1: MAGGIO
5月
2: UNA BAMBINA... UNA DONNA
一人の少女…一人の淑女
3: ERA BELLO INSIEME A TE
美しい日々
4: PAESAGGIO
景観
5: VOLO D'ANGELO
天使の飛行
6: PADRE VINCENZO
父ヴィンチェンツォ
7: DENISE
デニーズ
8: L'ALBA DI DOMANI
新世代の夜明け
9: SA DANZA
あの踊り
10: MESSAGIO
メッセージ
produzione: C.PAOLINI e R.CARDIA
これまでに多くのイタリアン・プログレッシヴを聴いてきましたが、そのなかでもGruppo 2001(グルッポ・ドゥエミッラウーノ)の唯一のアルバムであるこの『L'alba di domani』は、自分のなかでは常に好きなアルバムの上位にいます。
いわゆる「プログレッシヴ・ロック」のアルバムとして聴くなら、演奏力の面でも楽曲の構成力の面でも、ほかにもっと優れた作品はたくさんあります。しかしGruppo 2001には、それを補って余りある「唄心」が、ヴォーカルにはもちろん、楽器の演奏や楽曲の構成にまであふれているのです。
イタリアン・プログレッシヴのファンのあいだでは、しばしば「カンタウトーレ的だ」といわれるGruppo 2001ですが、彼らの魅力はまさに、その「カンタウトーレ的」なところにあります。
かといって、いわゆる歌ものやカンタウトーレの一般的なファンが聴くにはプログレッシヴ・ロック的であり、そのへんのどっちつかずさが、ストレートなプログレッシヴ・ファンとストレートなカンタウトーレ・ファンのどちらにも素直にアピールしにくいのかもしれません。その点で多少、マニアックな作品だとはいえるでしょう。
同時にそのマニアックさが、イタリアらしい唄心とプログレッシヴ・ロック的なドラマティックさが好きな自分を虜にするところでもあります。実際、カンタウトーレ・テイストのプログレッシヴ作品と考えれば、非常にキャラクターのハッキリしたよい作品だと思います。
アコースティック・ピアノとエレクトリック・ギター、それにフルートによる、攻撃的で畳み掛けるようなイントロによる幕開けは、スリリングかつ構築美にあふれる展開を予想させます。ところがヴォーカルが入ると一転、柔らかい空気に包まれたカンタウトーレ作品になります。
いくぶん重さと湿り気を持ったスローパートと唄心あふれるヴォーカル・パート、それに激しい演奏のプログレッシヴ・パートが交互に現われ進んでいく展開は、楽曲の構成としては強引で、ある意味ではつぎはぎだらけ、破綻しているともいえます。
しかし、この無理やりな展開をあふれる唄心で一気に聴かせてしまうところが、イタリアン・プログレッシヴの醍醐味のひとつでもあります。その意味で、このオープニング曲にはイタリアン・プログレッシヴの魅力が凝縮されている、というのは言い過ぎかもしれませんが。
ただ、彼らの本来の持ち味、魅力は、オープニング曲以外の、よりカンタウトーレ的な曲にあります。ポップななかにどこか幻想味を持つフォーク・タッチの曲こそが、このアルバムの真価でしょう。
ときに初期のSupertramp(スーパートランプ)を思わせたり、あるいはT.Rex(ティ・レックス)の演奏するフォーク・バラードを思わせたりもするその作風は、ヨーロッパのポピュラー・ミュージックが豊潤な味わいを持っていたころに聴き手を引き戻します。「幻の名盤」として一部のプログレッシヴ・ファンだけに聴かせておくのはもったいないアルバムです。
小さなCDのジャケットでは再現できませんでしたが、最初に日本盤LPで再発されたときは、オリジナルのジャケット仕様に沿って、表面のボコボコした髪がジャケットに使われていました。
そのジャケットから指先を伝わってくる暖かい感じがそのまま、アルバムに収録された曲の暖かさにつながっていたことが、懐かしく思い出されます。