1: ALLA FIERA DELL'EST
2: LA FAVOLA DEGLI AIRONI
3: IL VECCHIO E LA FARFALLA
4: CANZONE PER SARAH
5: LA SERIE DEI NUMERI
6: IL DONO DEL CERVO
7: IL FUNERALE
8: L'UOMO E LA NUVOLA
9: SOTTO IL TIGLIO
10: CANZONE DEL RIMPIANTO
1970年代からいまも活躍する、あまりにも有名なカンタウトーレ/吟遊詩人のアンジェロ。そして、数ある名作のなかでも一般的に最高作として知られ、あまりにも有名なのがこのアルバム。元キング・クリムゾン(King Crimson)のピート・シンフィールド(Pete Sinfield)の詩による英語版もでている。また、バンコ(Banco del Mutuo Soccorso)のジャンニ・ノチェンツィ(Gianni Nocenzi)がピアノで参加している。
ちなみにこのアルバム、その昔、キングレコードの「ユーロピアン・ロック・コレクション・カンタウトーレ編」で日本発売がほとんど決まっていたにもかかわらず、契約内容の問題で直前に発売中止になったらしいという、非常にもったいない話が伝わっている。
アンジェロの音楽は、同じカンタウトーレといっても、同時期に活躍していた他のアーティスト(たとえばクラウディオ・バッリォーニ Claudio Baglioni やリッカルド・コッチャンテ Riccardo Cocciante など)のものとは明らかに違う。彼らの音楽は現実の生活をベースに自己の感情を吐露しているようにも聞こえるが、アンジェロの音楽はあまり現実感・生活感を感じさせない。
また表面的なことでいうと、中近東的な感触にひとつの特徴がある。いかにもイタリア、カンツォーネといった感じではなく、もっと地中海よりの音をもっている。
このアルバムを聴いていると、日本発売時に予定されていた『東方の市場にて』というタイトル(原題どおりですね)のとおり、けっして裕福ではないけれど愛情にあふれた人々が集まる、素朴で小さな街にある市場を訪れたような、そんな光景が浮かぶ。
非常に素朴でシンプルなメロディなのだけれど、そこからたくさんのイメージが浮かんでくる。まさにそこが、彼が“吟遊詩人”と呼ばれるゆえんでもあるのだろう。小さな街から街へと旅をし、先々で夢想的な物語を語る。そのひとつが、このアルバムに収められている。
アコースティックの透明な響き、暖かみのあるオーケストラに包まれて、夢のような唄を聞かせるアンジェロ。けっして技巧的でない唄を、圧倒的な表現力で、かつ押し付けがましくなく、優しい声で語ってくれる。
激しい感情よりも穏やかな情緒、派手さよりも素朴さ、憎しみよりも愛情、はるか昔の遠い国での物語。そしてそれが、心に響く。
眠る前に枕元で聞かせてもらえる夢語り。そんな、深い愛情と夢に満ちたアルバムだと思う。