ENZO CAPUANO


STORIA MAI SCRITTA (1975年)

   エンツォ・カプアーノ / ストーリア・ミア・スクリッタ
    (MELLOW RECORDS MMP 286 / イタリア盤CD)



capuano1.gif  Parte I: IN FORMA DI VITA
 Parte II: LA NUOVA STAGIONE
 Parte III: VOLO NELLA NOTTE
 Parte IV: RISVEGLIO
 Parte V: DAL TEMPO VISSUTO
 Parte VI: LA NATURA DENTRO
 Parte VII: MEMORIA
 Parte VIII: IL BUIO







 エンツォ・カプアーノ(Enzo Capuano)はギターとシンセサイザー、唄を担当しています。もちろん彼のリーダー・アルバムなのですが、作品全体の印象を支配しているのは、各種の鍵盤楽器を担当しているマリオ・パンセーリ(Mario Panseri)でしょう。
 というのは、ヴォーカリストのアルバムでありながら、ヴォーカル・パートがほとんどないんです。

 それぞれの曲が「Parte I 〜 Parte VIII」となっているところを見ると、たぶんトータル・コンセプト・アルバムなのでしょう。アルバム・タイトルは「いままで書かれたことのない物語」というような意味でしょうか。
 「生命のかたち」「新しい季節」「夜の飛翔」「目覚め」「生きている時間」「自然の中に」「記憶」「暗黒」というそれぞれの曲のタイトル(訳に自信はありません)からすると、人間の一生がテーマなのかもしれません。

 アコースティック・ギターと各種キーボードを中心とした、繊細で透明感のある曲が展開されます。といっても明るくさわやかなものではなく、どことなく張り詰めた感のある、深く沈み込むような悲しさが根底に流れています。
 アルバムの最初と最後で聴かれるヴォーカルも、重く、落ち着いた声で歌われます。ほんの少ししかないヴォーカル・パートですが、非常に印象的で、存在感があります。

 このアルバムを評価し楽しめるのは、やはりプログレ・ファンの一部なのでしょう。非常に地味で、キャッチーなメロディやテクニカルな演奏などとは無縁ですが、心の奥底に忍び込むような、なんともいえないパワーを持った作品だと思います。
 落ち着いた空気のなかで、自分の心を見つめながら聴くと、何かが見つかるのかもしれません。

(1998.11.23)








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