DISC 1
DISC 2
DISC 3
realizzato da PAOLO GIANOLIO
missato e masterizzato da PAOLO GIANOLIO
2001年にイタリア各地の劇場を回って行なわれたピアノの弾き語りによるコンサート「InCanto tour」を収録したClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)の3枚組ライヴ・アルバム。
1981年リリースの『Strada facendo』以来、スタジオ盤を1枚リリースした次はライヴ・アルバム、そしてまたスタジオ盤というローテーションでアルバムをリリースしていたClaudioですが、1995年の『Io sono qui』以降はスタジオ盤1枚のあとにライヴ2種類(あいだに『Anime in gioco』がありますが、これは企画盤ですし、『Da me a te』はフル・アルバムの長さはあってもシングル盤ですね)というローテーションに変わってきたようです。
そんなわけで、オリジナル・アルバムのリリース間隔が一段と開いてきたClaudioの、1999年のスタジオ盤『Viaggiatore sulla coda del tempo』、2000年のライヴ・アルバム『Acustico - sogno di una notte di note』に続くアルバムは、やはりライヴ・アルバムなのでした。
Claudioの弾き語りによるライヴ・アルバムというと、1986年の『Assolo』があります。これは、打ち込みのドラムとプログラミングされたキーボードもいくぶんは入っていましたが、それ以外はバックバンドなしの弾き語りでおよそ2時間を歌いきるという、個人的には彼のディスコグラフィのなかでもベストに押したい素晴らしいライヴ・アルバムです。シンガーとして、そしてコンポーザーとしてのClaudioの素晴らしさ、つまりカンタウトーレとしての魅力と才能が余すことなく感じられる盤だと思います。
一方、アコースティック楽器によるコンサートを収録した盤といえば、前作『Acustico』はタイトルどおり、アコースティック・セットのバンドを率いてイタリア各地を回った「Sogno di una notte di note tour」を収録していました。ただ、アコースティック・セットとはいっても実際は、ベースや一部のギターなどにエレクトリック楽器が使われているので完全なアン・プラグドではありません。それでも充分にClaudioの声の魅力、歌の素晴らしさを感じられたライヴではありました。
そしてこの『InCanto』は、Claudioたったひとりによる、生ピアノだけをバックにした、完全な弾き語りライヴです。
『Assolo』や『Acustico』以上にシンプルな演奏をバックに、Claudioの歌声が深く響きます。声の出方も、『Assolo』ほどではありませんが、『Acustico』のときよりも伸びやかで深みがあります。「Tutto il calcio minuto per minuto」でのロングトーンも健在で、『Acustico』のときよりもよく伸びています。
選曲は、disc1-8,disc2-8,disc3-11が『Claudio Baglioni』(1970年)から、disc2-12が映画『ブラザー・サン・シスター・ムーン(Fratello sole sorella Luna)』(1972年)のテーマソング(サントラ盤にスタジオ録音が収録されているようです)、disc3-12は『Questo piccolo grande amore』(1972年)から、disc2-6が『E tu...』(1974年)から、disc1-5,9,disc2-2,disc3-2が『Solo』(1977年)から、disc2-3,7が『E tu come stai?』(1978年)から、disc1-3,disc2-11,disc3-5,6,7が『Strada facendo』(1981年)、disc3-10はシングルのみリリースの「Avrai」(1982年)、disc1-4,disc2-1,4,disc3-4が『La vita e' adesso』(1985年)から、からdisc1-1,2,10,11,12,disc2-5,10が『Oltre』(1990年)から、disc1-6,disc3-1,9が『Io sono qui』(1995年)から、disc1-7,disc2-9,disc3-3,8が『Viaggiatore sulla coda del tempo』(1999年)からと、デヴュー当初から最近の曲まで、比較的満遍なく、ほぼすべてのアルバムからピックアップされています。
『Gira che ti rigira amore bello』(1973年)と『Sabato pomeriggio』(1975年)からは1曲も収録されませんでしたが、すでに何回も歌いすぎたからでしょうか。とくに初期の傑作と名高い『Sabato pomeriggio』からの曲が1曲もないのは少し残念ですが、その一方で、RCAレーベル時代のアルバムのなかでも地味な作品であるファースト『Claudio Baglioni』と『Solo』からの曲が多めに歌われているのはうれしい感じです。
なかでも「Solo」は、メロディのよさが改めて再認識できます。総じてRCA時代の曲のほうが1980年代以降の曲よりもメロディ・ラインが素直でロマンティックな印象を受けますが、シンプルなピアノの演奏で歌われる「Solo」は、それを端的に表わしているように感じます。
よりカンタウトーレ的というか、シンガー・ソングライター的な要素を持っていた初期の曲は、こういったシンプルなアレンジと相性がよいようです。
一方、ポップ・シンガーとしての人気を得ていった1980年代以降のアルバムでは、バック・ミュージシャンの演奏の重要度も初期のころより上がってきていると思うのですが、このライヴではピアノのみの演奏なので、アルバムでのような躍動感や激しさといったようなものは期待しづらいといえます。
それでも、リズミックな曲はリズミックに、元気な曲は元気にピアノが奏でられているので、弾き語りコンサートにありがちな単調さはまったく感じられません。
けっきょくのところ、演奏がどうということ以上に、Claudioの歌さえあればそれだけで充分ともいえます。「Fratello sole sorella Luna」のような素直なメロディとおだやかなピアノの非常にシンプルな曲などではとくに、彼の歌声が胸にしみます。
というわけで、非常に出来のいいライヴ・アルバムなのですが、残念なのが、少なくとも2002年8月の時点では、このアルバムはClaudioのオフィシャル・サイトを通してしか買えないこと。彼ほどの人気アーティストのアルバムが、一般の流通を通さずにインターネットの直販でしか手に入れられないというのは、とても残念なことです。
そのうえ、オフィシャル・サイトの直販ページはイタリア語でしか書かれておらず、イタリア語のわからないファンには非常に不便。さらに、システムが不安定なのか、時間帯によってサイトにつなげられなかったり先に進めなかったりと、とても使いにくいのです。
これでは、ネット通販にあまり慣れていなくてイタリア語もよくわからないファンはアルバムを買わなくてけっこうといっているようなもの。こういった販売側の姿勢は、アルバムの内容がよいだけに、とても残念です。
また、内容面では、歌も演奏も選曲もよいのですが、曲間の歓声や拍手といったいわゆる会場のノイズが毎回フェイドアウトしてしまうのが残念です。
せっかくのライヴ盤なのですから、もっと曲〜歓声〜曲といった時間のつながりを感じさせるつくりになっていてもよかったのではないでしょうか。「自分もその場にいる」という感覚がもうひとつ感じにくいつくりになってしまっているように思います。
こういった、こまこましたところでもう少し繊細な対応ができていれば、コンサート自体の出来は非常によいので、もっともっと感動的な、21世紀の『Assolo』になったかもしれないのになという感じがします。