1: OPENING
2: GATHERING WAVE
3: SCHVELLE
4: FOLLOW YOU
5: THE PLANETS (惑星〜キーボード・ソロ)
6: THE METAMORPHIC TIME IN PARADISE (歪められた時間の楽園)
7: CANONE
8: SLEEPLESS NIGHT (白夜)
VIENNA;
Yukihiro Fujimura: vocal, guitar
Shusei Tsukamono: keyboards
Toshimi Nagai: bass
Ryuichi Nishida: drums
live recorded at Muse Hall in Osaka, 10. January. '89
produced by VIENNA
Gerard(ジェラルド)、Outer Limits(アウター・リミッツ)、Black Page(ブラック・ペイジ)、Afflatus(アフレイタス)──1980年代のジャパニーズ・プログレッシヴを愛聴してきた人には、とても懐かしい名前でしょう。この4つのグループのそれぞれからメンバーが集まって結成された、いわばジャパニーズ・プログレッシヴのスーパー・グループがVienna(ヴィエナ)です。
そこに聴かれる音楽は、Black PageやAfflatusといったスーパー・テクニカル・グループを支えてきたリズム隊の上に、Outer Limitsのクラシカルな重厚さをたたえた構築美、Gerardのドラマティカル・シンフォニックなプログレッシヴ・ハード要素が加わった、まさに80年代ジャパニーズ・プログレッシヴの集大成、もしくは良質なサンプルといえます。プログレ云々を抜きにしても、ストレートにかっこいいと思えるテクニカル・ドラマティック・ハードロックです。
あまりにもプログレッシヴ・ロック界で有名なグループからメンバーが集まってできたグループなため、プロモーションのしかたも、たとえばU.K.のようなスーパー・プログレッシヴ・グループといった感じでしたが、ある意味それは、彼らにとって不幸だったのかもしれません。結果としてメイン・リスナーをプログレ・ファンに絞り込んでしまい、リスナー層に広がりを出せなかったからです。
当時のプログレッシヴ・ロックは、プログレッシヴ・メタル花盛りのいまと違い、思いっきりマイナーなジャンルでした。なかでもジャパニーズ・プログレは、英米のロック・ファンの一部であるプログレ・ファンの、さらにその一部のファンが愛聴していたという、ロック・リスナー層のなかにおけるマイノリティのなかの、さらにマイノリティだったといえます。
メイン・リスナー層が非常に狭い範囲になってしまい、他への広がりがうまくいかなかったがために、Viennaの活動期間も短いものになってしまったのでしょう。1988年にアルバム・デヴューしてからたった1年、このライヴ・アルバムを最後に、グループは長い活動休止に入ってしまいました。
彼らの音楽は、ハードロックとしても充分にかっこよく、楽しめる、非常にクオリティの高いものだと思います。ただ、ある意味でプログレッシヴ・ロックの悪い面ともいえる、ファンタスティックで現実感のない歌詞(それでも「今夜は燃えようぜ、ベイベェ」みたいなものよりはいいと思いますが)と、なによりもヴォーカルの線の細さは最大の弱点といえるでしょう。
このライヴではいくらか力強い歌声が聴けますが、本職のロック・ヴォーカリストには声量、迫力などの点でまったくかないません。もちろんそれが、Viennaのヴォーカルの個性ともいえるのですが。
このライヴ収録後に活動休止したViennaですが、メンバーの半分はジャパニーズ・ヘヴィメタルのトップ・バンドのひとつだったLoudness(ラウドネス)からパワフルなヴォーカリスト、ニ井原実を迎え、テクニカル・ヘヴィメタル・グループのDed Chaplin(デッド・チャップリン)を結成しました。ここには、Vienna時代のヴォーカルの弱さに対する反省があったのではないでしょうか。ヴォーカルさえよければ、もっと売れたはずかもと考えたのかもしれません。
しかし、ヴォーカル面での弱さを除けば、ソリッドかつキャッチーなメロディ、テクニカルでタイトな演奏、ドラマティックな展開など、非常に聴きどころの多いグループです。
このライヴでは、スタジオ収録にくらべると緻密さには欠けますが、ライヴならではの力強さと躍動感があり、よりロック・バンドとしての彼らの魅力が感じられます。アルバムの終盤を飾る「The Metamorphic Time in Paradise」から「Canone」への流れは、やはりこのライヴのハイライトといえるでしょう。