新月


新月 (1979年)

    (VICTOR MUSICAL INDUSTRIES MHD-32001 / PRCD-1101 / 日本盤CD)



jacket photo  1: 鬼
 2: 朝の向う側
 3: 発熱の街角
 4: 雨上りの昼下り
 5: 白唇
 6: 魔笛“冷凍”
 7: 科学の夜
 8: せめて今宵は


新月:
北山 真: guitar
花本 彰: keyboards
高橋直哉: drums, percussion
鈴木清生: bass
津田治彦: guitar

producer: Minoru Kunioka, Shuji Shiotsugu
director: Hiroshi Morimura







 日本における本格的なユーロピアン・スタイルのプログレッシヴ・グループということで、ファンの間では高い人気を誇る新月の、唯一のオリジナル・スタジオ作品。
 彼らは初期Genesis(ジェネシス)タイプのグループと呼ばれることが多いようですが、自分はGenesis本家よりも、やはりGenesisタイプのグループとして人気の高いイギリスのEngland(イングランド)などに、より近いように感じます。

 本格的なユーロピアン・スタイルのシンフォニック・ロックとライナーにはありますが、ヴォーカル・ラインはまったく日本的です。シンフォニックな演奏の質感は、さすがに時間とお金をかけていると感じさせるに充分なクオリティの高さですが、歌メロの部分で貧乏臭さ、歌謡曲的な安っぽさが感じられてしまうのは、あの時代のジャパニーズ・プログレッシヴの哀しさでしょうか。

 ただ、アルバム・オープニング曲の「鬼」については、数あるジャパニーズ・プログレッシヴのなかでも、かなりの名曲といえます。古くからファンの間では、新月といえば「鬼」という声が多く、非常に評価の高い曲ですが、それが充分に納得できます。

 この曲の歌メロには貧乏臭さ、安っぽさがまったくありません。歌詞を乗せるための無理なフレーズもありません。歌メロが演奏と見事に溶け合い、曲全体のアンサンブルを構成する楽器のひとつとしてヴォーカルが有効に機能しています。
 張りのない弱っちいヴォーカルは、ロック・グループとしては明らかに弱点なのですが、この曲においては、そのうつろな、実体の希薄さ、力のなさが、実体のつかめない伝説の物の怪「鬼」のイメージともあいまって、古い日本家屋で雨が降ったあとの縁側に座っているような、庭の草花から漂ってくる水に濡れた匂いを感じさせます。
 初期Genesisには、妖精の住むヨーロッパの神秘の森を思わせるようなところがありましたが、新月のこの曲には、古来から日本の山々などに住む魔物を感じさせるという点で、Genesisとの共通点を見出せます。

 ただ、この曲と他の曲とのクオリティの差が大きすぎ、アルバム全体としてはそれほど大騒ぎするほどのものでもないなと、自分は思うのですが。

(2000.06.17)








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