっと弱いし小粒だなという印象があります。このアルバムでいったんProcol Harum(プロコル・ハルム)はその歴史の幕をおろすのですが、なんとなく「力尽きて倒れた」といった印象で、少し寂しさを感じます。 (CASTLE COMMUNICATIONS / ESSENTIAL! RECORDS: ESM CD 293 / イギリス盤CD) (2008.04.20)

PROCOL HARUM / THE LONG GOODBYE (1995)   alla "Musica"
Procol Harum(プロコル・ハルム)のフロント・パーソン、Gary Brooker(ゲイリー・ブルッカー)が中心になって企画した、Procol Harumの名曲をフル・オーケストラ入りのシンフォニック・アレンジで聴かせようというアルバム。Garyがヴォーカルをとったりはしていますが、正しくはProcol Harumのアルバムじゃありません。全部で12曲が収録され、すべての曲にフル・オーケストラが導入されています。どの曲も非常にシンフォニックなアレンジがされていて、とてもクラシカル。曲によってはオーケストラと合唱プラスGaryのヴォーカルのみといったアレンジもあり、ポップスというよりはかなりクラシック曲に近いような印象になっています。 (RCA VICTOR / BMG MUSIC: 09026-68029-2 / アメリカ盤CD) (2005.06.04)

PROCOL HARUM / THE WELL'S ON FIRE (2003)   alla "Musica"
再結成後2枚目になるのかな。アルバム1曲目の「An Old English Dream」が流れてきたとき、そしてその背後にあの懐かしいハモンド・オルガンの音色が聴こえてきたとき、あぁProcol Harum(プロコル・ハルム)だぁとうれしくなりました。Gary Brooker(ゲイリー・ブルッカー)のひなびたヴォーカルとMatthew Fisher(マシュー・フィッシャー)のひなびたオルガン・サウンドが重なれば、もうそこは古のProcol Harumの世界。Garyはデビュー当時からかなりひなびたおっさんヴォーカルだったためか、あれから30年以上たっても印象が変わりませんね。 (EAGLE RECORDS: EAGCD209 / ドイツ盤CD) (2005.10.10)



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ROBERT JOHN GODFREY / FALL OF HYPERION (1978)   alla "Musica"
オーケストレーションとか、すごい優雅です。いかにも英国。キーボードやピアノの響きもやわらかなロマンにあふれていて、とても心地よいです。ヴォーカル・ラインのメロディはちょっと魅力が薄いですが、まぁよしとしましょう。しかし、リズム・セクションが「ロック」していないのが個人的には不満です。なんとなくクラシック・ミュージック風なものを作曲して、クラシック・ミュージック風な考え方で、ポピュラー・ミュージックで使う楽器を使って演奏してみました、といった印象を受けてしまいます。もっと「ロック」があれば、この素晴らしいオーケストラ・アレンジもさらに映え、もっともっとロマンティック&ドラマティックになっただろうにと思うと残念です。 (CHARISMA RECORDS / VIRGIN JAPAN: VJCP-2545 / 日本盤CD) (2005.04.03)



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ROGER WATERS / THE PROS AND CONS OF HITCH HIKING (1984)   alla "Musica"
 元Pink Floyd(ピンク・フロイド)Roger Waters(ロジャー・ウォータース)による、Pink Floyd脱退後最初のソロ・アルバム。Pink Floydが持っていた「唄」の部分は、その後のPink Floydではなく、Rogerのアルバムにあるように思います。(2000.05.14)

