GIANNA NANNINI


PERLE (2004年)

   ジァンナ・ナンニーニ / ペルレ
    (Z-MUSIC/POLYDOR/UNIVERSAL MUSIC ITALIA: 9815677 / EU盤CD)



    jacket photo
  1. NOTTI SENZA CUORE
  2. RAGATTA DELL'EUROPA
  3. CONTAMINATA
  4. AMANDOTI
  5. PROFUMO
  6. I MASCHI
  7. ARIA
  8. UNA LUCE
  9. CALIFORNIA
  10. LATIN LOVER
  11. MERAVIGLIOSA CREATURA
  12. AMORE CANNIBALE
  13. OH MARINAIO


produced by Christian Lohr & Gianna Nannini

Gianna Nannini: vocals, piano
Christian Lohr: piano, drums, bass, accordeon, hammond organ b3, minimoog, nordlead 3

strings arranged by Christian Lohr and the solis string quartet, the london session orchestra
coro: citta' di milano
choir arrangements by Hans Hafner
tenor: Dario Balzanelli
soprano: Shinobu Kikuchi








このアルバム、名盤です。Gianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)といえば情熱的なダミ声でパワフルに歌うロック・シンガーというイメージがあるのですが、このアルバムでは生ピアノを中心に、ヴァイオリン等のストリングスを加えたアコースティックなセットで歌っています。この、シャンソンにも通じるような落ち着いた演奏に、Giannaの力強いヴォーカルが乗り、やわらかくかつ重厚な厚みのある独特の音世界が展開されています。

Giannaは個人的にもともと好きなヴォーカリストではありましたが、こんなに表情豊かで表現力のあるヴォーカルがとれるなんて、あまり思っていませんでした。いつものパワフル・ロックな演奏ではない分、ヴォーカリストとしてのポテンシャルが如実に現われるはずなのですが、その状況のなかで本当のちからを存分以上に発揮しているのでしょう。

また、M1「Notti senza cuore」やM2「Ragazzo dell'europa」などを聴くと、あらためて、いいメロディをもった曲を歌っていたんだなということに気づきます。パワフルなダミ声ロックというスタイルのうしろに隠されていた曲本来の持つポテンシャルが、アコースティックなアレンジによりくっきりと浮かび上がってきています。

M3「Contaminata」では合唱も入ります。ここでいう「合唱」は、ポップスの世界で使ういわゆる「コーラス」ではなく、クラシックや声楽の世界の「合唱」に近いものです。こういった合唱の入ったポップスが大好きな自分としては、もうたまりません。個人的には、さらにもっとクラシック的というか、賛美歌のごとき静謐さ、神聖さを漂わせてくれたら文句ないのだけどなといった感じです。

M6「I maschi」では弦楽クァルテットがバロック風味たっぷりな演奏をしています。初期のElectric Light Orchestra(エレクトリック・ライト・オーケストラ。ELO)やThe Beatles(ビートルズ)の「エリナー・リグビー」、あるいは上田知華+KARYOBINなどを思い出させる、少しざらついた弦の音が心地よく響きます。

M7「Aria」で聴かれるオーケストラは弦の音がつややかで、スケール感のあるゆったりした歌メロと展開をドラマティックに盛り上げます。Giannaの歌声も伸びやかです。

M8「Una luce」のイントロで聴かれる哀しげなピアノにも胸を締めつけられます。少し字余り気味の歌も、曲の持つ哀愁を高めます。ピアノのみの伴奏で歌っていますが、薄さや物足りなさは全然感じません。

M9「California」はジャジーでスローなピアノがあやしげな都会の夜を感じさせますが、サビで突然に感情を爆発させ、Giannaの持つ瞬発力の片鱗を見せます。

M10「Latin lover」ではどこかプリミティヴなちからを感じさせるドコドコしたリズムとサビでのしなやかさと力強さを持ったオーケストラが、「ラテン・ラヴァー」というタイトルにぴったりな感じです。

M11「Meravigliosa creature」でもサロン・ミュージック風の弦楽とGiannaの静かな情熱を秘めたヴォーカルのマッチングが美しいです。

M12「Amore cannibale」では冒頭から厳かな祈りのような合唱が入り、もうそれだけで感涙ものです。その後に続くGiannaの歌も素晴らしく、静かだけど大きなうねりをピアノとオーケストラの演奏、そして混声合唱による魂の昇華は、まさにヨーロッパ、まさにキリスト教国といったドラマにあふれています。このアルバムのハイライトといっていいでしょうね。

エンディングを締めくくるM13「Oh marinaio」も、穏やかだけど力強いヴォーカルをピアノとストリングスがバックアップします。静かな情熱とヨーロッパ的な哀愁のミックスした、このアルバムの持つ味わいを存分に感じさせるものになっています。

「静と動の対比」というよりは、「動を内包した静」といった印象が作品全体を包んでいます。それがGiannaの「歌」をより際立たせていると思います。アンサンブルを奏でるインストゥルメンツのひとつとしての「ヴォーカル」ではなく、「歌の持つちから」「歌の存在感」を存分に楽しめるアルバムです。マジで名盤です。

(2004.07.25)







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