1: KYOKO MON AMOUR
2: UNA COME TE
3: TORNA A SURRIENTO
4: FIGLI DELLE STELLE
5: TU SEI L'UNICA DONNA PER ME
6: DICITENCELLO VUJE
7: NON SO CHE DAREI
8: SIENTEME
9: LE TUE RADICI
10: PASSIONE
11: TRY TO IMAGINE
12: UN INCONTRO IN ASCENSORE
13: E TU MI PORTI VA
14: DONNA LUNA
15: LOOK OUT
16: TAKE A CHANCE
executive producer: Corrado Baccheli
concepted by Bruno Tibaldi
Alan Sorrenti(アラン・ソッレンティ)といえば、Jean Luc Ponti(ジャン・リュック・ポンティ)が全面的にフューチャーされたファースト・アルバム『Aria』や、その翌年にリリースされたセカンド・アルバム『Come un vecchio incensiere all'alba di un villaggio desrtyo』に聴ける独特の浮遊感と豊潤な音世界がプログレッシヴ・ロックのファンに高い評価を与えられた、非常に個性的なカンタウトーレというイメージが強いと思います。
実際、ファースト、セカンドは、研ぎ澄まされた感性と、不用意に触るとすぐに壊れてしまいそうな繊細な神経を感じさせ、Claudio Rocchi(クラウディオ・ロッキ)の作品に通じる印象を持ったものでした。それゆえ、Alanのことを「狂気のカンタウトーレ」などと呼ぶ人もいたようです。
このアルバム『Miami』はベスト盤で、1970年代後半の曲と1997年の曲が集められていますが、ファーストやセカンドの音を知っている者としては、本当にこれがあのAlan Sorrentiだろうかと耳を疑ってしまいます。もはや別人といってもかまわないほど、曲想が違っているのです。
細くてふわふわした感じの声は間違いなく彼のものですが、その声が乗る音楽は、かつての深く混沌とした精神世界を感じさせるものではなく、明るい陽射しと少し湿り気を帯びた熱い風といった、まるで南国のリゾートを感じさせるようなものとなっています。だいたいアルバム・タイトルからして“Miami”ですから、James Gang(ジェームス・ギャング)か Gloria Estefan(グロリア・エステファン)かという感じです。
そんななかでもM6、M7などの1975年の曲はファースト、セカンドのイメージを残していて、このアルバムのなかでは浮いていますが、楽曲の個性という点ではクオリティが高いといえるでしょう。というか、ほかの曲があまりにも普通すぎて、個人的にはちょっとつまらないのです。
独特の音世界を聴かせた初期の作品では非常に個性的でインパクトの強いカンタウトーレでしたが、このアルバムで聴けるような曲を歌うポップ・シンガーとしては、あまり才能を感じない、たいしたことのないシンガーな感じがしてしまいました。