1: 南海航路
2: Love Song を唄う前に
3: とりあえず……
4: 26の時
5: 空へ
6: 街角
7: 昔
8: Age
Carmen Maki & Oz がプログレ・バンドかというと、そんなことはけっしてないのだけれど、ある程度の年齢にあるプログレ・ファンでマキ&オズのファンというのはけっこうたくさんいる。
自分がはじめて生で体験したロックは、マキ&オズだった。といっても、本物ではなく、自宅の近所にあった大学の学園祭でみたコピー・バンドの演奏だったが。
『空へ』『とりあえず……』『崩壊の前日』などをレパートリーにしていた彼ら(そのほか、ノヴェラの『ナイトメア』なども演奏していた)をみるのが、毎年の楽しみになった自分だったが、そのときはまだ、彼らが演奏している曲がだれの何という曲かを知らず、ただ「日本語のロックなのに、なんてカッコイイんだ!」(当時すでに自分は、KISS で洋楽の道に入りはじめていた)と思っていた。
一般的にはハード・ロック/ヘヴィ・メタル的なイメージをもたれやすい(Show-Yaのヴォーカルをやっていた人が、マキの大ファンだった影響か?)マキ&オズだが、実際はゆっくりとした、メロディの美しい曲が多い。
このアルバムに収録されている全8曲のうち、4曲は『LIVE』にも収録されている。そこでの圧倒的なパワーとロック・スピリッツをもったアレンジもすばらしいものだが、このアルバムではそれらの曲が繊細に表現されている。
『空へ』に聴ける、コンパクトだが重厚な曲づくりは、まさにドラマティック・メタルといっていいだろう。ハード・ロック・ヴォーカリストとしてのマキの実力も発揮されている。
『26の時』では、ピアノをバックとした静かな部分、中間のハード・ロック部分、激しくなったところですっとひく部分など、構成がよく考えられており、長い曲であるが飽きることがない。
『昔』では前半部が多少冗長な感じはするものの、後半部ではキング・クリムゾン(King Crimson)を思わせるメロトロン&ベースが聴け、プログレ・ファンを喜ばせる(ただ、メロトロンのコンディションが悪いのか、いまひとつ音程が安定せず、ちょっと気持ち悪い)。
『Love Song を唄う前に』ではマキが「唄い込むこともできる」ヴォーカリストであることがわかる。
そして、さわやかな『南海航路』、ロックンロールの『とりあえず……』、シンプルなフォーク・ソングである『街角』『Age』と、ひじょうにバラエティに富んだ曲が集められている。
けっきょくのところマキ&オズの魅力は、もちろんマキのパワフル・ヴォイスもあるが、ひとつひとつのフレーズの美しさ、そして曲展開(構成)のうまさにあるといえるのではないか。
長い曲になればなるほど、ひとつの曲のなかでいろいろなイメージを表現する。各パーツをそれぞれ取り出せば別々の短い曲にもなりそうにもかかわらず、全体を通して破綻を感じない。そんなところが、プログレ・ファンの心をくすぐるのかもしれない。