BANCO DEL MUTUO SOCCORSO


BANCO (1975年)

   バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ / イタリアの輝き〜バンコ登場
    (VICTOR VICP-60815 / 日本盤CD)



jacket photo  1: CHORALE (from Traccia's theme)
    コーラル(軌跡のテーマ)
 2: L'ALBERO DEL PANE (The Bread Tree)
    パンのなる木
 3: METAMORPHOSIS
    変身
 4: OUTSIDE
    太陽の彼方から
 5: LEAVE ME ALONE
    一人ぼっち
 6: NOTHING'S THE SAME
    ナッシングズ・ザ・セイム
 7: TRACCIA II
    軌跡 II


produced by VITTORIO NOCENZI
arrangements by BANCO

BANCO are;
PierLuigi Calderoni: drums and percussions
Gianni Nocenzi: grand piano, clarinet and synthesizer
Renato D'Angelo: bass guitar and acoustic guitar
Rodolfo Maltese: electric guitar, acoustic guitar, trumpet and back vocal
Vittorio Nocenzi: organ, synthesizer and electronic strings
Francesco Di Giacomo: vocal







 イギリスのマンティコア・レーベルからリリースされた、英語詞による世界進出盤。このアルバムではグループ名が短くBancoとだけ表記されています。

 Premiata Forneria Marconi(プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ。PFM)に続く、マンティコアからのイタリアン・プログレッシヴ・グループ第2弾だったわけですが、大成功し、日本公演まで行なわれたPFMに対し、Bancoの海外進出は失敗だったようです。そのせいか、Bancoのディスコグラフィのなかでも、このアルバムは、以前はあまりよい評判を得られなかったようです。
 でも、そういった先入観なしに聴けば、非常にテクニカルでダイナミックな、クオリティの高いプログレッシヴ・ロック作品になっています。

 ただ、自分はどうしてもBancoには濃厚なイタリア臭さを求めてしまうので、その点でいえばものたりない作品であることも事実です。イタリア語という言語の持つなだらかな音の流れが英語に置き換えられることによって失われるイタリアらしさだけでなく、演奏面においても、英米のプログレ市場をターゲットに置いたためか、クリアであること、ダイナミズムにあふれていることが重視され、イタリアン・ロックの持ついびつなまでのドラマティックさが失われているように思います。

 こういった傾向はPFMのマンティコア盤でもうかがえましたが、もともとPFMはイタリアらしい素朴さのほかにクリアなダイナミズムをも備えていたグループなので、それほどイタリア本国向けアルバムとの落差を感じさせなかったともいえるでしょう。しかしBancoは、イタリアのグループのなかでもとくに“イタリアらしい”臭いを持ったグループなので、それが余計に、当時のコアなBancoファンにしてみれば、彼らの持ち味を失わせた作品として悪い印象を持たれてしまったのかもしれません。
 実際のところ、英語で歌うPFMにはとくに違和感を感じませんが、英語で歌うBanco(というか、ヴォーカリストのFrancesco)には強い違和感があります。オペラティックな発声のせいなのか、あるいはメロディのせいなのかはわかりませんが、ここまで英語が似合わないのも珍しいのではないでしょうか。

 演奏面の素晴らしさ、充実度は文句のつけようがない、非常にハイレベルなグループなので当然、このアルバムでもその魅力が発揮されています。でも、彼らの別の側面における大きな魅力といえる、Francescoの力強くも暖かい“唄”の魅力が半減してしまっているのが、ヴォーカル・ファンの自分としてはとても残念です。
 歌唱そのものは素晴らしいのに、言葉がイタリア語でないというだけで、こんなにまで味わいがなくなるとは思いませんでした。

 ただし、それを抜きにして、1プログレ作品として聴けば、非常に優れたアルバムでしょう。

(2000.01.10)








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