FROMAGE


月に吠える (1990年)

   フロマージュ
    (MADE IN JAPAN RECORDS MHD-25002 / 日本盤CD)



fromage1   1: 月に吠える
  2: ONDINE
  3: トーマ
  4: THE FINAL FORT[最後の砦]
  5: NAKED LADY
  6: 手のなかのおもちゃ箱
  7: DUAL FIGHTER
  8: 水晶の城
  9: OPHELIA







 ページェント(Pageant)・夜来香の中島一晃さんや、ノヴェラ(Novela)・アースシェイカー(Earthshaker)・ジェラルド(Gerard)の永川敏郎さんが在籍していたことでも知られる京都のグループ。このアルバムは、1984年に出た1st アルバム『Ondine』から1と2、88年の2nd『Ophelia』からは全曲を収録したもの。

 基本的には線の細い、繊細なシンフォニック・ロックを演奏するグループだと思う。技術的にはそれほどうまくないが、唄をとても大事にしていて、ある意味とても日本的な感じがする。
 ヴォーカルの声に多少クセがあるため、嫌いな人はいるかもしれない。でも、とても純粋な、混じりけのない心を表現する唄だと思う。

 一部ポンプ・ロック的な曲があるのと、なんか安っぽい感じがするキーボードの音がときどき聞こえるのは個人的にバツだが、全体的にはゆったりとした、叙情味あふれる曲・アレンジが聴ける。

 水の精オンディーヌや、悲劇のデンマーク王子の恋人オフィーリアをテーマに扱った、哀愁あるシンフォニック・ロックなのだけれど、そこから浮かぶイメージがヨーロッパではないところは、ひとつの特徴かもしれない。それともこれは自分だけ?

 ページェントの1st などもそうだけれど、そこから浮かぶ絵は、どちらかというと日本、もしくはアジア。戦後の暗い時代のなかで懸命に生きる人間を描いた映画などで感じられる、愛情と哀しみ。明らかにヨーロッパの哀愁とは違った、アジア的な湿り気を帯びた哀愁を感じる。
 「月に吠える」(萩原朔太郎の詩ですね)や「トーマ」(萩尾望都の「トーマの心臓」がテーマですね)といった日本作品のタイトルや、「手のなかのおもちゃ箱」で使われているハングル語の歌詞に引きずられているだけかもしれないけれど(途中でノヴェラなキーボードも少し聞こえるし)。

 このアルバムが出たあとで、1st、2nd ともにそれぞれ数曲のボーナストラックを加え、再発されている。  残念ながら1st は未聴(2nd はLPをもっている)なのだけれど、どんな感じなのだろう? このアルバムにも収録された2曲の大曲を中心に、やはりポンプ的な味付けをもった小曲がちりばめられているのだろうか。

 「月に吠える」と「手のなかのおもちゃ箱」。日本の叙情派シンフォニック・ロックにおける名曲に仲間入りさせてもいいだろう。
 とても好きです、この2曲。ひとりでじっくりと味わいたい。

(1997.12.29)








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