produzione artistica: GIANCARLO AMENDOLA e ANONIMO ITALIANO
arrangiamenti: MARIO ZANNINI QUIRINI
batteria: Luca Trolli, Massimo Buzzi, Luciano Scozzi, Davide Piscopo
basso: Pippo Matino, Fabrizio Sciannameo, Filippo Manni
chitarra elettrcia: Rocco Zifarelli, Davide Camaccia, Andrea Amati
chitarra acustica: Maurizio Moricci, Michele Santoro, Andrea Amati
tastiere e pianoforte: Mario Zannini Quirini
archi per il brano "Anna": Claudio Zitti
cori: Luca Velletri, Antonio Decimo, Claudia Arvati
Anonimo Italiano(アノニモ・イタリアーノ。「イタリア人の誰かさん」)という妙な名前のシンガー。デビュー当時は、歌声がClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)に似ていることから、Claudioが変名で歌っているのではないかと話題になったようです。一方で、やはりClaudioに似た感じの声と曲調を持ったカンタウトーレで1980年代なかごろにはサンレモ音楽祭にも出場したことのあるStefano Borgia(ステーファノ・ボルジァ)と同一人物ではないかという噂もありました。曲提供の部分でStefanoが貢献している比重が高く、声の感じも似ているし、StefanoのアルバムとAnonimo Italianoのアルバムの両方に収録されている曲を聴き比べてもあまり違いがわからないといったこともあり、かなり信憑性の高い噂として語られていました。
このように、デビュー当初はいろいろと謎に包まれたシンガーでしたが、その実態はRoberto Scozzi(ロベルト・スコッツィ)という、ちょっと甘いマスクを持った兄ちゃんのようです。なぜ本名ではなくAnonimo Italianoなどという、いわば匿名でデビューしたのかはわかりません。アルバム・デビュー前にRoberto名で、Claudioの曲を収録したカラオケCDでお手本を歌っているらしいのですが、そのあたりで権利や契約上その他の問題があったのかもしれません。
1995年にリリースされたデビュー・アルバム『Anonimo Italiano』は、本人の写真がどこにも載っておらず、また曲もAnonimo Italiano名義ではなく他から提供を受けたものばかりで、余計に「匿名ミュージシャン」といった感じが強くありました。
翌1996年にリリースされたセカンド・アルバム『Buona fortuna』では自身の写真と自作曲もあり、ひとりのカンタウトーレとしてのAnonimo Italianoというのが少しうかがえるようになりましたが、それからおよそ6年ぶりにリリースされたこのサード・アルバムでは、ジャケットや歌詞カードに本人の写真はあるものの、曲のほうはまたほとんどが他からの提供になり、自身がかかわっているものは1曲だけになってしまいました。もしかしたら、あまり曲づくりは得意でないのかもしれません。
しかし、パッションと哀愁のあるダミ声は健在で、イタリアン・ダミ声カンタウトーレ・ファンにはなじみやすいし、また愛しやすいアルバムのはずです。全10曲のうち4曲をStefanoが提供していることもあり、曲調的に「ニヤッ」とする部分もあるでしょう。
もともとStefanoもAnonimo Italianoも「小粒なClaudio」といった趣がありましたが、このアルバムでもそういった味わいが充分に楽しめます。感じとしては1980年代ころのClaudioに似ているでしょうか。最近のClaudioは声に落ち着きがあり、ひび割れ具合もなめらかな感じになっていますが、Anonimo Italianoの歌声はそれよりも前の、もっとざらざらした声で歌っていたころを思い出させます。
どうしても「小粒なClaudio」といった印象があり、個性やオリジナリティという点では弱いなとは思うのですが、そういったことは別にして、単純にこういった曲調と声が自分は好きなもので、それだけで充分に楽しめてしまいます。アーティスト性がどうかを抜きにすれば、好感の持てるイタリアン・ポップス作品だと思います。