1: DIETRO LA PORTA
2: CANZONI CON IL NASO LUNGO
3: TUTTI QUANTI HANNO BISOGNO
4: NEL GRANDE SPAZIO APERTO
5: INVINCIBILI
6: CHE GRAN CONFUSIONE
7: SEI COME TI VORREI
8: VERRA' IL TEMPO
9: L'AMORE CHE TORNERA'
穏やかなオーケストラをバックにした、感傷的で美しい曲からこのアルバムは始まる。
クリスティアーノ・デ・アンドレは、1970年代からいまも活動を続ける有名なカンタウトーレのファブリツィオ・デ・アンドレ(Fabrizio de Andre')を父親にもつカンタウトーレ。ファブリツィオは、残念ながら自分はPFMと共演した2枚のライヴ盤しか聴いたことがないが、地味ながらも力強さを感じさせる唄が印象的なアーティストだ。
このアルバムは、クリスティアーノの2枚目のアルバムらしい。
未聴ではあるが、デヴュー・アルバムではマウロ・パガーニ(Mauro Pagani)やヴィンチェ・テンペラ(Vince Tempera)などともに地中海音楽を披露し、その筋のあいだでは好評であったようだ。しかしこのアルバムには、地中海の香りはない。
楽曲のクレジットにはクリスティアーノ以外にも、マウロ・パガーニやエウジェニオ・フィナルディ(Eugenio Finardi)などの名前もみえるが、9曲中6曲に関わっているのはマッシモ・ブボラ(Massimo Bubola)。参加アーティストにはルチオ・ファブリ(Lucio Fabbri)の名前もある。
基本的には都会的な、洗練された優しさを感じさせるアルバムなのだが、曲ごとの印象はけっこうまちまちで、あまり統一感はない。バラードあり、俗っぽいポップスあり、カントリーふうの曲もある。
クリスティアーノ自身にそれほど強い個性があるわけでもないため、曲調の散漫さがそのままアルバムの印象の散漫さにつながっているように思う。
といっても、けして悪いアルバムではない。それぞれの曲はどれもイタリア的な美しさをもっている。
ポップな曲調は、ファブリツィオにくらべるとずいぶんとなじみやすい。バラードでも感情過多になることなく、さらっと唄ってしまう分、聞き手が入り込める余地がある。
アルバムの曲順、とくに1曲目から3曲目までへの流れなどには疑問を感じてしまうが、それなりによくできたポップス・アルバムだと思う。どぎつさやとげとげしさのない、柔らかい音のバックの音とともに、明るく穏やかな、ときにちょっとしたアクシデントに遭遇する、平和な街での生活を思わせる。
派手さはないけれど、どことなく優しい気持ちになれる、そんなアルバム。