1: RESPIRO
2: CARA DROGA
3: AL TRAMONTO
4: TI SENTO
5: IL VECCHIO DEL CAARROZZONE
6: DUBBI
7: LONTANI
8: OGNI GIORNO NUOVO (e' un giorno mio)
9: POETA, FORSE
10: IO CHE AMO SOLO TE
1970年代なかばからいまも活動を続けるFranco Simone(フランコ・シモーネ)。20年以上たってもその作風は、基本的には変化がないようです。
本作は1977年にリリースされ、アルバム・タイトル曲の「Respiro」(「休息」という意味でしょうか)は当時ヒットしたのか、70年代イタリアン・ポップスのベスト盤などにもよく収録されているようです。また、いろいろなアーティストの曲をカバーし、ピアノのバックのみで歌った1996年のアルバム『Vocepiano』でセルフ・カバーをしているところを見ると、本人にとっても思い入れの深い曲なのでしょう。
いまも変わらない彼の作風は、一言でいえばセンチメンタル。歌メロは繊細な優しさと美しさを持ち、それをサポートするやわらかなピアノの響き、おだやかなオーケストラが曲の持つ味わいを高めていますが、派手な展開や緩急の落差はありません。
そろそろと心に染み込んでくるような、そんな音楽です。
少し神経質そうで、そのうちに泣き出すのではないかと思わせるような、わずかな震えを持ったヴォーカルも、瞬発力や優れた歌唱力といったものはありませんが、とても哀愁度が高いものです。
この歌声は彼の大きな魅力であり、武器でもあります。いつのまにか心の片隅に溶け込んでしまうような、そんな歌声です。
全体に哀愁度が高いのですが、そのいちばんの要素は、彼の声と歌い方にあるのでしょう。もちろん、歌メロ自体にも哀愁味のある美しいものが多いのですが、けっしてそれだけというわけではなく、ポップでリズミックなものもあります。
演奏についても、オーケストラの使用率は高いですが、ことさら哀愁を強調するようなアレンジが全体に施されているわけではありません。「Respiro」などの哀愁バラードではいくぶん、ちからの入ったドラマティック・アレンジを聴かせますが、他の曲では比較的おだやかに、抑えめに音の隙間を埋めているといった程度です。いかにもポップス的、歌謡曲的なアレンジもあります。
しかし、そういったアレンジ・ヴァリエーションがありながらも、Franco Simoneの作品としての統一感、求心力を感じるのは、やはり彼の歌そのものに、ちからがあるからでしょう。ここでいう「ちから」とは、いわゆる声量や激しさ、熱さといった、動的なパワーではありません。おだやかで、表面的にはあまり動きがなくても、人を魅了せずにいられないなにかといった、静的なパワーです。
シンガーにとって、動的であれ静的であれ、自分ならではのちからを持っているかどうかは、非常に重要です。その意味で、Francoは優れたシンガーということができるでしょう。
明るい感じの曲も多いにもかかわらず、トータルとしての印象が「哀愁」であるところに、叙情派カンタウトーレとしてのFrancoの本質が感じられます。