2003年のサンレモ音楽祭参加曲「Primavera a Sarajevo」を含んだアルバム。そのサンレモ曲もそうでしたが、全体にどこか懐かしい感じの、グッド・オールド・タイムのイタリアを思わせる曲が多く収録されています。
アコーディオンなどが導入され、古いナポレターナの味わいを漂わせるM1「Gli occhi del musicista」など、最近の曲にはあまりない、いい感じです。
暖かみのあるしわがれ声が気持ちよく響くM2「Moriro' d'amore」はスロー・バラードで、やわらかく美しいメロディが楽しめます。
M3「La preghiera del matto」はちょっといなたい感じのブルーズ・フォークで、Massimo Bubola(マッシモ・ブボラ)などに感じが似ているかもしれません。
M4「A un passo delle nuvole」ではストリングスやミュートをつけたホーンも導入されたスローな曲で、穏やかで素朴なメロディは初期のころのFabrizio De Andre'(ファブリツィオ・デ・アンドレ)を思い出しました。
M5「Lunga e' la notte」はフィドルとアコーディオンの入ったカントリー風。ひなびた感じの女性コーラスも、Enricoのしわがれ声も、曲調によくマッチしています。
ぶんちゃっぶんちゃっというリズムが楽しいM6「Il matrimonio di Maria」は、昭和初期のころ(?)のカフェやキャバレーの音楽を思わせます。ほどよいジャズ風味もノスタルジック。
M7「Turnover」はあやしげなバーでかかっていそうなロックで、このアルバムのなかでは少し異色かもしれません。なにか裏のありそうな、重たくブルージーな響きを持っています。
M8「La confessione」ではまた、カントリー風味を持ったフォークに戻ります。アコーディオンやバンジョーだけでなくスライド・ギターも導入され、軽やかな演奏が楽しめます。
M9「Fuori piove」はミュート・ホーンにウッド・ベース、ブラシを使ったドラムに生ピアノと、ジャズ色の強い演奏が聞けます。落ち着いた大人のジャズ・バラードといった感じです。
M10「Uccidimi」はスローなロック・バラード。ディストーションのかかったエレキ・ギターのストロークが重く響きます。重厚な感じが強いですが、サビではそこはかとなくか弱さを感じてしまうのはなぜでしょう。
M11「La spina」は、スチャスチャと裏表紙を刻むストロークが小気味いいです。軽やかで明るいのだけど、アコーディオンの奏でるメロディはなんか怪しげな雰囲気を持っています。
M12「Andiamo」はイタリアらしいスローなバラード。Umberto Bindi(ウンベルト・ビンディ)とかGino Paoli(ジーノ・パオリ)とかの時代の曲に近い感じがします。
M13「Nessuno tocchi Caino」もスローな曲ですが、こちらは女性ヴォーカルとのデュエットになっています。やはり古い時代のよきイタリアン・ポップス/カンツォーネといった感じで、メロディのよさが際立っています。イントロ/アウトロで奏でられるアコーディオンのフレーズも印象的です。
M14「Primavera a Sarajevo」は2003年のサンレモ参加曲。東欧と南欧のひなびた感じをあわせ持ったような、ちょっと独特な雰囲気のある曲です。サンレモでの評価はあまり芳しくなかったようですが、個人的には、この年のサンレモ参加曲のなかではかなり気に入っています。
最後を締めるM15「I naviganti」は、スチャスチャ・リズムとユーモラスなアコーディオンのストローク、フィドルの陽気な感じが混じり合い、独特な楽しさにあふれています。そんななかに時折そっと顔を出す哀愁味もよいアクセントになっています。