direzione artistica, arrangiamenti, programazzione ProTools di FABIO MORETTI
produzione esecutiva di FRANCESCA VECCHIONI
ちょっと印象的なアコースティック・ギターのイントロを持った「La luna e i falo'」で始まるEnrico Nascimbeni(エンリコ・ナシンベーニ)のアルバム。スッキリとした音色の近代的なポップスに好感が持てます。さわやかななかにほんのりとした哀愁があり、やわらかな明るさも感じます。
続くM2「Ciao chapachas」ではガット・ギターとアコーディオンが導入され、ヨーロッパらしい哀愁がより強調されますが、現代的なはっきりした輪郭は失われません。
収録されている曲はどれも、なんということのない曲ばかりなのですが、なんとなく「よい感じ」に聴こえるのは、ほどよく深みとやさしさのある少しひび割れたEnricoの声のせいでもあるのでしょう。それに、こじんまりとはしているものの、どこか人懐こくて好感の持てるメロディやフレーズが多いこともあるでしょう。アレンジも、派手ではないけれど清涼感や哀愁、軽やかさといったものがバランスよく配されていて、陰影の濃いイタリアの街並みを思い起こさせます。
M4「La canzone che un giorno sentirai」はストリングスを導入したバラードですが、語り風のヴォーカルがいかにもカンタウトーレといった感じです。もっとドラマティックに構成・展開してもよかったように思いますが、そうしないところが1970年代や80年代との違いなのでしょう。
一方、M7「Inizia un altro viaggio」はディストーション・ギターによるロックっぽいイントロで曲が始まりますが、こういったアプローチはあまりEnricoのよさを出せないような気がします。ヴォーカル・パートになるとアコースティック・ロック風になるのですが、それが余計にイントロ、ソロ、エンディングのエレキ・パートを取ってつけたような感じに思わせ、軽薄っぽいというか、安っぽい印象を与えてしまいます。
M8「Sara' per te」はM4とは少し違った感じの、夕暮れ時を思わせるようなロマンティックなバラード。ここでもガット・ギターのやわらかな音色がやさしい空気を醸し出しています。どことなくRenato Zero(レナート・ゼロ)の「Il cielo」を思い出させるようなメロディに、木管楽器をシミュレートした(?)シンセサイザーのカウンターメロディが哀愁を漂わせます。
アルバムにはポップな曲、リズミックな曲、スローな曲といろいろありますが、どの曲にもやさしさと暖かさを感じます。派手なところはありませんが、好感の持てるアルバムだと思います。
なお、M3「Amore disordinato」ではFrancesco Baccini(フランチェスコ・バッチーニ)が曲づくりに協力し、ヴォーカルでも参加しています。M11「L'ultima notte di un vecchio sporcaccione」ではRoberto Vecchioni(ロベルト・ヴェッキオーニ)がヴォーカルで参加しています。
またM6「La casa dove non vive nessuno」はTom Waits(トム・ウェイツ)の曲にEnricoがイタリア語の歌詞をつけたものだそうです。