ROGER WATERS / RADIO K.A.O.S (1987)   alla "Musica"
Radio K.A.O.Sという架空のラジオ局を狂言回しに、世の中を批判したり皮肉ったりというコンセプト・アルバムになっているらしいのですが、自分は英語がよくわからんし、手元にあるのは輸入盤だしで、曲やコンセプトの内容とか、よくわかりません。ラジオ風に曲の合間でDJが曲紹介らしきことをしているのは楽しいですが、ソウルフルというかゴスペル風なコーラスが多用され、アメリカンな要素を強く感じます。Rogerのヴォーカルはあいかわらず味わい深く、これはこれで悪くありません。妙に明るい感じが支配しているのはいいのですが、曲そのものにあまり魅力を感じないのが残念なところです。 (CBS/COLUMBIA RECORDS: CK 40795 / アメリカ盤CD) (2006.03.21)

ROGER WATERS / FLICKERING FLAME (2002)   alla "Musica"
 元Pink Floyd(ピンク・フロイド)のリーダー、Roger Waters(ロジャー・ウォータース)の、ソロになってからのベスト盤です。Pink Floyd『The Final Cut』は個人的にかなり好きなアルバムなのですが、ここには『The Final Cut』と同じ「歌」があります。その点ではすごくしっくりとくるのですが、ときにメロウに、ときに鋭く切り込んでくるDavid Gilmour(デイヴィッド・ギルモア。Pink Floydのギタリスト)のエモーショナルなギターがないのは、やはり残念だし、物足りなくも感じます。(2003.04.20)



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STRAWBS / GRAVE NEW WORLD (1972)
 非常に渋い内容のアルバムです。
 イギリスのスーパー・プログレッシヴ・グループ、Yes(イエス)のキーボーディストであるRick Wakeman(リック・ウェイクマン)が、Yes加入以前に参加していたグループということで、プログレッシヴ・ロックのファンのあいだではそれなりに認知度の高いStrawbs(ストローブス)ですが、彼らの音楽はけっしてプログレッシヴ・ロックではありません。たしかに、メロトロンも入っていますし、ドラマティックな盛り上がりを見せることもありますが、基本はあくまでもブリティッシュ・フォーク、ブリティッシュ・トラッドです。
 少しクセのあるひなびた歌声も、のどかな田園風景を思わせるコーラスも、素朴で飾り気のないゆったりしたメロディも、イギリスらしいリリカルさにあふれています。基本はフォークですが、完全にフォークというわけではなく、キーボードやドラムの使い方などにはロック的なフィーリングも感じられるので、ロックやポップスのファンにも聴きやすいでしょう。
 Rickが一時期在籍していたことで、プログレッシヴ・グループ的な見方をされることもあるStrawbsですが、それは正しいとはいえないものの、あながち間違いだとも言い切れない音楽性がStrawbsにはあります。これもやはり、1970年代という時代だからこそ生まれた音楽なのでしょう。
 たとえばQueen(クイーン)the Moody Blues(ムーディ・ブルース)なども持っている、イギリス、というよりは「英国」の、香り高い空気が感じられるアルバムです。(2000.12.17)



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SUPERTRAMP / FAMOUS LAST WORDS (1982)   alla "Musica"
デビュー当初はもっとイギリスっぽい、少し暗さを感じさせつつも独特のポップでやわらかな音楽を聴かせてくれるグループでしたが、アメリカに渡ってからは暗さが取れ、やわらかななかにイギリス風のロマンティシズムを感じさせるポップスが得意になりました。その路線での最高作はやはり前作『Breakfast in America』ということになるのでしょうが、続くこのアルバムも彼ららしさがよいかたちで出ているよいアルバムだと思います。ヨーロッパ風味の強いプログレッシヴ・ポップが多く聴けるという点で、自分はこのアルバムがかなり好きです。 (CRIME/KING RECORD: KICP 2719 / 日本盤CD) (2004.03.13)



