1: CANTO DELLA TERRA
2: THE PRAYER (with Celine Dion)
3: SOGNO
4: 'O MARE E TU (with Dulce Pontes)
5: A VOLTE IL CUORE
6: CANTICO
7: MAI PIU' COSI' LONTANO
8: IMMENSO
9: NEL CUORE LEI (with Eros Ramazzotti)
10: TREMO E T'AMO
11: I LOVE ROSSINI
12: UN CANTO
13: COME UN FIUME TU
14: A MIO PADRE (6 Maggio 1992)
a project by Caterina Caselli Sugar
Produced and Arranged by Mauro Malavasi
日本での彼の扱いは完全にクラシックのシンガーのようですが、自分はポップス・シンガーとしての彼が気に入っています。クラシックの持つ格調の高さで、イタリアン・ポップスの持つ美しくドラマティックなメロディを表現力豊かに歌いあげるその歌唱は、芸術と日常が隣り合わせにある国イタリアを強く感じさせます。
クラシックの曲を歌うときの彼は、クラシック歌手として、クラシックの発声で、澄んだ美しい声を聴かせます。しかしポップスを歌うときの彼は、中低域では彼のもともとの声であろう、少しかすれた感じの、味のある声で歌い、中高域に移るあたりからオペラティック・ヴォーカルへと変容します。この瞬間のカタルシスはたまりません。
欧米で大ヒットとなり、日本でのデヴュー盤ともなった『Romanza』は、そんな彼の「ポップス・シンガー」としての魅力が集大成されたものでした。事実、このアルバムは、それまでに彼が出した2枚のアルバム『Il Mare Calmo Della Sera』『Bocelli』から、彼の素晴らしさを感じさせる曲を選りすぐって集めたベスト盤だから、当然のことでしょう。
1stアルバム『Il Mare Calmo Della Sera』には4曲、オペラからの曲が収録されています。しかし2nd『Bocelli』および3rdでベスト盤の『Romanza』には、クラシックからの曲は収録されていません。
その後リリースされた『Viaggio Italiano』(録音自体は1stの前、1994年のようです)と『Aria』(どちらも日本盤が出ています)はクラシックを中心につくられたアルバムですから、『Sogno』はひさしぶりのポップス・アルバムということになります(とはいえ、『Romanza』から2年しかたっていないのですが)。
これまでもSarah Brightman(サラ・ブライトマン)やGiorgia(ジョルジァ)などとのデュエットを聴かせてくれたAndreaですが、今作ではCeline Dion(セリーヌ・ディオン)、Dulce Pontes(ドルチェ・ポンテス)、Eros Ramazzotti(エロス・ラマゾッティ)とデュエットしています。
Celineと歌った「The Prayer」という曲は「キャメロット」という映画の主題歌か何からしいですが、David Foster(デヴィッド・フォスター)によるドラマティックな曲になっています。この曲に限らず、全体的にドラマティックでメロディアスな楽曲で占められています。
Dolce Pontesの歌唱も異国情緒を感じさせる素晴らしいものですが、Andreaとはちょっとタイプが違いすぎ、もうひとつ溶け込んでいないように感じます。
またEros Ramazzottiとのデュエットは、あまりにErosの声と唄い方が軽やかすぎ、やはりAndreaとのデュエットには向かないように思うのですが、どうでしょう。
ErosとAndreaは、Erosのベスト盤ですでに共演しているのですが、Erosのような、もともと軽やかで明るいイメージを持った曲にAndreaのヴォイスを乗せて厚味や深みを増すという方法は効果的かもしれません。しかし、もともと重厚で奥行きを持ったAndreaの曲にErosの乾いたヴォイスを乗せても、曲のイメージを軽薄なものにするだけな気がするのですが(決してErosの声が軽薄といっているわけではありません。Andreaの唄うような曲にErosの声はあわないと感じているだけです)。
このアルバムでは、『Romanza』までで聴けた、彼の味のある地声とオペラ・ヴォーカルの対比によるカタルシスといった部分が弱くなっています。全体的にクラシックの歌唱法で歌われたポップスといった感じになっています。彼の地声ファンの自分としては残念なところです。
また、よくいえば楽曲が洗練され、聴きやすいものになっているのですが、逆にいえばイタリア独特の強引な展開、引っ掛かりといったものが削ぎ落とされ、アメリカ風なスッキリとしたものになってしまったともいえます。そして、映画音楽的な印象もあります。
あいかわらずAndreaの歌唱は素晴らしく、発売後すぐにイタリアのアルバム・チャートに入ってきましたので、市場には好意的に受け入れられているのかと思いますが、もう少し「イタリアのアイデンティティ」というものが強く感じられるつくりでもよかったのではないでしょうか。
個人的には「イタリアン・ポップス」としてのクオリティの高いものを期待していたのですが、「ワールド・ワイドなポップス」としてのクオリティを追求したアルバムとしてリリースされたようです。そして、その面においては、成功しているといえるでしょう。
ところで、自分が持っているのはEU盤(Sugar SGR D 77828)なのですが、日本盤や国内の輸入盤店で手に入るのは多分、アメリカ盤をベースにしたものではないかと思います。
これらは、収録曲に違いはないようですが、EU盤はCelineとデュエットした「The Prayer」のみ(C)1998で、他の曲は全部(C)1999になっています。しかしアメリカ盤などではそれ以外に5曲ほど、(C)1999ではないものがあるそうです。どういうことなんでしょうね?