HUNKA MUNKA


DEDICATO A GIOVANNA G. (1972年)

   フンカ・ムンカ / ジョヴァンナに捧ぐ
    (CRIME/KING RECORD: K28P 718 / 日本盤LP)



    jacket photo
  1. NASCE UN GIORNO
       夜明け
  2. RUOTE E SOGNI
       車輪と夢
  3. L'AEREOPLANO D'ARGENTO
       銀の飛行機
  4. CATTEDRALI DI BAMBU
       竹の大聖堂
  5. ANNIVERSARIO
       記念日
  6. IO CANTERO' PER TE
       君に歌う
  7. INTERMEZZO N.1
       間奏曲 1
  8. GIOVANNA GI.
       ジョヴァンナ G.
  9. INTERMEZZO N.2
       間奏曲 2
  10. IL CANTO DELL AMORE
       愛の歌
  11. MUORE IL GIORNO MUORE
       落日


orchestra diretta: Ivan Graziani / Gianfranco Lombardi

Hunka Munka: organ, vocal, effects
Ivan Graziani: guitar, bass, chorus
Cuccioletto: drums








このアルバム、けっこう好きなんですよ。半分プログレ、半分ポップスという、変な構成のアルバムですが、すべての曲でHunka Munka(フンカ・ムンカ)のあたたかく歌心にあふれた歌声が楽しめるのが、自分にとっては非常に好ましいです。曲作りやアレンジの大半をIvan Graziani(イヴァン・グラツィアーニ)が担当していることもあってか、初期のIvanの作品に通じるところもたくさんあるように思います。Hunka MunkaのヴォーカルもIvanに似てるし。その点も自分的には好印象。

M1「Nasce un giorno」は陽気なピアノが楽しげなポップ・ソング。可愛らしいテーマ・メロディを持っていて、「あ、いいな」と思っているうちになんだか中途半端な状態で終わってしまいます。なんで途中で終わっちゃうんだよな印象が残りますが、実はこのテーマ・メロディは、あとでまた出てくるのです。

M2「Ruote e sogni」ではクラシカルなオルガンが響き渡り、いよいよプログレ・パートの始まりです。演奏パートではけっこうジャジーな雰囲気があります。

M3「L'aereoplano d'argento」はピアノを中心としたロックンロール。1960年代から70年代初頭くらいのイギリスに、こういった感じの曲って多かったように思います。Traffic(トラフィック)とかにもこういう感じのもの、ありますよね。ちなみに曲の中間部にはスローパートがあり、ここでは幻想的な雰囲気も醸しだしています。

M4「Cattedrali di bambu」このアルバムのハイライトともいえるドラマティック・プログレ・ナンバー。分厚いキーボードと大仰な構成、力強い演奏が楽しめます。サビで一気に盛り上がる歌メロもイタリア的ですね。

M5「Anniversario」では一変して、オルガンの可愛らしい響きが印象的です。淡い夢のような、Hunka Munkaのやわらかな歌声もドリーミーな感じを強めています。これ、どこかの少年合唱団とかに歌わせたら、ぴったりとはまるかも。

M6「Io cantero' per te」は、演奏・アレンジは仰々しいプログレ風ですが、曲のつくりは典型的なイタリアン・バラードですね。カンツォーネの香が色濃く残る哀愁のメロディが心に響きます。

M7とM9はともに「Intermezzo」(間奏曲)と名づけられた小曲。ここでM1のテーマ・メロディが復活します。M7はおてんばだけど可愛らしいイメージのピアノ・アレンジで、M9ではシンフォニックなキーボード・アレンジで演奏されます。

「Intermezzo」にはさまれたM8「Giovanna G.」はアルバムのタイトル曲ですが、アコースティック・ギターをじゃかじゃかと鳴らすロックンロールで、べつにどうということがないような。

M10「Il canto dell amore」は、個人的にはこのアルバム中最高の曲だと思います。このアルバムをプログレ作品ととららえる方にはM4が最高なのでしょうが、歌ものファン、カンタウトーレ・ファンの自分には、やはりこっちです。素直でなめらかで哀愁たっぷりのメロディ・ラインを持った、典型的なイタリア歌曲の流れにある曲でしょう。古臭いノスタルジィともいえるのだけど、やはりこういう感じって好きなのですよ。

イタリアの味を堪能したところで、アルバムの最後を締めるM11「Muore il giorno muore」でまたまたM1、M7、M9のテーマ・メロディが登場します。ここではロックンロール風のアレンジが施され、元気で楽しい感じでアルバムの幕がおります。

プログレな曲とポップな曲が半分ずつで、一見ばらけた印象もあるのだけど、実はアルバムの最初・中間・最後に同じテーマメロディを持った曲を配置し、ある種のテーマ性を持たせているのですね。そういった小技もあってか、自分にはけっこうバランスのとれた作品のように思えます。そして、個性の強いHunka Munkaの暖かい歌声が、アルバム全体に統一感と求心力を与えているといえるのではないでしょうか。

うん。愛らしくて素敵な作品だな。

(2006.07.02)







Giovanna(ジォヴァンナ)というのは女性の名前で、アルバム・タイトルが「ジォヴァンナ・Gに捧ぐ」なのに、なぜジャケット・デザインが便器なのか不思議です。M8の「Giovanna G.」という曲もやけに俗っぽいロックだし。ジォヴァンナさんはどういう女性なんでしょう? かなりのじゃじゃ馬だったのかな。

それはともかく、曲づくりやアレンジなどで深くIvan Graziani(イヴァン・グラツィアーニ)がかかわっていることもあり、アルバム自体はかなりIvanぽいと思います。Hunka Munka(フンカ・ムンカ)の個性って、じつはこのアルバムにはあまり出ていないのかもしれないとすら思います。声の感じもIvanに似てるし。

それでも、M2「Route e sogni」はオルガンのたおやかな響きとドタバタしたドラムがいかにも1970年代のイタリアン・プログレッシヴ風で楽しいですし、一般にこのアルバムの最大の聴きどころといわれているM4「Cattedrali di bambu」の大仰さもプログレッシヴ・ロックらしいです。こういった露骨なプログレッシヴ風味はIvanのアルバムにはほとんど聴かれないので、ここがHunka Munkaの個性なんでしょうか。

アルバムの約半分はこういったプログレッシヴ・テイストを持ったものになっていて、残り半分はポップなロックン・ロールという構成が以前は不人気だったようですが、じつは意外といいバランスのような気がします。プログレ風の曲ばかり並べられても、それを全部通しで聴いて楽しめるほどプログレッシヴ・ロックとしてのクオリティは高くないからです。やはり基本はプログレ色の強いポップスなのでしょう。そういうふうにとらえると、合間のロックン・ロールはいいアクセントになっていると思います。

とはいえ、曲単体として聴いたときに魅力的なのは、やはりプログレ・ポップ風なもののほうです。ほどよい哀愁をたたえたメロディを歌うのにとても適した歌声、ドラマティックなオーケストラ・アレンジには、やはり心引かれます。

でも、いかにもプログレッシヴなM4よりも、プログレッシヴ・ロックの断片を切り出したようなM2やM6「Io cantero' per te」のほうに心引かれるのは、ベーシックな部分で自分がポップス・ファンだからでしょうか。このアルバムのなかでいちばんの名曲は、じつはM10「Il canto dell amore」だと思ってるし。そういえばM10だけオーケストラがGianfranco Lombardi(ジァンフランコ・ロンバルディ)ですね。

トータル的には、自分にとってはかなり愛すべきアルバムです。でも、イタリアやプログレの初心者向きではありませんね、おそらく。

(2004.05.09)







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