prodotto da Wil Malone & Gianna Nannini
voce: Gianna Nannini
archi: Wil Malone
chitarre: Davide Tagliapietra, Rudiger Elze, Fausto Mesolella, Gianna Nannini, Camillo Sampaolo
basso: Hans Maahn, Lino De Rosa
batteria: Thomas Lang
pianoforte: Francesco Sartori, Wil Malone, Ani Martirosyan
drum sound: Gianna Nannini
cori: I piccoli cantori di Milano, Gianna Nannini, Giulia Santaroni, Wil Maone, Delay Lama
シエナ出身のGianna Nannini(ジァンナ・ナンニーニ)は1956年6月14日生まれだそうですから、もう50歳になるのですね。個性的なだみ声でパワフルなロックを歌い続けてきたGianna姉さんですが、前作の『Perle』といい、今作の『Grazie』といい、さすがに最近は落ち着いてきたのかなぁという印象を受けます。
このアルバムも最近流行のDual Disc版が初回限定で出ているのですが、自分は映像にほとんど興味がないので、CDのみのノーマル版を購入しました。こっちのほうが安いし。
ベスト選曲をピアノの伴奏で情感豊かに歌い上げた前作『Perle』は、かなりの名盤だと思います。ただ、これまでの作風とはかなり違うアルバムなので、これはある種の企画盤として、次はまたパワフルなロック・アルバムに戻るのかなと思っていました。しかし、今作もまた、あまりロックを感じさせないものになっています。
全体にスローからミディアム・テンポの曲が多く、ほとんどの曲にオーケストラがかぶせてあります。そのオーケストラにより盛り上がる構成は多く聴かれますが、歌メロ自体はシンプルで、どちらかといえば平凡。またヴォーカルも、前作ほどの豊かな表情を感じません。
M1「Sei nell'anima」はスローなポップ・ロックで、サビのメロディがとてもGianna風。控えめにかぶさるおだやかなオーケストラが心地いいです。
M2「Possiamo sempre」はギターの音色を活かしたミディアム・テンポのロック。エレキのディストーション・サウンドとクリーン・トーンだけでなく、アコースティックの艶のある音色も上手に使っています。歌メロとアレンジはけっこう平凡ですが、曲の構成は、Giannaにしてはちょっと複雑(というほどでもないけれど)でドラマティックかもしれません。
M3「L'abbandono」はアコースティック・ギターとオーケストラをバックに歌われる曲で、とてもおだやか。どことなくほのぼのとした感じもありながら、ほのかに哀愁と郷愁も感じられます。古き良き時代のポピュラー音楽を思い出します。
M4「Grazie」もスローでシンプルな曲ですが、メロディがとてもGiannaらしい感じ。サビでは厚いオーケストラが入り、高揚します。
M5「Le carezze」は少しシリアスな感じのするスローな曲。バックにはずっとオーケストラが鳴っています。ほんの少しだけRenato Zero(レナート・ゼロ)っぽいというか、Renatoに歌ってもらったら、さらにドラマティックになりそうな雰囲気です。
M7「Treno bis」ではガット・ギターのやわらかい音色によるアルペジオが印象的。これにやさしいオーケストラが入り、セレナータ風というか、子守唄風のおだやかな曲になっています。
M9「Mi fai incazzare」は構成に凝った感じがあります。少しいなたいスローなロックでGiannaのヴォーカルに合っていますが、U2に歌ってもらったらもっといい感じになりそうとも思いました。どことなく、U2に歌わせたいような、なにかのメッセージを感じます。自分はイタリア語がわからないので、この曲に特別なにかのメッセージがあるのかどうかは知りませんが。
M10「Alla fine」はピアノとオーケストラのバックによるバラードで、美しく、だけど力強く、アルバムの幕が下ります。
どの曲も、たおやかなオーケストラが心地よくはあるのだけど、ちょっと曲・テンポのヴァリエーションが乏しい感じがします。また、元気なロックがないのも残念。若いころのような元気さでなくてもいいけれど、Giannaにはやはり、そのヴォーカル・スタイルの個性を活かして、円熟のロック・ヴォーカルを聴かせてほしかったな。悪くはないのだけれど、落ち着きすぎてしまったというか、綺麗にまとまってしまった感じがあり、ロック姉さんとしてのGiannaの魅力があまり感じられませんでした。