ALESSANDRO ERRICO


IL MONDO DENTRO ME (1996年)

   アレッサンドロ・エッリコ / イル・モンド・デントロ・メ
    (SUGAR SGR 4431-2 / イタリア盤CD)



errico1   1: IL GRIDO DEL SILENZIO
  2: PERDONAMI
  3: COME UNA RONDINE
  4: MOLTITUDIN
  5: LUNGO UN ATTIMO
  6: NNPP
  7: RESE E FIORI
  8: NUVOLA
  9: PAROLE E SASSI
 10: CINICO (PER NON MORIRE PIU')
 11: IL MONDO DENTRO ME







 あのアンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)と同じ、Caterina Caselli Sugar からアルバムを出しているアレッサンドロの、多分これは1st アルバム。まだ若いお兄ちゃんです。

 先日はじめて行ったイタリアでは、ラジオでかかるのがほとんどいまふうのダンスミュージックやラップ、それに英米の曲という、自分としてはちょっとがっかりする状況でした。
 だって、半分以上の曲が英語の曲だったんですよ。イタリア語で歌われている曲も、歌詞を英語にしたら英米の曲と区別がつかないんじゃないかというものがたくさん。

 しかし、このアルバムには、とってもイタリアンで美しいメロディが、たくさんあります。こういう若いカンタウトーレがいまも出てきているなら、まだまだムジカ・イタリアーナも安泰です。

 もちろんまだ若いですから、声や歌い方に奥行きというか、深みといったものはまだまだたりないとは思います。でも、この若々しさ、瑞々しさが、いいんです。新しい才能の息吹きを感じます。
 ピアノのバックのみで唄う10曲目からドラマティックなアレンジでロックっぽく盛り上がる11曲目なんて、なんかもう、感動的なプログレのアルバムを探し求めていた若き日々を思い出しちゃいます。

 雄大に響くキーボード・アレンジ、そしてねばりと暖かみのあるディストーション・ギターが、どことなく、おとなしいドラマティック・メタルのような印象をもたせることもあるかもしれません。
 そう、ディストーション・ギター。これが、このアルバムをただ甘いだけのものではない、力強いものにしてるんですね。

 自分は古いカンタウトーレのアルバムを聴くことが多いのですが、こういうギターの音色というのは、それらのアルバムにはぜったいありません。明らかにハードロック/ヘヴィメタルを経験してきた世代のギターの音色です(といっても、いわゆるヘヴィメタル・アレンジがされているわけではありません。あくまでもリードを弾くときの音色や一部のフレージングに、その影響をみるだけです)。そして自分は、こういうギターの音が大好きなんです。

 一部に中途半端にアメリカンな、売れないハードロック・バンドがやってるような曲もありますが、全体的にはオーソドックスなイタリアン・メロディがいっぱいです。とくにバラード系のものは、やっぱりイタリアといえばこれだよなぁと思うほど、美しい曲をつくります。
 ただ、ところどころどこかで聴いたようなフレーズやアレンジがあって、オリジナリティにうるさい人なら気になるかもしれませんね。サマディ(Samadhi)の「l'Ultima Spiaggia」みたいな(そのまま?)フレーズが出てきたときには、思わずプログレ・ファンの血が騒ぎました(^^;)。

 彼の声は、だみ声というわけでも天使の歌声というわけでもない、とくに癖のないものだと思います。そういう意味ではそれほど好き嫌いが出ない、だれにでも聴きやすい声ではないでしょうか。若いシンガーですから、昔のシンガーのような“まとわりつくような感じ”もありません。
 バックのアレンジはちょっとこってり系ですが、ロック・フィーリングをもった演奏をしています。その点でも、まだイタリア初心者の人にも聴きやすいかもしれません。
 もちろん、イタリアン・ロックやイタリアン・ポップスが大好きという人でも、きっと楽しめるはずです。
 美しくもドラマティックな曲でおもいっきり泣くこともできるし、都会的でしゃれた感じの曲で愛を語ってもいいでしょう。ロック・フィーリングあふれる曲で踊ってもいいかもしれません。

 どんな楽しみ方をしてもいいんです。
 このアルバムには自分の愛するヨーロッパの、イタリアの香りがするんです。もうそれだけでいいんです。

 すでに何枚かアルバムを出しているアレッサンドロ。もう1枚聴きたくなる新人(?)なのでした。

(1997.12.17)








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