GERARD MANSET


LA MORT D'ORION (1970年)

   ジェラール・マンセ / ラ・モール・ドリオン
    (EMI MUSIC FRANCE 7243 854 686 2 / フランス盤CD)



jacket photo  1: LA MORT D'ORION
 2: VIVENT LES HOMMES
 3: ILS
 4: LE PARADIS TERRESTRE
 5: ELEGIE FUNEBRE


textes, paroles, musique, orchestrations et remasterisation digitale;
GERARD MANSET

avec les voix de;
ANNE VANDERLOVE et GIANI ESPOSITO







 真っ黒なバックにアーティスト名とアルバム・タイトルが黄文字で記された、シンプルなジャケットに包まれたこのアルバムは、「オリオンの死」というタイトルから得られるイメージそのままに、不安で地の底に潜っていくようなダウンな空気に満ちています。

 Gerard Manset(ジェラール・マンセ)についてはよく知らないのですが、このアルバム以外にも何枚かのアルバムをリリースしているフランスのシャンソニエ(シンガー・ソングライター)のようです。
 なかでも初期の作品にはプログレッシヴな空気が強いらしく、マーキームーン社発行のフレンチ・プログレッシヴ・カタログ『フレンチ・ロック集成』にも、このアルバムを含め4枚が紹介されています。

 本作では漆黒の闇を感じさせるオーケストラがふんだんに導入され、随所でソプラノ・ヴォーカルも入り、時折イタリアのOpus Avantra(オパス・アヴァントラ)を思わせます。また、不安な情景が強く感じられるところは、Jacura(ヤクラ)やDevil Doll(デヴィル・ドール)などにも共通点があるかもしれません。
 しかし、こういったイタリアのグループが持つ、「不安」や「美しさ」のなかにある「力強さ」が、このアルバムにはありません。はかなげで、繊細で、ずっと下向きなこの感じは、たとえばMauro Pelosi(マウロ・ペロージ)などのほうが近いかもしれません。

 語り風なヴォーカルは、いかにもフレンチ・プログレッシヴ的で、シアトリカルな要素にあふれています。
 フランスでシアトリカル・ヴォーカルといえば、有名なのはやはりAnge(アンジュ)でしょうが、素朴でシンプルさが感じられるこの作品は、どちらかといえばMona Lisa(モナ・リサ)に近いと思います。

 フレンチをはじめとしたユーロ・ポップスのファンではなく、明らかにプログレッシヴ・ロックのファンが聴くべきアルバムでしょう。あるいは、John Cale(ジョン・ケール)とともにつむぎだされたNico(ニコ)の音楽が好きな人なども、この音世界に身を横たえ、安息を得られるかもしれません。

(2000.10.15)








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