1: LA MORT D'ORION
2: VIVENT LES HOMMES
3: ILS
4: LE PARADIS TERRESTRE
5: ELEGIE FUNEBRE
textes, paroles, musique, orchestrations et remasterisation digitale;
GERARD MANSET
avec les voix de;
ANNE VANDERLOVE et GIANI ESPOSITO
真っ黒なバックにアーティスト名とアルバム・タイトルが黄文字で記された、シンプルなジャケットに包まれたこのアルバムは、「オリオンの死」というタイトルから得られるイメージそのままに、不安で地の底に潜っていくようなダウンな空気に満ちています。
Gerard Manset(ジェラール・マンセ)についてはよく知らないのですが、このアルバム以外にも何枚かのアルバムをリリースしているフランスのシャンソニエ(シンガー・ソングライター)のようです。
なかでも初期の作品にはプログレッシヴな空気が強いらしく、マーキームーン社発行のフレンチ・プログレッシヴ・カタログ『フレンチ・ロック集成』にも、このアルバムを含め4枚が紹介されています。
本作では漆黒の闇を感じさせるオーケストラがふんだんに導入され、随所でソプラノ・ヴォーカルも入り、時折イタリアのOpus Avantra(オパス・アヴァントラ)を思わせます。また、不安な情景が強く感じられるところは、Jacura(ヤクラ)やDevil Doll(デヴィル・ドール)などにも共通点があるかもしれません。
しかし、こういったイタリアのグループが持つ、「不安」や「美しさ」のなかにある「力強さ」が、このアルバムにはありません。はかなげで、繊細で、ずっと下向きなこの感じは、たとえばMauro Pelosi(マウロ・ペロージ)などのほうが近いかもしれません。
語り風なヴォーカルは、いかにもフレンチ・プログレッシヴ的で、シアトリカルな要素にあふれています。
フランスでシアトリカル・ヴォーカルといえば、有名なのはやはりAnge(アンジュ)でしょうが、素朴でシンプルさが感じられるこの作品は、どちらかといえばMona Lisa(モナ・リサ)に近いと思います。
フレンチをはじめとしたユーロ・ポップスのファンではなく、明らかにプログレッシヴ・ロックのファンが聴くべきアルバムでしょう。あるいは、John Cale(ジョン・ケール)とともにつむぎだされたNico(ニコ)の音楽が好きな人なども、この音世界に身を横たえ、安息を得られるかもしれません。