ideazioni, testi e musiche di CLAUDIO BAGLIONI
arrangiamenti di PAOLO GIANOLIO e CLAUDIO BAGLIONI
realizzazioni, orchestrazioni e produzioni di PAOLO GIANOLIO
Claudio Baglioni: pianoforti
Paolo Gianolio: chitarre, programmazione computer e tastiere, basso
Gavin Harrison: batterie e percussioni
John Giblin: basso e contrabbasso
Paolo Costa: contrabbasso elettrico, basso
Danilo Rea: pianofrte e organo hammond
Emanuela Cortesi, Moreno Ferrara, Antonella Pepe, Silvio Pozzoli: cori
London Session Orchestra: orchestra
スタジオ盤としての前作『Viaggiatore sulla coda del tempo』は1999年暮れのリリースで、「時の終わりの旅人」というタイトルどおり、Claudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)が生まれ育ってきた20世紀の最後を締めくくり、さらに新しい世紀への旅立ちを感じさせるにふさわしい、深い奥行きとドラマ、スケール感を持った力作でした。音楽的に、彼がこれまでつくり歌ってきた1970年代から80年代、90年代のそれぞれの曲を集大成したような感があり、70年代の情熱的な青年カンタウトーレだったClaudioと80年代以降のポップ・スターとしてのClaudioとが、世紀の最後におたがいを必要とし、求め合い、手を結ぶことに成功したような、そんな印象を受けました。
そして、21世紀最初のスタジオ盤となるのが、この『Sono io - l'uomo della storia accanto』です。世紀末を締めくくった前作があれだけの力作、名作だっただけに、新世紀の幕開けを飾る(には、2003年リリースというのはかなり遅いですが)作品として、Claudioがいったいどんな音楽を聴かせてくれるのだろうかと、かなり期待してた部分はあります。
アルバム・リリースから2週間程度経った時点でこの原稿を書いていますが、すでにいくつかのイタリアン・ポップス系サイトやネット・ショップなどで、このアルバムについての紹介や評価のようなものが掲載されていて、おおかたは高評価です。傑作との評価もあります。でも、自分的には、悪くはないけど名作・傑作というほどでもないかなという感じです。
自分としては、前作がこれまでのClaudioの音楽の集大成で、そのことに成功し、また世紀の終わりというタイミング的なこともあり、音楽的にも時間軸的にも非常にドラマティックなリリースだったことから、その次のスタジオ作品では「新しいなにか」を聴かせてもらうことでさらにドラマティックな思いをしたかったんです。
でも、このアルバムは「新世紀を迎えた新しいClaudioの第一歩」ではなく、前作と同様「これまでのClaudioの集大成第二弾」的な位置づけのように思えます。それも、前作は1970年代のデヴュー当時からそれまでのすべてを消化・融合した集大成といった印象を持ったのだけど、今作は1980年代以降の、ポップ・スターとしての道を歩みだしてからのClaudioの集大成といった印象を受けます。
メロディ自体は悪くないです。前作ではちょっとこねくり回して多少無理なメロディになっちゃったかなというところもあったのですが、このアルバムに収録された曲はどれも、とても素直なメロディになっていて、無理がありません。でも、全体が素直になってしまった分、強く印象に残るメロディというのもないように思うんです。
また、アルバム全体の構成や曲の配置も、あまり強い印象を与えません。ドラマ性が感じられなくて、正直にいってしまうと、アルバムを通して聴いていると、ちょっと飽きちゃう。何回か聴きかえすうちに、だんだんといい感じになってくるようには思うのだけど、少なくとも2回目までは「なんで? こんな程度なの?」といった気持ちが先にたってしまいました。収録時間も長くて、コンセプトなりストーリーなりを持ったアルバムを聴いているのではなく、なんとなくベスト盤を聴いているような、そんな気持ちになってきてしまいます。
バックで鳴っている各楽器の音もやたらとクリアで派手派手しく、オーケストラの使い方はいかにも大げさで、せっかくのClaudioのヴォーカルの魅力を充分に生かしていないように感じます。それぞれの曲自体は悪いものではないのだけど、表面的な派手さとわかりやすさを追求したために、曲本来の魅力や奥行き、深みをオミットしてしまったのかなという印象です。
イタリア語がわかれば、また少し印象も違うのでしょうが、ヴォーカリストとして、そしてコンポーザーとしてのClaudioの魅力にひかれている自分としては、歌の部分での味わいを深め、高めてくれるようなアレンジや音づくりを望んでしまいます。このアルバムについては、できればもっと素朴なアレンジで、そしてやわらかい音づくりで、聴きたかったです。音色づくりの面での自分との相性の悪さが、なかなか乗り越えられない感じです。
いろいろな意味を含めて、次作に期待したいです。
M1「Sono io」は先行でシングル・カットされたポップで明るい曲。アコースティック・ギター音がちょっと硬いかな。それと、ドタドタしたドラムの音が少し耳障り。曲調自体はシングル向きで、コンサートでは盛り上がりそう。
