Parole e musiche di Ivano Fossati
Arrangiamenti e realizzazione di Antonio Coggio
I musicisti:
Ivano Fossati
Euro Cristiani
Antonio Coggio
Guido Guglielminetti
Sandro Centofanti
Luciano Ciccaglioni
Mike Fraser
Gianni Oddi
Goran Tavcar
Roberto Zanaboni
Mia Martini voce femminile in "Anna di primavera"
Ivano Fossati(イヴァーノ・フォッサーティ)のアルバムって、比較的最近のものはクールでクレヴァーでジャジーな、北イタリアっぽい印象があるのですが、初期のころの作品って、けっこうあたたかみがあって、どちらかというと南イタリアっぽい印象を受けるのがおもしろいです。クールなIvanoも素敵なのですが、自分の好みからすると、やはりイタリアらしい人間味をより感じさせる初期のころの作風のほうが合うかもしれません。
この作品はソロになってからの4作目(Delirium時代を含めると5枚目)のようです。次作の『La mia banda suona il rock』(1979年)もカンツォーネ的なやわらかさのなかにラテンや南国ぽい暖かさやリラックス感があって、なかなかいい感じでしたが、このアルバムではよりイタリア的というか、カンツォーネぽい感じが強いです。哀愁度もなかなか高く、古き良き時代のカンタウトーレ作品という印象を受けます。もともと自分はこういった感じの作品が好きでイタリアン・ポップスにはまり込んでいったんだよなということを思い出します。
しかし、Ivanoの声って、こんなにしわがれ系でしたっけ? 曲によってはClaudio Baglioni(クラウディオ・バッリォーニ)を思わせます。
M1「Stasera io qui」は落ち着いた感じのスローバラード。深みのあるピアノの響きと趣のあるIvanoの歌声がよくマッチしています。比較的単純なメロディ展開なのですが、終盤ではコーラスが入り、ほどよいドラマティックさと哀愁を感じます。
M2「Matto」は動きのあるベースラインと少しワウワウのかかったギターのカッティングが聴けるミディアムテンポのポップス。こういう感じって誰かに似ているんだけど、誰だったか思い出せない。サビではやわらかなオーケストラが入り、それ以前の軽やかなんだけど哀愁も少し感じさせるパートとの対比を見せます。こういった場面転換が、このくらいの頃のイタリアン・ポップスの魅力だと自分は思います。
M3「Non ti riconosco piu'」はエレクトリック・ピアノとフルート、やわらかなストリングスから入る、あたたかみのあるバラード。エレクトリック・ピアノの軽やかな音色が、少しかすれたIvanoの声を柔らかく包みます。メロディや曲構成は単純なんだけど、その分、安心して聴いていられます。Ivanoの歌も、けっしてうまくはないんだけど、なんか味わいがあります。
M4「Manila 23」は、ちょっとホンキートンク調の、酒場のピアノのような響きがノスタルジックです。ほんのり哀愁を感じさせるメロディを、バンジョーのストロークがノスタルジィをバックアップします。サビではオーケストレーションの入ったイタリアらしいゆったりしたメロディになり、この対比がいい感じです。サビ後はまたバンジョーとフィドルが街角楽師ふうの哀愁とノスタルジィを響かせ、2番へと導いていきます。
M5「La casa del serpente」ではビブラートのかかったエレクトリック・ピアノの響きがIvanoの歌の哀愁度を高めています。少し寂しげな序盤から、徐々に希望を感じさせる明るさを持ったものに移行していくメロディ展開が素敵です。なんとなく、最初期のころのClaudio Baglioniを思わせるような曲調です。サビでは混声のコーラスも入り、胸にしみます。
M6「Anna di primavera」にはMia Martini(ミア・マルティーニ)がヴォーカルで参加しています。軽やかで明るい印象を持ったポップスです。アコースティック・ギターの細かなカッティングやタイトなリズム、ちょっとユーモラスなシンセサイザーなど、楽しい感じがします。Miaのヴォーカルもコラージュ的な扱いで、曲に楽しさを加えていると思います。ただ、Ivanoのヴォーカルがけっこう深みがあるので、軽やかで楽しげななかに、どこかはじけきれない感じがあって、このミスマッチ感もある意味で魅力的です。
M7「Non puo' morire un'idea」は、このアルバムのベスト・チューンではないでしょうか。大きくて深い世界観を持ったバラードだと思います。徐々に盛り上がっていくメロディとアレンジもいいですし、さびでのあたたかさと切なさと哀愁が入り混じったようなドラマティックさも、いかにもイタリア的です。ここでも初期のころのClaudio Baglioniに似たテイストを感じます。贅沢をいうなら、この曲を1970年代のClaudioが歌っていたなら、さらに胸に迫るものになったのではないかなぁ。Ivanoの歌は、味わいはあるのだけど、ある種の迫力に少し欠けるのが残念です。
アルバムの最後を締めるM8「La vedette non c'e'」は、このアルバムのなかでは派手なイメージのある、リズミックなポップ・ロック。拍手や感性のSEをかぶせて、擬似ライヴふうな感じになっています。エレクトリック・ピアノのコード・ストロークやファズっぽいギター、ディスコふうなドラムとベースのアレンジにちょっと時代を感じます。