1: KUMBALAWE'
2: BAROCK
3: KAZE'
4: AMAZONIA
5: NORWEG
6: URGENCE
7: POKINOI
8: SALTIMBANCO
9: IL SOGNO DI VOLARE
10: HORERE UKUNDE
11: RIDEAU
musique de RENE DUPERE
realisation de LUC GILBERT
arrangements de RENE DUPERE
programmation: Rene Dupere, Luc Gilbert
batterie: Dominique Messier, Alain Berge'
basse: Marc Langis, Peter Kisilenko
guitare: Roberto Stanley
saxophones: Jean-Pierre Zanella, Richard Beaudet
percussions: Paul Picard, Ibrahima Gueye, Dominique Messier
violin: Andre' Proulx
voix principale: Francine Poitras,
voix: Rene Bazinet
20世紀最後の年に、4年ぶりに「太陽のサーカス」が来日しました。
1992年に『Facination』、94年に『Saltimbanco』、96年に『Alegria』と、1年おきに来日していた彼ら。残念ながら初来日の公演は見られなかった自分ですが、その後の2回の公演では、その素晴らしいステージに完全に魅了され、以後も来日を楽しみにしていました。次は当然、98年に来日するだろうと予想していたのになぜか来ず、もう日本には来ないのかと、ずいぶん残念に思っていました。
なので4年ぶりとなる来日は、発表があったときからワクワクです。それに演目が、自分がはじめて彼らのステージに触れた『Saltimbanco』の新アレンジですから、めちゃめちゃ楽しみです。
フランス語で「太陽のサーカス」を意味するCirque du Soleil(シルク・デュ・ソレイユ)は、一言でいえばサーカス集団です。サーカスだから当然、綱渡りやアクロバットといった曲芸的なことをやります。
ただ、彼らがいわゆるサーカス一座と違うところは、それをパフォーマンス・アートにまで高めたことでしょう。
Cirque du Soleilのステージには、像や犬などの動物は登場しません。すべての演目を人間のみで行ないます。鍛え上げられた人間の肉体と磨き抜かれた技術で、複雑かつダイナミックなアクションを見事に演じきります。
また、ステージで繰り広げられるそれぞれの出し物は、ただ順番に披露されているわけではありません。それぞれの公演がテーマを持ち、そのテーマに沿って出し物が組み立てられ、トータルでひとつの物語が完成するようにステージングが考えられているのです。
その点が、いわゆる見世物であるサーカスや、あるいは曲芸大会である雑技団との違いでしょう。
サーカス的なアクションを十二分にこなしながらも、全体のステージをテーマを持ったトータル・アートとして表現する彼らですから当然、舞台のセットも、そして音楽も、それぞれのステージごとに、テーマに合わせて自分たちでつくります。いわば、サーカスにおけるオペラのようなものといっていいのではないでしょうか。
オペラが、舞台を見ないで音楽だけでも充分に楽しめるのと同様、トータル・パフォーマンス・アートであるCurque du Soleilの作品も、音楽だけを聴いても充分に楽しめるクオリティを備えています。
彼らの音楽を担当するRene Dupere(レネ・デュペレ)によりつくりあげられた『Saltimbanco』の音楽は、アフリカのサバンナに沈む太陽を眺めているような「Kumbalawe」から始まります。
Saltimbancoというのは古いイタリアの言葉で「大道芸」を意味するそうですが、音楽からは中世ヨーロッパの大道芸的な興奮と哀愁、そしていかがわしさといったものは感じられません。その代わり、ヨーロッパから中近東へかけて旅をする大道芸人たちがそれぞれの地で眺めたであろう沈む夕日や、生きていることへの感謝、仲間たちに対する愛情といったものが、音楽のなかに織り込まれているような気がします。
ギターがメインとなったフュージョン風のインスト曲は多少、イージーな感じが強くありますが、Francine Poitras(フランシーネ・ポワトラ)による、どこの国の言葉でもない言葉で歌われる曲は、広大な母なる大地を慈しむ敬虔な人々の想いが風に乗って聴こえてくるような、そんな情景が浮かびます。
Cirque du Soleilは音楽、舞台セット、そして人間による演技が一体となったパフォーマンス・アートを追求する集団なので、生のステージを見るのがもっとも楽しめるのは当然です。でも、音楽は音楽として、どこの国でもないけれどすべての国である一種のワールド・ミュージックとして、高いクオリティを持っています。
パフォーマーとして、そしてアーティストとして優れた集団の感性の一端に、自宅で手軽に触れられる作品です。