prodotto: Francesco Barbaro e Maurizio Nicotra
produzione artistica: Carmen Consoli
arrangiamenti: Carmen Consoli e Massimo Roccaforte
arrangiamenti d'orchestra: Paolo Buonvino
voce e chitarra: Carmen Consoli
chitarra e mandolino: Massimo Roccaforte
basso: Leandro Misuriello
batteria e percussioni: Puccio Panettieri
violino: Elena Majoni
violoncello: Eszter Nagypal
pianoforte: Tony Brundo
assistente al direttore d'orchestra: Vincenzo Cavalli
orchestra del Teatro Vittorio Emanuele di Messina
ブリティッシュ・ニューウェーヴ風の雰囲気がクールでかっこいいCarmen Consoli(カルメン・コンソリ)のライヴ盤。バックにオーケストラを従え、主に生楽器とオーケストラの演奏に乗せて歌うという、ふつうのロック系シンガーのライヴ盤とはちょっと趣の違うアルバムです。
もともと、どこかイギリスのAll About Eve(オール・アバウト・イヴ)などにも通じそうな、ミステリアスでゴシックな雰囲気を漂わせているCarmenですが、スタジオ盤と違い、バックがロック・バンドではなくオーケストラになったことで、ミステリアスさがより味わい深くなり、よりヨーロッパ的に響きます。こういったアレンジのはまりやすいアーティストだと思うし、実際に成功しているといえるでしょう。
たとえば、ちょっとアラブ風味のまじったようなM1「Per niente stanca」では神秘さがより強調され、M2「Parole di burro」のようなやわらかなポップスでは暖かみがよりふくらみます。
Carmenは、ポップス/カンツォーネ系というよりはロック系のアーティストだと思います。なので、いわゆるカンツォーネ/イタリアン・ポップス的なドラマティックな盛り上がりや緩急にあふれたメロディ展開といったものを持った曲は、あまりありません。
M4「Blunotte」なども、Carmenの曲のなかではドラマティックなほうかと思いますが、それほど盛り上がるメロディ展開ではありません。でも、バックがオーケストラになっただけで、ずいぶんとドラマティックになります。
M5「Geisha」はタイトルどおり、おそらく日本の芸者がテーマの曲なのでしょう。歌詞のなかにも「芸者」という言葉が頻繁に現われ、曲もオリエンタル風味なのですが、ちょっと「日本」の持つオリエンタリズムとは違う感じがします。
アルバム全体に陰影のあるヨーロッパ的な色彩が強く、それをオーケストラがさらに強調しています。ただ、ここにある「ヨーロッパ」は、イタリアというよりはイギリスな感じです。イギリス風なユーロピズムのなかにときおり見え隠れするイタリアンなフレーズがよい感じです。イタリアということにこだわらず、ヨーロッパのクールな女性シンガーとして楽しむほうがよいでしょう。
少しくすんだ感じの低い声は、フェロモン系とは違うセクシーさがあり、なかなか魅力的です。そのへんが女性ファンに受けているのか、このライヴ盤で聞こえてくるオーディエンスの声は圧倒的に女性のものが多いようです。
イタリアン・アーティストのライヴ盤ではよくあることですが、オーディエンスによる大合唱が壮大なコーラスとなって、曲に厚みと広がり、奥行きを加えています。こうした、アーティストのメイン・ヴォーカルを強力にサポートし、スタジオ収録とは違った厚みと力強さを与えるオーディエンスの合唱は、ライヴ・アルバムの大きな魅力です。
Carmenのヴォーカルはクールで、大きく高揚したりといった感情的な落差があまりなく、聞き続けているとちょっと単調に感じてしまうことがあるのですが、M6「L'ultimo bacio」やM8「Confusa e felice」、M11「Amore di plastica」などで聞かれるオーディエンスのコーラスによって、アルバムに起伏が生まれています。それがアクセントになり、聴きやすいものになっていると思います。曲自体はどれも似たようなテンションとテンポのものが続くので、このコーラスがなければ、途中で飽きてしまったかもしれません。