LA BOTTEGA DELL'ARTE


DENTRO (1977年)

   ラ・ボッテガ・デッラルテ / 愛の中で
    (CRIME/KING RECORD: 292E 2026 / 日本盤CD)



jacket photo
  1. DENTRO
       愛の中で
  2. IL SUO SGUARDO, LA MALINCONIA, LA MIA POESIA
       貴女に贈る詞(うた)
  3. CHE DOLCE LEI
       素敵な彼女
  4. A RENEE
       レネーエ
  5. CANZONE DEL SOLE D'INVERNO
       冬の陽射し
  6. QUANDO UNA DONNA
       貴女を待って
  7. INCONTRO
       ときめきの出会い
  8. MUSICANTE
       音楽家
  9. QUESTA SERA E' PER NOI
       今夜、あなたと……
  10. L'ULTIMA STORIA
       最後の物語り


Piero Calabrese: tastiere, voce
Romano Musumarra: tastiere, flauto, chitarra, voce
Alberto Bartoli: batteria
Massimo Calabrese: basso, chitarra, voce
Fernando Ciucci: voci, chitarra

Isabella Musumarra: arpa
Tullia Laura Petrassi: voce








1970年代のイタリアには、日本でいわゆる「ラヴ・ロック」(このこっぱずかしい名称、いまだになじめません)と呼ぶところの、ひたすら甘〜いメロディを歌い続けたポップ・ロック系コーラス・グループがたくさんいました。そのなかでもっとも成功し、いまも活動を続けているのがご存じPooh(プー)なのですが、ローマで結成されたLa bottega dell'arte(ラ・ボッテガ・デッラルテ)もこのカテゴリーに入るタイプの音楽を演奏しています。

似たようなタイプのグループがやまほどいたといわれるなかで、Poohは飛びぬけていました。メロディとアレンジの質が高いのはもちろん、メンバー4人が全員ヴォーカルをとれ、かんぺきかつ印象深いコーラス・ワークと多彩なヴォーカル・アンサンブルを聴かせてくれ、しかもおのおのの演奏技術が抜群に高く、それぞれの楽器が要所要所できちんと主張しつつも全体のアンサンブルも壊さずトータルでの「演奏」を奏でる。トップ・グループになり、その後も長く愛され続けるには、やはり理由があるのです。

La bottega dell'arteも、アルバム自体は4枚ほどしか出なかったようですが、多くのファンに愛されたグループです。1976年にはフェスティヴァルバールに参加して2位になり、1980年にはサンレモ音楽祭にも参加しています。日本でもプログレッシヴ・ロック・ファンを中心に、このグループ、このアルバムの愛好者がけっこういるようです。

しかし、Poohとくらべてしまうと、やはり小粒というか、オーラに欠けるところがあるのは否めません。

メロディはとてもいいのだけど、やたらとキーボードに偏ったアレンジが、元ギタリストである自分にとってはいまひとつ。メンバーが5人もいるのに、きちんとしたギタリストがいないせいもあるのでしょうが、ギターのアレンジと演奏技術が平凡なのですよ。キーボードとバランスの取れたギターがあったなら、どれだけよかったことでしょう。

コーラスも、もうひとつ魅力に欠けます。メンバー5人ともvoce(ヴォーカル)のクレジットがありますが、そして実際、持ち回りでメインを取ったりハーモニーをつけたりすることもありますが、Poohのような「ハッ」とするような美しさや華麗さがありません。ハーモニー・パートも非常に奥ゆかしいというか、そういえばよく聴くとハーモニーがついてるねくらいだし、ハーモニーよりもユニゾンもしくはソロのパートのほうが多いし。

などなど、いろいろなところでPoohのような一流にはなれない感満載な感じはあるのですが、でもこの甘くやさしく美しいメロディはとても魅力的なのです。そして、それをどんどんふくらませるキーボードとオーケストラも、いかにもイタリアン・ラヴ・ソング的で素敵なのです。ギター、フルート、キーボード、ヴォーカルと大活躍のRomano Musumarra(ロマーノ・ムスマッラ)はその後、フランスなどでアレンジャーとして大活躍のようですが、その原点がここにあったりするのでしょう。

いまとなっては非常に古臭いタイプの音楽だと思います。なので、いまのイタリアン・ポップスが好きなファンとか、これからイタリアン・ポップスを聴いてみたいと思っているファンには、ちょっとすすめにくいかもしれません。また、日本ではプログレッシヴ・ロックの周辺グループのような紹介のされ方がしていますが、往年のイタリアン・プログレッシヴをたくさん聴き込んでいない若いプログレ・ファンにもすすめにくいでしょう。だけど、たしかにこのグループには、古き良き時代のイタリアン・ポップスの脈動があります。それなりの数のイタリアのポピュラー・ミュージック(ポップスもロックも含めて)を聴き、それを愛してきた人には、この「一流になれない感満載」なところも含めて、愛しく感じられるグループだし、アルバムだろうと思います。

(2006.07.02)







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