1: PRINCESA
2: KHORAKHANE' a forza di essere vento
3: ANIME SALVE
4: DOLCENERA
5: LE ACCIUGHE FANNO IL PALLONE
6: DISAMISTADE
7: A CU'MBA
8: HO VISTO NINA OLARE
9: SMISURATA PREGHIERA
1997年に出たアルバム『M'INNAMORAVO DI TUTTO』は、たしかベスト盤だったように思います。この記憶が確かだとすると、今回紹介する『Anime Salve』が、生前に彼が残した最後のオリジナル・アルバムということになります。
ジェノヴァが生んだ偉大なカンタウトーレ、ファブリツィオ・デ・アンドレ。自分はこのアルバムのほかには、イタリア最高のロック・グループのひとつ、PFM(Premiata Forneria Marconi)がバックを務めた2枚のライヴ盤しか聴いたことがありません。そのライヴ盤では、PFMの好サポートもあり、適度にメリハリのある聴きやすいものになっていました。
このアルバムには、PFMとのライヴ盤で聴けたような、いわばロック風のアレンジはありません。非常に素朴であたたかい、古くからその土地に住む人たちのあいだで歌い継がれてきたかのような、純粋な音楽が聴かれます。ジャケット写真そのままの、セピア色の世界が目の前に広がります。
古い映画を見ているような、優しくゆっくりとした時間のなかに流れる、たおやかなオーケストラの調べ。民族の物語を唄とともに運ぶ語り部。貧しくも慈愛に満ちた小さな町。現代の喧騒とは無縁な世界です。
イタリアン・ポップスというよりは、やはりカンタウトーレの音楽。民族音楽的な印象も強く、商業主義からは遠く離れた、魂の旋律。非常にアーティスティックであり、ロマンティックであり、生活することの喜びと哀しみがあり、心の奥深くに持ち続けていたい感情があります。
数曲で聴かれるドリ・ゲッツィ(Dori Ghezzi)という女性の哀愁あふれるトラッド・ヴォーカルは聴きどころのひとつでしょう。とくに「Khorakhane」の後半で聴かれる部分などは、ヨーロッパらしい情感に満ちています。
そう、このアルバムで聴かれるのは、イタリアという国だけでなく、広くヨーロッパに古から伝わる音という感じがするんです。
曲のクレジットはファブリツィオとイヴァーノ・フォッサーティ(Ivano Fossati)の共作となっています。イヴァーノ自身も「Anime Salve」と「A Cu'mba」にヴォーカルで参加しています。
また、ファブリツィオの息子のクリスティアーノ・デ・アンドレ(Cristiano De Andre')が「Le Acciughe Fanno Il Pallone」にギターとアレンジで、PFMのフランコ・ムッシーダ(Franco Mussida)が「Smisurata Preghiera」にギターで参加しています。鍵盤楽器とオーケストラのアレンジ等を担当しているピエロ・ミレージ(Piero Milesi)という人は、どこかで名前を聞いたことがある(ソロ・アルバムを出しているかもしれない)気がするのですが、思い出せません。
疲れて傷ついた魂の帰るところが見つからないようなとき、このアルバムは、きっとあなたを迎え入れてくれます。小さな幸せをともに喜び、いいようのない哀しみを黙って受け止め、そっと抱きしめてくれる、そんな暖かさと慈しみを持ったアルバムです。