1: AVVISO AI NAVIGANTI
2: PASSO LENTO
3: L'ERA DEI REPLICANTI
4: PORTO SANTO
5: NEL REGNO DEL LONTANO
6: CERCANDO NICK
7: LA TERRA VISTA DALLA LUNA
8: FRANCESCA E LA COLLINA
9: IL SOLE C'E
10: I SOGNI NON MUOIONO MAI
11: ANTARES
フルネームはマリアーノ・デイッダ(Mariano Deidda)というらしい。これ以外にもアルバムがあるのか、わからない。インターネットで検索したのだけれど、ぜんぜんヒットしなかった。
イタリアに多い、ちょっとしわがれた声を持つカンタウトーレだけど、熱唱タイプではない。どちらかというと、さりげない唄い方をする人。
アルバム1曲目、2曲目ではアコーディオンが効果的に使われていて、どことなく放浪の民の音楽を思わすような、もの哀しい響きに心を引かれる。一般的なイタリアの哀愁とはまた違った、切なさを感じる。イタリアというより、ポルトガルとかの音楽のほうが、感じが近いのかもしれない。
しかし、アコーディオンの音って、静かながらも深い趣があって、非常にいい。この2曲以外にも、ときどき現われてはアルバムのアクセントになっている。
全編が哀愁路線かというと、そんなことはない。たぶん、プロデューサーのヴィンチェ・テンペラ(Vince Tempera)の力によるところが大きいのだろうけれど、非常に奥行きのある、大きな愛情を感じさせるような印象の曲も多い。
たとえば、広大なサバンナの地平線に沈みゆく大きな太陽を眺めているような、そんな映像が浮かんでくる。もちろん、音楽がアフリカ的というわけではなく、大地の持つ懐の広さ、暖かさ、長大な時間を感じられるというか、そういう映像が似合う。
デイッダは、全体を通して、力を込めた熱唱を聴かせることはなく、さりげない、抑えた唄い方をしているが、それでいて存在感・説得力がある。
なんていうか、いわゆる流行歌としての「ポップス」とは違った奥深さ・大きな心があるように思う。
アルバムを通しての曲のカラーという点では、多少ばらつきがある。オープニングとエンディングでは、まったく違うアルバムなように感じてしまうかもしれない。
とくに2曲目から3曲目、4曲目あたりへの変化が多少、唐突な感じがするが、4曲目以降の流れが美しいため、そこから先は安心して聴けるだろう。
ちなみに最後の曲はインストゥルメンタル。大地や自然をテーマにした映像のバックにぜひ使いたいと思うような曲。
それぞれの曲についていうと、哀愁という点では、やはり1曲目、2曲目が傑出している。逆にいえば、これらの曲だけ他と印象が違い、アルバム内では浮いている。
とはいえ、このアルバム内からシングルをつくるとしたら、やはりこれらの曲になるのだろう。
けれど、このアルバムのよさは、4曲目以降の流れにあると思う。
それぞれを取り出して聴くと、いまひとつ地味に感じてしまうだろうが、全体のなかのパートとして、あるいはひとつのアルバムがつくるストーリーの一部として聴くと、これらがみな、生きてくる。
小さな時間軸・空間軸のなかを表現する音楽ではなく、もっと大きなもの、厚みも深さもある世界を表現する。それもさりげなく。そして、非常に映像的。
流行りものの音楽やダンス・ミュージックしか聴かないような耳には、さしたる印象も与えないアルバムだろう。だけど、とってもいいアルバムだと自分は思う。
いわゆるイタリアン・ポップスやロックとはちょっと印象が違うかもしれないが、こういう音楽を愛せる人が、自分は好き。そして、いつまでもこういう音楽を愛せる自分でありたいと思う。