元Matia Bazar(マティア・バザール)の歌姫、Antonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)が、Subsonica(スブソニカ)やBlu Vertigo(ブルー・ヴェルティゴ)、Timoria(ティモーリア)といった若手のロック・グループとともに、往年のMatia Bazarの名曲をリ・アレンジして歌うという、ある意味「企画もの」的なアルバム。
正統的なイタリアン・ポップスを演奏していたMatia Bazarと違い、今回Antonellaと組んで演奏しているグループは、ブリティッシュの影響の強い個性的なグループが多く、同じ曲でも演奏次第でこんなにもイメージが変わるという見本のようです。
しかし、演奏は変わっても、ベースとなるメロディ・ラインは同じ。なだらかな美しさと、ちょっと強引な展開を持ったヴォーカル・ラインは、やはり特徴的で、Matia Bazarならではの魅力にあふれています。
現在のMatia Bazarはより平坦なヴォーカル・ラインになっていて、ある意味で「びっくりする」ような展開がほとんどなくなってしまい、個人的に少し残念です。このアルバムを聴くと、Antonella在籍時のMatia Bazarの魅力の大きな部分は、Antonellaの声、歌だけにあったのではなく、この特異なメロディ・ラインにもあったのだなと感じます。
このアルバムでは、往年のMatia Bazarならではの魅力的なメロディが、あるときはブリティッシュ・ニューウェーヴ風に、あるいは南欧風、レゲエ風などの装いをまとって聴かれます。これらのアレンジが、その歌メロを最大限に活かすものかどうかはわかりませんが、試みとしては悪くありません。また、楽曲としても楽しんで聴けます。
Antonellaもリラックスして、若手と楽しんでこのアルバムをつくりあげたのか、声もやわらかく、あまり力まずに歌っているようです。自分としては、Antonellaの大きな魅力である圧倒的な存在感と空に突き抜けるような透明感を持った、迫力ある歌声を聴きたいところですが、作品コンセプトとして、あえてMatia Bazar時代のAntonellaとは違うところを出したかったのでしょう。
ロック的な要素が多いので、Matia Bazar的なポップス、あるいはAntonellaの他のソロ作品のような音楽を期待してこのアルバムを聴くと、多少の違和感を感じるかもしれません。それらの作品とは独立した作品として楽しんだほうがよいと思います。