M2「Tutto in un abbraccio」はゆったりめのバラード。ちょっとバックのオーケストラがうるさいです。たぶん、シンプルにピアノの弾き語りかなにかで歌ったほうが、Claudioのヴォーカルも、曲自体が持つメロディも、生きたんじゃないでしょうか。よいメロディと構成を持った曲だけに、派手派手なアレンジと音づくりが残念です。
M3「Grand'uomo」は『Strada facendo』に収録された「Via」などに似た感じの、テンポの速いポップ・チューン。こういった曲にはこういった感じの音づくりも悪くはありません。バックのオーケストラは、曲の魅力を高めるという点では、あまり機能しているようには思えません。
M4「Mai piu' come te」のイントロで聴けるアコースティック・ギターの音色は、暖かみとやわらかさがあって、このアルバムのなかではちょっと異色ですが、自分はこういう音色のほうが好きです。サビで入ってくる他の楽器類はあいかわらず硬くとんがった音で、このギターの音色がかき消されてしまいますが、そのかわり地中海音楽のようなキラキラした明るさが出てきて、それはそれでよしという感じです。ちょっとロマンティックなスロー・バラードで、声もよく出ているし、明るく暖かいやさしさに満ちていて、なかなかいい曲です。でも、やっぱりオーケストラの使い方がいまいちのような気がします。
M5「Sulla via di casa mia」はミディアム・スローなポップス。明るくやわらかいメロディはありますが、曲としてはありきたりな感じです。
M6「Patapa'n」は生ピアノによるアルペジオのやわらかな響きに導かれる抑えめのヴォーカルが静かに心にしみこみます。歌声のなかに一瞬、倍音が混じるようなClaudio独特の歌い方も、この曲の魅力を高めています。オーケストラもここではけっこう控えめで、Claudioの歌が持つ魅力を壊さずにいます。コーラスを追うごとに徐々に盛り上がっていく構成もよい感じです。スケール感のあるバラードに仕上がっています。
M7「Quei due」のイントロで聴けるアコースティック・ギターのメロディは、おしゃれです。シティ・ポップスみたい。曲が始まってもその印象のまま、都会的な哀愁を漂わせて進んでいきます。ちょっとジャジーな雰囲気もあって、曲のタイプは違うけれど、Nino Buonocore(ニーノ・ブォノコーレ)とかPino Daniele(ピーノ・ダニエーレ)とかにどことなく通じるところもあるかもしれません。
M8「Serenata in sol」は一転して、ちょっとお茶目な感じのあるポップで軽やかな曲。アコーディオンの小刻みなストロークや、はじくように弾かれるアコースティック・ギターのバッキングが楽しげです。リゾートで明るい月夜を楽しんでいるような、ちょっと開放的で、ちょっとロマンティックな、そんな気分になってきます。
M9「Tienimi con te」ではバックでハモンド・オルガンが鳴っていて、とても懐かしい感じになります。エレキ・ギターやドラムなどの他の楽器の音は他の曲と同様、クリアで派手な音づくりなのですが、そのなかにモコモコしたオルガンの音が聞こえてくると、なんだかホッとします。ゆったりしたバラードで、サビでのスケール感などはさすがClaudioという感じです。最初期の頃のClaudioの曲って、こんな感じを漂わせていることが多かった気がします。
M10「Fianco a fianco」はアップ・テンポ気味のポップな曲。乗りがよくてメロディも素直だし、とくにサビはキャッチーなので、きっとコンサートではみんなで歌うんだろうなと思います。というか、すでにそれを想定したようなコーラスが最初から入ってます。ちょっとバックのアレンジは懲りすぎかもしれません。こういう曲ではもっとストレートでいいかも。
M11「Requiem」は2001年頃につくられた曲で、2003年に起きたイラク戦争を悲しんだClaudioが急遽、オフィシャル・サイト上で配布し、このニューアルバムにも収録されることになったらしいです。タイトルどおり重厚感のあるスロー・チューンで、Claudioの伸びやかなヴォーカルも充分に生かされた曲づくりがされているのですが、いかにも大げさなオーケストラとか、爆撃を思わせるようなリズム・マシーンの導入とかに、やりすぎな印象を受けてしまいます。こういう曲だからこそ、演奏はもっと素朴に、シンプルにしたほうが、心に響くと思うし、またClaudioは、演奏の力など借りなくても、言葉の伝わらないリスナーにも思いや気持ちを届けることができるだけの力量を持ったシンガーだと思います。大仰でわざとらしいアレンジが、この曲の本来の意味を低めてしまった気がするのは、自分だけでしょうか。
M12「Di la' dal ponte」は軽やかなポップ・ソングです。アルバム中盤からこのあたりにかけての曲の配置・構成って、どうなんでしょう。なんとなく曲を並べただけで、あんまり曲と曲の相互的な影響とかは考えず、機械的にスローな曲とポップな曲を並べただけなのかなという印象を持ってしまうのですが。この曲自体は、前向きな明るさのようなものが感じられて、非常に平和な感じがあって、悪くないです。あ、そうか。「Requiem」のあとだからこそ、こういう曲が置かれたのかな。ということは、やはりなんらかの意図を持って曲を配置してはいるのかもしれません。
M13「Per incanto e per amore」は、J.S.Bach(ヨハン・セバスチャン・バッハ)の「主よ人の望みの喜びよ(Wohl mir, daB ich Jesum habe)」のメロディをモチーフに使い、そこに歌詞が乗せられています。コーラスも導入され、ドラマティックな大団円を迎えます。