lyrics by Claudio Baglioni
music by Claudio Baglioni e Antonio Coggio
orchestral arrangements by Tony Mimms
produced by Antonio Coggio
keyboards: Toto Torquati
bass: Giuliano Guerrini
drums: Massimo Buzzi
guitars: Luciano Ciccaglioni, Maurizio De Angelis
『Questo piccolo grande amore』『Gira che ti rigira amore bello』『E tu...』『Sabato pomeriggio』と続くアルバム郡は、RCAレーベルにおけるClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)がもっとも充実していたころの作品だと思います。現在もトップ・シンガーとして活動を続けるClaudioですが、もちろん近年の作品もよいけれど、自分としてはやはりRCAの、このころの作品のほうに強い愛着を感じてしまいます。
CBS/COLUMBIA以降のClaudioの作品は、シンガー・ソングライターとしてのクウォリティを高めることにテーマがあるように感じます。そしてそれは、その後の人気の高まりを見ても明らかなとおり、成功したといえるでしょう。一方RCA時代の作品、とくにこのアルバムを中心にした前後3枚には、より素朴な感情から生まれる「歌いたい」という欲求と、アルバム全体を「ひとつの作品」としてとらえ、そこに芸術性を加えていくという当時のプログレッシヴ・ムーヴメントからの影響が、ある意味、奇跡的なバランス感覚をともなって表現されています。
こうしたトータルなアルバム制作のどこまでがClaudio自身の意思だったのかはわかりませんが、若いカンタウトーレのみずみずしい感性と厚みのあるプログレッシヴ・アレンジの持つ世界観が高いレベルで融合できたのは、元となる曲自体とヴォーカルに充分以上の高いクウォリティがあるからでしょう。いくらすばらしいプログレッシヴ・アレンジを施しても、元となる曲とヴォーカルが貧弱なためにどうにもならないことはたくさんあります。
以前はこのアルバム、『Questo piccolo grande amore』『Sabato pomeriggio』にくらべると少し落ちるかなと個人的には思っていました。なんとなくアレンジ面でやりすぎてしまった、いろいろ詰め込みすぎてしまった、それに対して個々の曲の魅力が薄いのではないか……というふうに感じていたんです。しかしいま、改めて聴いてみると、このアルバムもそれらに負けない、もしかしたらそれ以上にクウォリティの高い作品ではないかと感じられます。
以前は気になったアレンジの派手さも、じつはとてもよく練り上げられていて、曲と曲をつなぐだけでなく、アルバム全体のストーリーを展開させ盛り上げるのに大きく寄与していると感じられるようになりました。その点が、アレンジャーのVangelis(ヴァンゲリス)がでしゃばりすぎて騒がしいばかりの『E tu...』とは違います。また、そう感じられるようになると、それぞれの曲やそのフレーズの魅力も浮き彫りになってくるようです。
もしかしたらこのアルバム、『Questo piccolo grande amore』よりも密度の高い名盤かもしれません。およそ30年を経ても色あせない作品を若くしてつくりあげたClaudioの才能と、それをバックアップしたレーベルやミュージシャンたちの思いと情熱が伝わってきます。