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URIAH HEEP / THE MAGICIAN'S BIRTHDAY (1972)
 Uriah Heep(ユーライア・ヒープ)Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)Deep Purple(ディープ・パープル)などと同様、1970年代に輝いていたブリティッシュ・ハードロック・グループですが、彼らの曲にはLed ZeppelinDeep Purpleにはない人懐こさがあるように感じます。柔らかく色気のあるヴォーカルや、キャッチーでメロディアスな歌メロは、ハードロックなアレンジを取り外しても歌として充分に魅力を維持できるでしょう。メロディ・オリエンテッドなロック・グループだったように思います。
 そんなUraiah Heepの代表曲というと、やはり「Look at Yourself」や「July Morning」となるのでしょうが、ユーロ・ポップスやプログレッシヴ・ロックなどのファンが楽しめるのはこのアルバムや、その前にリリースされた『Demons and Wizards』でしょう。キーボードやアコースティック・ギターを多用し、シンフォニック&プログレッシヴな香りを漂わせながらも、どこまでもフレンドリーで馴染みやすい、メロディアスなロックが聴けます。
 このアルバムで聴けるロマンとしめり気は、のちのNWOBHMムーブメントのときに現われたグループにも引き継がれていく、まさにイギリスの味わいといえます。ドラマティックに展開する曲構成、曲の魅力に奥行きをつけるコーラスやキーボードのアレンジ、そして甘美なヴォーカルと、ドラマ志向、メロディ志向のポップス/ロックファンが心の奥をくすぐられるに違いない要素がふんだんにあります。
 音もそれほどハードではないし、ハードロック・ファン、ヘヴィメタル・ファンだけのものにしておくにはもったいない作品です。(2000.05.14)



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VAN DER GRAAF / THE QUIET ZONE/THE PLEASURE DOME (1977)
Peter Hamill(ピーター・ハミル)のヴォーカルって、とくにちからが入っているとか、声量があるというわけではないのだけど、なぜかとても存在感があります。なんていうか、声や言葉の密度が濃い感じで、そこがヴォーカリストとしての強い個性になっています。同時に、PeterのヴォーカルこそがVan Der Graaf Generator(ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター)というグループにとっても個性といえるでしょう。いわゆるブリティシュ・プログレッシヴの有名グループ、King Crimson(キング・クリムゾン)Yes(イエス)、Genesis(ジェネシス)、Pink Floyd(ピンク・フロイド)などとは違った独自の音楽性と、それを実現させるユニークな演奏もVan Der Graff Generatorならではです。
このアルバムは、そんな特異な個性を持ったVan Der Graff Generatorのアルバムとしては、ちょっとばかり小粒な印象を受けます。なぜかグループ名も最後のGeneratorがなくなっているし、なにかそれまでの彼らの作品とは違う狙いがあったのでしょうか?
彼らの作品には、どこか危機迫るような迫力を感じることが多いのですが、そういう意味では、このアルバムは比較的穏やかだと思います。いつもにくらべて音楽的にまとまっているような印象です。でも、怪しげなヴァイオリンや存在感のあるヴォーカルはここでも楽しめるし、他のアルバムではあまり感じられないようなクラシカルな雰囲気も少しあります。
このアルバムがVan Der Graaf Generatorのディスコグラフィのなかでどういう位置付け・意味合いを持つものかはわかりませんが、彼らの作品のなかでは敷居が低いというか、とっつきやすい作品のように思います。(2003.07.20)



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WALLY / VALLEY GARDENS (1975)
 非常にファンタジックで牧歌的な音楽を奏でるイギリスのグループ。ふわふわとした曖昧さ、神秘の森を思わせる透明感など、イギリスらしさがあふれたアルバムです。
 一応プログレ・グループに分類される彼らですが、テクニックで押し切ったり、ドラマティックな展開で引き込むタイプではなく、ゆったりとした流れに身をまかせ、音が演出する空気を楽しむタイプのグループではないかと思います。今となっては多少、古い感じもしてしまいますが、バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)ムーディ・ブルース(the Moody Blues)などが好きな人には、彼らと同種のイギリスの臭いを嗅ぎ取り、愛してもらえるのではないかな。
 多少、70年頃のピンク・フロイド(Pink Floyd)ぽい感じを受けるところもありました。(1999.04.04)



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