CD1
1: LUGANO ADDIO
2: BALLATA PER 4 STAGIONI
3: IL TOPO NEL FROMAGGIO
4: I LUPI
5: E SEI COSI BELLA
6: ZORRO
7: COME
8: IL CAMPO DELLA FIERA
9: NINNA NANNA DELL'UOMO
10: IL SOLDO
11: AL FESTIVAL SLOW FOLK DI BI-MILANO
12: MONNA LISA
CD2
1: PIGRO
2: SABBIA DEL DESERTO
3: POLINA
4: SCAPPO DI CASA
5: FANGO
6: FUOCO SULLA COLLINA
7: TAGLIA LA TESTA AL GALLO
8: AGNESE
9: VELENO ALL'AUTOGRILL
10: GABRIELE D'ANNUNZIO
11: MODENA PARK
12: DOCTOR JEKYLL AND MR. HYDE
イヴァン・グラツィアーニ(Ivan Graziani)は、元アノニマ・サウンド・リミテッド(Anonima Sound Ltd.)のメンバーで、フンカ・ムンカ(Hunka Munka)のアルバム『ジョバンナに捧ぐ(Dedicato a Giovanna G.)』への参加などから、イタリアン・プログレ・ファンにはそれなりに知られている人だけれど、すでに亡くなったようです。
このアルバムはタイトルどおり、彼の1976年から79年のアルバムを集めたベスト盤です。最近のベスト盤の多くは新録だったりするのですが、このアルバムはオリジナル音源のようです。とくにリミックス等の記載もないので、原盤そのままなのかもしれません。
自分は、彼の CD は、この2枚組ベストと、1980年代以降の曲を中心に収録したベスト盤『Antologia』しか聴いたことがないのですが、70年代も80年代以降も、あまり変わりはないようです。
彼の曲って、なぜかとても懐かしい感じがします。
メロディ的にはオーソドックスなイタリアン・ミュージックの延長線上にあると思いますが、甘さに流されることなく、それでいてエルトン・ジョン(Elton John)などが持っていそうな人懐っこさがあります。メロディだけでなく、バックを支えるギターや鍵盤楽器の音までもが、非常に人懐っこいんです。
イヴァンの唄って、決してうまくはないと思います。声にもあまり力がないし。
でも、ちょっと高めの丸い声は特徴的で、彼の最大の魅力でしょう。この声こそが、懐かしさの原因なのかもしれません。
彼の唄を聴いていると、まだ子供だった頃、家の近所の原っぱで遊んだあとの夕暮れの帰り道などを思い出します。今では自分のまわりに原っぱなどなく、物理的にあの頃の情景を探し出すのはむずかしいのですが、彼の唄には、あの頃の景色があるんです。
とはいえ、本当はあの頃の情景なんて、実際にはなかったのかもしれません。自分のなかで勝手に作り上げられた、いわばひとつの理想の写し絵なのかもしれません。
でも、いいんです。少なくとも自分には、今では失ってしまった何かを感じさせる音楽に変わりはないからです。たとえば童謡「赤とんぼ」や「靴が鳴る」などを聴いたときに浮かぶ情景と同じようなものを感じるんです。
このへんの感覚は、近所に空き地や原っぱがなくなってから生まれ育った都会の若い人には、理解しづらいかもしれませんね。
そういう意味では、彼の音楽は、自分のなかにそういう風景を持つ人、ある程度の年代以上の人にアピールするタイプの音楽ともいえそうです。
若い人中心の音楽産業のなかでは、少しずつ忘れ去られていってしまう人かもしれませんが、忘れてしまうにはあまりに惜しいです。最近ではあまり聴かれなくなった肌触りを持っているので、いつまでも大事に聴き続けていきたいです。