1: IN SOGNO
2: PER SEMPRE
3: QUALCOSA DI LEI
4: MARI
5: IL PERCHE NON SO
6: OHI NE'
7: VICINO VICINO
8: VIVERE VIVERE
9: I RICORDI DEL CUORE
10: ROMA
70年代から、いまも現役で活動を続けているカンタウトーレ。
70年代の作品は(聴いたことがないのだけれど)オーケストラをバックに、80年代以降はキーボードによるオーケストレーションをバックに、優しい歌声を聞かせるアメデオだが、もともと地味な作風が持ち味らしい。
このアルバムは90年代に入ってからのものだけれど、あいかわらず印象はとても地味。
イタリアものというと瞬発力のある突然の盛り上がりや怒涛の哀愁・叙情攻撃などを思い浮かべてしまうのだけれど、このアルバムにそれを期待してはいけない。
感情を爆発させず、抑えたまま唄われるメロディは、けっしてドラマティックな旋律ではないのだけれど、聴き込むほどにじわぁっと心に染み込む。バックで鳴り続けるキーボード・オーケストレーションは“デジタリックな音色”だが、無限の広がりを感じさせ、どちらかというと北を想わせる冷たく乾いた音色なのに、なぜか暖かい。
アメデオって、けっして曲づくりの上手な人ではないと思う。
たとえば歌メロだけを抽出し、インストで聴いたとしたら、たいして魅力も感じない凡庸なメロディだろう。イタリアの曲はそのメロディの美しさで魅了されることが多いのだが、そういう点でいうと、アメデオの曲にはハンディがあるように思う。
しかしそのメロディが、雄大なキーボード・オーケストレーションにのり、アメデオの声で唄われると、命をもつ。
ある意味、とてもとっつきにくいアルバムだと思う。イタリアらしいひとなつこさがあまりない。簡単に聞き流したら、それほど耳に残ることもなく、心動かされることもなく終わってしまうかもしれない。
しかし、何度もかければかけるほど、心がアメデオの曲になじめばなじむほど、そのよさがわかってくるアルバムでもある。そして1度自分のものになってしまえば、心安らぐ愛聴盤になる。どこか神聖な感じすらする、そんなアルバム。
全体的に壮大なキーボード・オーケストレーションが感動的だが、個人的には1曲目、4曲目(そういえば学生時代に好きだった娘は MARI という名だった)、かすかに聞こえるピアノの音と合唱がドラマティックな6曲目から終曲への流れなどが気に入っている。
ところで、終曲の「ROMA」って、このアルバムを聴く前から知っていたような気がするのだが、何か元歌があるのだろうか?