1980年代以降の曲を集めたベスト盤です。タイトルからもわかるように、『La forza dell'amore』というベスト盤(だと思います)の続編のようです。
自分はこれまで、Eugenio Finardi(エウジェニオ・フィナルディ)のアルバムは1976年にリリースされた『Sugo』しか聴いたことがなく、その印象から、どちらかというと硬派でアーティスティックな、ちょっととっつきにくいカンタウトーレと感じていました。しかし、このベスト盤を聴くと、意外とやわらかで美しいメロディを持っていて、それほどとっつきにくい感じはありません。
このやわらかさが80年代以降のものなのか、それとも70年代からそういった部分はあったけれど『Sugo』にはたまたま少なかっただけなのかは、わかりません。思えば『Sugo』は、ちょっとばかし前衛的な音楽思想を持った作品を紹介していたCrampsレーベルからのリリースでしたし、バックの演奏にもアヴァンギャルドなジャズ色の強いプログレッシヴ・ロックを演奏するArea(アレア)が参加しているしと、少し特殊な要素の集合体だったのかもしれません。
このベスト盤で聴ける曲には、『Sugo』にあったような高い密度と芸術性ゆえの馴染みにくさはありませんが、気難しい頑固オヤジ風のヴォーカルは健在です。演奏面でも、端々にアーティスティックな感性がうかがえます。
ベスト盤という性格上、CD全体としての求心力、作品性を求めるのは無理ですが、比較的多様なアレンジの曲が収録されているので、彼の音楽を総体的に知るためのサンプルとしては、なかなかよいのではないかと思います。ただ、それにしても寄せ集め的な印象が強く、全体を通しての流れや構成に工夫が感じられないため、聴いていて途中で飽きてしまいました。
なお、Lucio Battisti(ルーチォ・バッティスティ)の初期の名曲「I giardini di Marzo」(1972年のアルバム『Umanamente uomo:il sogno』に収録)をカバーしていますが、感傷的で、どことなくはかなくて、壊れてしまいそうな美しさのあったLucioの歌にくらべると、Eugenioの歌は力強すぎて、この曲にはあまり合わないように思います。
それと、M9の「Musica Desideria」にコーラスとしてLaura Valente(ラウラ・ヴァレンテ)という人が参加していますが、Matia Bazar(マティア・バザール)2代目歌姫の、あのLauraでしょうか?