ANDREA MINGARDI


PROSSIMAMENTE (1988年)

   アンドレア・ミンガルディ / プロッシマメンテ
    (FONIT CETRA: CDM 2060 / イタリア盤CD)



jacket photo
  1. E LA RADIO VA
  2. SE TU ESISTESSI
  3. AH SI L'AMORE
  4. LIETO FINE
  5. OH MAMMA
  6. COSA SI FA DOVE SI VA
  7. CHISSA'
  8. QUESTA NOTTE HO TE
  9. VA BENE...COMINCIAMO! (Time)


arrangiamenti di Maurizio Tirelli
prodotto e diretto da Alessandro Colombini








1948年にボローニャで生まれ、1974年に『Nessuno siam perfetti, ciascuno abbiamo i sui difetti』でアルバム・デビューしたAndrea Mingardi(アンドレア・ミンガルディ)の、これは9枚目のアルバムのようです。デビュー以来、2〜3年ごとにコンスタントにアルバムを出し続け、現時点での最新盤は2004年の『E' la musica』なのかな。すでに19枚ものアルバムがある、現役のヴェテラン・カンタウトーレ。なのに、日本ではしかたがないにしても、本国イタリアでもあまり話題にのぼることが多くないような気がします。そういう自分も彼の作品はこれを含めて2枚しか持っていないし。

最初の本格的な音楽活動は18歳のときに結成したGolden Rock Boys(ゴールデン・ロック・ボーイズ)というロックンロール・バンドだったそうで、その後はジャズやブルース、ファンクなどにも興味を持っていきます。ここからもわかるように、けっこうアメリカ的な志向が強い人なのでしょう。実際、自分が持っているもう1枚の彼のアルバム『Si Sente Dire In Giro...』(1990年)はZucchero(ズッケロ)にも通じるようなソウルっぽい感覚が随所にありました。しかしこの『Prossimamente』は、それほどソウルっぽかったりアメリカ風ということもなく、イタリアらしいメロディに満ちていると思います。

アルバムの冒頭を飾る「E la radio va」はスケール感のあるミディアム・スローの曲で、ゆったりしたメロディにはほのかにカンツォーネの香りもします。豊かなキーボード・オーケストレーションやサキソフォンによる彩りも入り、厚みのある、どこかゴージャスにすら感じられる演奏にのって、Andreaの力強いひび割れ声が響きます。これ、Al Bano(アル・バーノ)とかが歌ってもよさそうな感じです。

M2「Se tu esistessi」はロック色のあるミディアム・テンポの曲。こういったタイプの曲に彼のひび割れた声は合いますね。キーボードの音づくりやアレンジがちょっと安っぽかったりするのですが、ディストーション・ギターはなかなかいい音色でなっています。

M3「Ah si l'amore」はデジタリックな音のキーボード・アルペジオから始まり、一瞬Giuffria(ジェフリア)とか思い出してしまいました(このグループのことを覚えている人がいま、どのくらいいるだろう。笑)。しかしヴォーカル・パートが始まるとイタリアらしくなってきます。熱いひび割れヴォーカルはFausto Leali(ファウスト・レアーリ)などに通じるかもしれません。

ここまで比較的力強くて“陽”のイメージを持った曲が多かったのですが、つづくM4「Lieto fine」は渋くて少し暗い、“陰”の雰囲気で始まります。だけどそれは最初だけで、ヴォーカル・パートが進むとイタリアらしい明るさとやわらかさが満ちてきます。ゆったりとしたメロディに彩を添えるキーボードのオーケストレーションは古いムード音楽を思い出させるような雰囲気を持っていて、ちょっとロマンティックです。

M5「Oh mamma」は、若者たちの前向きな愛と青春と挫折と成長を描いたアメリカ映画(たとえば『愛と青春の旅立ち』みたいな。ベタだな)のテーマ曲を思わせるようなピアノのイントロから始まります。しかしヴォーカル・パートに入ると一転して、明るく軽やかなイタリアン・ポップスになっていきます。

M6「Cosa si fa dove si va」はシンセ・ベースやキーボードのアレンジがいかにも古い印象というか、Human League(ヒューマン・リーグ)ですか?みたいな“時代”を感じるところがあるのですが、ヴォーカルのメロディ自体はやわらかな哀愁とやさしく暖かな雰囲気があって、なかなか好ましいです。マイナー・キーから始まり、サビでメジャー・キーに転調する展開がロマンティック。しかし、このブカブカいうシンセサイザーのコード・ストロークはどうにかならないのでしょうか。

M7「Chissa'」は、なめらかで美しく、ほどよい明るさとあたたかさがあります。まだ人のまばらな初夏のビーチで海を眺め、ビールや冷えた白ワインを飲みながら聴いたら、気分がよさそう。なめらかなメロディを、歌詞に合わせてぶつ切り風に歌うようなところが、いかにもカンタウトーレぽい感じがして、好ましく思います。しかし、最後のシンセサイザーの音づくり(金管楽器のシミュレート?)はひどいな。

M8「Questa notte ho te」はロマンティックなメロディを持った美しい曲。シンプルなフレーズを並べてあるだけなのですが、Andreaの味わい深いひび割れ声と歌唱力が、それに深みと旨みを与えています。ちょっとMichele Zarrillo(ミケーレ・ザッリッロ)の「Una rosa blu」に曲の雰囲気が似てるかな。

M9「Va bene... cominciamo!」は、Tom Waits(トム・ウェイツ)の「Time」という曲にAndoreaとLucio Dalla(ルーチォ・ダッラ)がイタリア語歌詞をつけたもののようです。

非常に歌唱力のあるカンタウトーレで、少しひび割れた声も趣があり、力強い歌い方も好ましく感じます。曲のタイプも、少なくともこのアルバムではなめらかで美しく、ときにロマンティックな部分もあり、これも好ましい。ただ、全体にキーボード(シンセサイザー)の音づくりとアレンジがいかにも安っぽくてセンスが悪いというか、古臭いというか(実際、古いアルバムですが)、もう少しなんとかならなかったのかと、その点が残念です。彼のようにヴォーカルに存在感や個性が出せる人は、あまり演奏のアレンジにごちゃごちゃ手をかけず、シンプルなバックで歌ったほうがいいんじゃないかと思います。

(2007.09.09)







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