泉 洋次:vocal
岩井真一:guitar
谷川雅治:bass
福島正彦:drums
金沢保裕:keyboards
1970年代中ごろに活動していたらしい、日本のプログレッシヴ・ロック・グループです。このCDは1991年リリースですが、音源は1976年に録音されたものだそうです。
MARIAというグループ名は、イギリスのイエスをJesusだと勘違いした(本当はYes)らしい当時のメンバーが、イエスよりも偉大なグループになろうと、イエス(Jesus)を生んだ母マリアをグループ名にしたらしいというおバカな逸話がライナーノーツに書いてあります。脱力です。
録音はスタジオを使ってされていますが、マスターテープが紛失しているとかで、カセットテープからのCD化になっています。そのため、録音状態はあまり(かなり)よくありません。音の抜けとかすごく悪い。でも、演奏自体は迫力があり、とくにドラムはかなりすごいです。福島正彦という人なんですが、その後も音楽界に残ったのだろうか。アマチュア・バンドで終わらせてしまうにはもったいない。
迫力のドラムとうなるベースのリズム・セクションがしっかりしているので、演奏がすごく安定しています。キーボードもまずまず。ギターは、ちょっとバッキングのアイデアが乏しいかな。1970年代中ごろだと、このくらいでしかたないかなとも思えますが。
初期のYesやGenesis(ジェネシス)、Pink Floyd(ピンク・フロイド)などからの影響がうかがえるアレンジと演奏。ときにCosmos Factory(コスモス・ファクトリー)を思い出させるところもあり、あの時代のジャパニーズ・プログレッシヴらしいなという感じです。ヴォーカルに、ロック・ヴォーカリストとしての魅力が弱いという点でもジャパニーズ・プログレぽいです。布施明とか尾崎紀世彦とかカルメン・マキくらいの歌唱力があればなぁ。
そして、歌メロの魅力のなさは致命的な感じです。せっかく演奏面ではブリティッシュな、ユーロピアンな重厚さを発揮しているのに、歌メロが出来の悪い歌謡曲。もう少しなんとかならなかったんだろうか。メロディ・メーカーとしてはいまいちですね。改めてカルメン・マキ&オズの偉大さを感じてしまいました。
などという弱い点も多々ありますが、イギリスから渡ってきたプログレッシヴ・ロックに心奪われ、自分たちで日本のプログレッシヴ・ロックをつくろうとした当時の若いミュージシャンたちの熱い気持ちは存分に伝わってきます。こうしたグループたちの音楽が、のちのNovela(ノヴェラ)などといったグループにつながり、そこからさらにX Japan(エックス・ジャパン)やMalice Mizer(マリス・ミゼル)などにつながっていったんだよなぁなどということを考えると、なかなか感慨深いものがありますね。