CLAUDIO ROCCHI


VIAGGIO (1970年)

   クラウディオ・ロッキ / ヴィアッジォ
    (VINYL MAGIC VM 044 / イタリア盤CD)



rocchi1   1: OEUVRES
  2: LA TUA PRIMA LUNA
  3: NON E VERO
  4: OGNI UOMO
  5: GESU' CRISTO(TU CON LE MANI)
  6: MA QUI
  7: I CAVALLI
  8: ACQUA
  9: 8.1.1951
 10: QUESTO MATTINO
 11: VIAGGIO







 まるで悪夢を見ているかのような、非常に不安定で乱れた感覚に満ちた(なんとなく鈴木光司の小説『リング』にでてくるヴィデオ・テープを思い出してしまった)、ミュージック・コンクレート的な曲で始まるクラウディオ・ロッキの1st アルバム。
 2曲目以降は効果音なども入るとはいえ、基本的にシンプルなギターの弾き語りなので、この1曲目だけはちょっと異色に感じる。

 全体的にサイケデリック・フォーク的な印象はあるが、1曲目のこの混乱はなんだろう。バッド・トリップという言葉が思い浮かぶ(ちなみにアルバム・タイトルの“VIAGGIO”とは“旅行”という意味)。

 暖かく穏やかな印象の曲もあるのだが、どこか繊細で、透明で、すぐにももろく崩れてしまいそうなヴォーカルが、なんとなく不安な感じを与える。さまざまな効果音や土着宗教を思わせるようなコンガの音が、いっそう心をかき乱す。

 非現実感と感覚の乱れ。『神秘(a Saucerful of Secrets)』のころのピンク・フロイド(Pink Floyd)などに近いところもあるように思う。
 さらに5曲目の「Gesu' Cristo」(曲名の意味はイエス・キリスト)などからは、マウロ・ペロシ(Mauro Pelosi)のアルバムで聴かれるような恐怖、絶望も感じる。

 フルート、バイオリン、コンガで、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(Premiata Forneria Marconi。PFM)のマウロ・パガーニ(Mauro Pagani。PFM の1st は1972年発表だから、レコードデヴュー前になるか)が参加している。
 パガーニといえばバイオリン、フルート(このアルバムでの演奏は、2nd のころのスーパートランプ Supertramp を思わせる)は有名だが、このアルバムでの彼のコンガ・プレイは、このアルバムの性格づけに大きな役割をはたしているように思う。

 非常にシンプルでよいアルバムなのだが、根底に流れつづける不安感と錯乱に、聴いているこちらの不安と錯乱が引きずり出されそうで、多少恐ろしくもある。しかしその不安・錯乱を受け入れてしまうと、混じりけのない、落ち着いた気持ちにもなれる。

 非常に好き嫌いが分かれそうな、約45分ほどのマインド・トリップ。

(1998.02.15)








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