produzione: Claudio Rocchi
testi e musiche: Claudio Rocchi
direzione d'orchestra: Franco Orlandini
Claudio Rocchi(クライディオ・ロッキ)というと、どうしても初期のころの、サイケデリックで、幻想的で、ちょっと呪術的・神秘的な印象を持った曲を思い浮かべてしまうのだけど、このアルバムにはそういった印象が希薄です。ほんの少しだけ代表曲「Volo magico」を感じさせるような東洋的神秘ふうの音もなくはないのですが、それが音楽のなかでうまく消化されているかというと、そうではない感じです。そんなこともあって、このころ(というか、初期以外)の作品って、あまり評価が高くないのでしょう。
実際、初期のころの濃密な音楽を知っていると、このアルバムで聴かれる音楽はかなり薄いし、ある意味で「普通」です。でも、だからといって悪い作品かというと決してそんなことはなく、あくまでも「Claudio Rocchiの作品としては」という条件がついたうえでの「普通」です。
いわゆる叙情系のカンタウトーレ作品としては充分以上のクオリティがあります。いくぶん神経質なヴォーカルはここでもPeter Hamill(ピーター・ハミル)を思わすような独特の存在感と個性がありますし、ほどよくシンフォニックな演奏も、いかにもプログレッシヴ・カンタウトーレといった感じです。
初期のころのような剥き出しの感性というか、剥き出しになってしまう感性の強さといったものは弱まり、その弱まった分を演奏その他でカバーしているような、そのためClaudioらしい感性がちょっとオブラートに包まれているような、そんな印象は受けます。でもそれが逆に、初期のころのアクの強さ、個性の強さを薄めていて、ある意味で「聴きやすさ」になっているように思います。なかなかにドラマティックで、ほどよく哀愁もあり、奥行きや深みも感じさせてくれる作品だと思います。
初期の作品を知らずに、あるいはClaudio Rocchiという先入観を持たずに聴いたほうが、そのよさに気づきやすいアルバムかもしれません。