produzione artistica: babalot, matteo cantaloop
testi e musiche: sebastiano pupillo
chitarre voce computer: babalot
chitarre voce pomodoro: frenziss
basso voce: devor
batteria: rentz
tastiere: marco catani
logic tastiere: matteo cantaloop
ローマ出身の、なんだか正体のよくわからないグループ(だと思うんですが)のミニ・アルバムです。ギター&ヴォーカルとしてBabalot(ババロット)というクレジットがあるので、もしかしたらBabalotさん(?)のソロ・アルバムなのかもしれません。
M1、M7、M13の曲名がないのは、ジャケットやブックレットの曲目リストに載ってないからです。曲目リストがいきなり「02 Senza titolo 3 agosto」から始まってます。でも、曲名はなくてもちゃんと曲は入ってます。短いけど。プレーヤーにかければM14までトラック番号を読みます。ちなみにM15「LO SPETTRO (ghost track)」は、ジャケットのバック・スリーブにはトラック番号も曲名も書いてないのですが、ブックレットのほうには載ってます。ゴーストトラックなので、トラック番号的にはM14のなかに含まれます。
ちょっとブリティッシュ・ポップスぽい人懐こさを持ったメロディに、デジタル・ポップな演奏が重なります。引っかかりのあるヴォーカルや、フィルターをかけたコーラス、重いシンセ・ベースに伸びのあるノイジーなギター、現代ふうなようでいて懐かしい感じのあるメロディなど、にぎやかで雑多な印象を持ちつつもほのかに哀愁のある曲調が、なかなか個性的に思います。
M1はクラブっぽいデジタル・ポップが始まりそうに思わせる曲。ぽこぽこしたシンセサイザーのメロディが古い感じで心地いいです。
M2「Senza titolo 3 agosto」は初期のころのPink Floyd(ピンク・フロイド)のアルバムに入っているフォーク系の曲を思わせるスキャットから入りますが、途中からラウドなリズムが入ってきて、でもメロディ展開は淡々としてて、おもしろいです。サイレンの音やひずんだシンセサイザーの奏でるメロディ、やわらかなシンセサイザーによるアルペジオなども入り、盛り上がるような盛り上がらないような、不思議な味わいです。
M3「La lavatrice e il muro」はイントロのアコースティック・ギターのアルペジオの音がいいな。歌メロは1970年代のブリティッシュ・ポップスのような雰囲気があり、そういう点ではLunapop(ルナポップ)などにも通じそうなのですが、演奏のガチャガチャした感じはLunapopよりもブリティッシュぽいと感じます。
M4「Festa n.3」は1970年代初頭のブリティッシュ・ロックのようなギリギリしたエレキ・ギターのストロークが懐かしい感じです。ヴォーカルのバックでもナチュラル・ディストーションが薄くかかったエレキのカッティングが入り、70年代から80年代にかけてのロマンティックな美意識を持ったイギリスのロックを思い出します。でも歌メロはとってもポップなところが、このグループの持ち味のようです。
M5「Forse una donna」は、イントロはエレクトリックな実験音楽風なのですが、ヴォーカルが入ると引きずるようなヴォーカルが入り、ちょっとブルージーでいなたい感じになってしまいます。少しカントリー風味もあるでしょうか。途中のギターソロはかなりブルージーですが、それほど「泣きまくり」とはならないバランス感覚がいいです。
M6「Panca bestia」ではテープの逆回転ギターにガットギターとキーボードのアルペジオがかぶさるイントロから、シンセ・ベースがぶんぶんいうヴォーカル・パートにつながります。実験音楽風な演奏にアコースティックだったりデジタリックだったりする楽器も重なり、歌メロは淡々という、持ち味(?)がよく出ています。
M7はインストゥルメンタル。ちょっと音楽コラージュ風です。
M8「La mantide」ではスネア・ドラムの音が印象に残ります。厚みのあるデジタリックな演奏はあいかわらずですが、シンセ・ベースはここではあまりうなっていません。それよりも生ドラムの音がドタドタと聴こえて、それが心地いいです。シンセのオーケストレーションもいい感じに空間を埋めます。
M9「Schifo」はやわらかなフォーク・ロック風のバラード。でも笑い声のSEが入ったり、ささやきコーラスが入ったりと、素直なアレンジにはなっていません。アコースティック・ギターのストロークによる弾き語り風なのですが、シンセサイザーのボコボコしたリズムを入れたり、後半ではRobert Fripp(ロバート・フリップ)風の伸びのあるエレキ・ギターを入れたりと、簡単には終わりません。
M10「Ferie mentali」ではエレキ・ピアノの音が柔らかいなと思っていたのもつかの間、すぐにお祭りのような雑然とした騒がしさのある演奏がバックに入ってきて、テープの回転数を落としたような気持ちの悪いフェード・アウトをしたかと思うと2番が始まりと、あいかわらずすんなりとは聴かせてくれません。
M11「Una cosa sola」はシンセ・ポップな演奏にフィルターのかかったヴォーカルが乗るかたちで始まりますが、すぐに無駄な音数の多い華やかな音色の楽器郡の演奏が入ってきて、でもやっぱりベースはぶんぶんいっていて、すっかりBabalotの世界です。
M12「Ma che ti ho fatto」はアコースティック・ギターの弾き語りによるちょっと寂しげなフォーク風ポップス。フルート音によるキーボードのアルペジオも美しく響きます。
M13は街の雑踏を思わせるインストゥルメンタルのデジタル・ポップ。
M14「Morte di una medusa」は太いベース音のうえにアコースティック・ギターのやわらかなストロークがかぶさり、淡々としたヴォーカルにコーラスが乗る曲。途中からは雄大なキーボード・オーケストレーションも入ります。歌メロはあまり展開しないのですが、バックの演奏がゆったりとしたドラマ感を持っているので、けっこう聴けます。こういった感じって、Zucchero(ズッケロ)の「Volo」などに似てますね。
M15「Lo spettro」はちょっとカウボーイっぽい感じのまじった南イタリア風フォーク・ソングといったところでしょうか。シュワシュワいうシンセサイザーのパンニングが広がりを出しています。
ゴーストトラックも含めると15曲も入っていながら、全体の収録時間が35分程度と短く、それゆえそれぞれの曲も3分あるかないかとコンパクトです。そのコンパクトさ加減が「もう少し聴いていたい」という気持ちを起こさせます。
演奏は一筋縄でいかない、素直じゃないものばかりで、どちらかというとやかましいというかうっとうしいというかウザったい感じになりそうなのですが、ヴォーカル・ラインがどれも淡々としていて、かつほのかにノスタルジックな柔らか味があるため、全体にそれほどやかましい感じがしません。なんか不思議な感じなのだけど、同時に懐かしくもあるような気がして、妙に心に残ってしまいます。
言葉で伝えるのは難しいのですが、1970年代から80年代のブリティッシュ・ポップスやエレ・ポップなどが好きだったイタリアン・ポップス・ファンなどにアピールしそうな気がします。少なくとも自分は気に入りましたし、次のアルバムも(リリースされるのであれば)聴いてみたいと思いました。