TAI PHONG


WINDOWS (1976年)

   タイ・フォン
    (WEA FILIPACCHI MUSIC 56 264 / フランス盤LP)




taiphong1.jpg   1: WHEN IT'S THE SEASON
  2: GAMES
  3: ST JOHN'S AVENUE
  4: CIRCLE
  5: LAST CHANCE
  6: THE GULF OF KNOWLEDGE







 フランスのプログレバンドといえばみんなはどんなグループがうかぶのだろう? やっぱり筆頭は ANGE、あとは ATOLL、MAGMA、PULSER あたりが一般的なんだろうか。

 MAGMA は別として、ヴォーカルパートのあるフランスのバンドには大まかに2つのタイプがある。ひとつは ATOLL や PULSER などの「あまりフランス語がまとわりついてこない」タイプ、もうひとつは ANGE や MONA LISA などの「どうだ! これがフランス語だ!!」というタイプ。Tai Phong はまちがいなく前者。

 キング・レコードのユーロ・ロック・コレクションからユーロの道にすすんだ自分には、フランスといったら ATOLL、PULSER だった。ANGE や MONA LISA を知ったのはもっとあと。
 いまではこれらフランスのグループも大好きだが、イタリアもの、とくに IL BALLETTO DI BRONZO の『YS』からユーロの道に入った当時の自分には、これらフランスものはあまりにも耳触りがよすぎた。もちろん美しいしそれなりの情感もあるのだが、どこか気取った、心に引っかかってこない感じがし、またフランスのグループの音の紹介に「ジャズっぽい」といったものが多かったこともあり、シンフォ系を中心にコレクションしていた自分の心のなかで、以後フランスのグループが迫害される(^^;)日々が続いた。

 ひととおりイタリアものを聴いたのち、つぎに入手しやすかったのがフランスものだった。そして何気なく手にとったのが Tai Phong の1st だった。

 Tai Phong の曲には、他のフランスのグループにはあまりみられない人懐っこさがある。けっして演奏力は高くないし、歌だってうまくない。歌詞が英語のせいもあるかもしれないが、あまりフランスを感じさせない。主要なメンバーがアジア系のせいだろうか。

 正直いって、Tai Phong の曲は、楽曲としてもけっして完成度の高いものではないだろう。ATOLL や ANGE などとは比較にならないくらい素人臭い。
 でも、だからこそ、フランスにアレルギーを感じていた自分にはよかったのだろう。以後、フランスものも手を出してみようかな、という気にさせたグループとして、自分のなかでのステータスは高い。このグループに出会わなかったなら PULSER の『HALLOWEEN』にも出会っていなかったかもしれない。

 『Windows』は Tai Phong の2nd アルバム。一般的には3枚ある彼らのアルバムのなかでの最高作とされている。
 相変わらずのヴォーカル、ギターに込められた哀愁がすばらしい。全体をとおしてのばらつきがなくなり、アルバム1枚のどこをとっても Tai Phong な哀愁が感じられる。残念ながら3rd は未聴なのだが、1st よりかは間違いなくアルバムとしての完成度は高いだろう。

 だが、1曲ごとをみると、1st の“SISTER JANE”ほどの哀愁をもった曲、B面のような悲しみを感じさせる大曲がないことが少し残念である。アルバム全体が比較的均一な哀愁に包まれた反面、哀愁の度合いが高い曲、低い曲といった差があまりなくなってしまったように感じる。
 そういった面で、フランスっぽい「どこか気取った感じ」が自分には多少感じられる。もし先にこのアルバムから聴いていたら、Tai Phong に対する評価もいまより低かったかもしれない。

 アルバム1枚をとおして聴くならこのアルバムだが、お気に入りのフレンチ・ロックでオムニバスをつくるとしたら1st からの曲を入れてしまうんだろうなぁ。

(1996)








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