produced by Mino Vergnaghi
computer programming: Matteo Saggese, Antonio Chindamo
keyboard: Antonio Chindamo
guitar: Carlo Ori, Mario Schiliro', Dario Benzoni, Luca Verde
drums: Roberto Gualdi
bass: Paolo Costa
uillean pipe, irish flute, tin whistle: Luca Crespi
harmonica: Chicco Porro
1977年11月6日ミラノ近郊デシオ(Desio)生まれで、2006年のサンレモ音楽祭新人部門に参加し、早い段階で選考から落ちたAndrea Ori(アンドレア・オリ)のデビュー・アルバムです。サンレモ参加曲はこれといって聴きどころのないつまらないものでしたが、アルバムのほうは力強いロックが多く収録されていて、それなりに楽しめます。
M1「Oggi no」は冒頭から厚みのある力強いロック・リズムが重く響き、ひび割れたというよりは喉になにか絡まったような感じの少し濁った歌声とよく合います。途中には美しいスロー・パートが入り、アクセントの役割を果たしています。こういったミドル・テンポのロック・チューンが、彼の持ち味のように感じます。
M2「Nel tuo mare」は2006年のサンレモ音楽祭参加曲。スケール感のあるバラード路線を狙ったのかもしれませんが、メロディも構成も展開も単調かつ平凡で、ぜんぜん印象に残りません。2006年のサンレモ参加曲のなかでもかなりつまらない部類に入る曲でしたが、このアルバムのなかでもかなりつまらない曲だと思います。だけどシングル・カットされてるんだよな。
M3「Non li spengo」は重たいリズムに乗って歌われるスローなロック。やはりこういう曲のほうがAndreaのヴォーカルには合います。濁った感じの力強い歌声と、ブルージーなギター。この曲に限りませんが、Andreaのロックにはイタリアの匂いはほとんどせず、イギリスのロック・シンガーのような重さがあります。
M4「Nel mio mondo」もミディアム・スローのロック。クセのあるヴォーカルが歌い上げるメロディ・ラインは美しいのだけど、その美しさはやはりイタリアのものではないように感じます。
M5「Forse era meglio」も力強いロック・チューン。ただ、ここまでの曲はソロのロック・シンガーのものといった印象が強かったのですが、この曲はエレキ・ギターのリフやアレンジなどがとてもバンド風です。
M6「Dove vai」はアコースティック・ギターの弾き語りによるロック・バラード。これまでのように力いっぱい歌い上げるのではなく、声の濁り具合はそのままですが、いくぶん楽な感じで、やさしく歌っています。それがほんのりとセンチメンタルな雰囲気を漂わせます。
このあたりからアルバムの性格が変わってくるようで、前半の、いかにもロック的な力強さが後退し、後半はロック系カンタウトーレ的な味わいになってきます。
M7「Con qualcosa di piu'」はピアノとギターの弾き語り風に始まります。序盤は抑えた感じですが、サビに向けてリズムやオーケストラが入り、スケール感のあるバラードへと展開します。非常にロック・カンタウトーレぽい曲ですが、バックの演奏の中(とくにギター)にわずかにプログレッシヴ・ロックの匂いがするように感じるのは、気のせいでしょうか。
M8「C'e' ancora」はミディアム・テンポのロック・カンタウトーレぽい曲。
そしてアルバム最後を飾るM9「In paradiso」。ミディアム・スローなロック・カンタウトーレ曲ですが、ほんのりとアイリッシュ・トラッドのエッセンスが混ぜ込まれています。Andreaのクセのある歌声とあいまって、寂しげな哀愁が漂います。その一方で夕日の落ちるサバンナを思い起こさせるようなリズムもちりばめられていて、ヨーロッパの街角でアフリカのスパイスや小物、衣料品などを売っている小さな店を見つけたようなエキゾティズムも感じます。
英米ロック色の強い前半と、ロック・カンタウトーレ色の強い後半とで、ずいぶん印象が違う感じのアルバムですが、自分は後半の作風のほうが好きです。歌メロの魅力がちょっと薄い感じですが、クセのある声と力強い歌い方でその分をカバーしているといっていいでしょう。今後はどっちの色合いを強めていくのかわかりませんが、どちらにいくにしろ、曲作りのなかにもう少し上手にキャッチーさを混ぜ込めるようになるといいなと思います。