prodotto da ROBERTO COLOMBO
Antonella Ruggiero: voce e percussioni
- Arke' Quartet -
Carlo Cantini: violino e percussioni
Valentino Corvino: violino e voce
Sandro Di Paolo: viola
Enrico Guerzoni: violoncello
Ivan Ciccarelli: percussioni
Matia Bazar(マティア・バザール)を抜けたあと、インド風なテイストを取り入れてみたり、若手のニューウェーヴ系アーティストとコラボレートしてみたりと、貪欲に音楽性を広げているAntonella Ruggiero(アントネッラ・ルッジェーロ)。そしてこのアルバムでは、弦楽四重奏を従えた室内楽的アプローチを聴かせています。
といっても、このアルバムで突然、室内楽になったわけではありません。2000年ころからAntonellaは、いわゆるポップスのコンサートと並行して、弦楽四重奏を従えたコンサートを行なっていたようなので、それを録音として残しておこうというのがこのアルバムなのでしょう。
Antonellaといえば、高く青空へ突き抜けるような力強くも透明な歌声と、ときにアクロバティックとも評される、ダイナミックで、ある種エキゾティックなヴォーカル・スタイル、そして圧倒的な表現力と歌唱力に、その大きな魅力があります。そのうちのアクロバティックな面に関しては、ソロに転向後、いくぶん薄まってきてはいますが、それでも広い大地の隅々まで響き渡るような芯の太さはあいかわらずです。
でも、このアルバムでは、バックが弦ということもあり、これまでのパワフルさを抑え、より丁寧に、繊細に、歌っている感じがします。豊かな表現力と透明でしなやかかつ柔軟性にとんだ歌声は、冷たい夜風にあたりながら満天の星空を眺めているような、懐かしく美しい情景を思わせます。
アルバムでは室内楽的アプローチにより、クラシックやトラッドなども演奏されていますが、クラシック的な重厚さや落ち着きというよりは、どちらかというと華やかな印象があるのは、やはりAntonellaの声と歌い方がポップス的だからなのでしょう。その点でいえば、たとえばDonella Del Moncao(ドネッラ・デル・モナコ)のアルバムのような音楽を期待するわけにはいきません。また一方で、このアプローチがAntonellaのヴォーカリストとしての魅力を十二分に発揮するものであるともいいにくい気はします。
しかし、これはこれとして、ヴォーカリストAntonellaの素晴らしさを感じさせるには充分な作品だし、また、持てる魅力を120%発揮できるかどうかは別にして、音楽的なクオリティはとても高いといえます。
あたたかい日々がくる前の季節に聴いておきたい、とても心おだやかな作品です。