LUCIO BATTISTI


ANIMA LATINA (1974年)

   ルチオ・バッティスティ / アニマ・ラティーナ
    (NUMERO UNO DZSLN 55675 / イタリア盤LP)



battisti1.jpg   1: ABBRACCIALA ABBRACCIALI ABBRACCIATI
  2: DUE MONDI
  3: ANONIMO
  4: GLI UOMINI CELESTI
  5: GLI UOMINI CELESTI (ripresa)
  6: DUE MONDI (ripresa)
  7: ANIMA LATINA
  8: IL SALAME
  9: LA NUOVA AMERICA
 10: MACCHINA DEL TEMPO
 11: SEPARAZIONE NATURALE







 自分がまだ、どちらかといえばプログレ・ファンで、プログレの延長上でカンタウトーレを聴き始めた頃、その入り口となるのはクラウディオ・バッリォーニ(Claudio Baglioni)であり、リッカルド・コッチャンテ(Riccardo Cocciante)であり、アンジェロ・ブランデュアルディ(Angelo Branduardi)であり、そしてルチオ・バッティスティ(Lucio Battisti)でした。なかでもバッティスティは、フォルムラ・トレ(Formula 3)やプレミアータ・フォルネリア・マルコーニ(Premiata Forneria Marconi / PFM)といったプログレッシヴ・ロックのスーパーグループとも関係があるということで、いっそう手を出しやすかった記憶があります。

 『ラテンの魂(Anima Latina)』と名づけられたこのアルバムは、彼の7枚目のアルバムになるのかな。日の暮れかけた原っぱで踊り、唄い、演奏する子供達のジャケットが、生きていくことの喜びを感じさせるようで、自分はけっこう好きなジャケットです。

 バッティスティって、決して唄がうまいとは思わないし、特別引き付けるような声を持ってるわけでもありません。どちらかというと細くて頼りない声だと思います。
 でも、彼の口から出てくる言葉は、なぜかとても説得力があります。いわば、吉田拓郎のような感じでしょうか(曲調が、というわけではありませんよ)。

 自分は彼のアルバムって5枚ほどしか持っていないのですが、そのなかでもこの『Anima Latina』は、圧倒的な音密度を持ったアルバムです。自分は LP しか持っていないのですが、厚く重みのあるレコード盤で、その後のぺらぺらな盤とは比べ物になりません。それが音密度に関係があるかはわかりませんが、なんとなくバッティスティの「ラテンの魂」がこの中に目いっぱい詰まってる感じがしたものです。
 もちろんいまは CD で手に入るはずです。最近の CD は音がいいから、より一層の密度を感じられるかもしれません。

 バッティスティのヴォーカル自体は、どちらかといえばスカスカしたものだといえるでしょう。では、何がこのアルバムに圧倒的な密度を与えているのかというと、それは演奏なんですね。
 このアルバム、いわゆるカンタウトーレのアルバムというよりは、イル・ヴォーロ(il Volo)やフォルムラ・トレの延長上にある、どちらかというとプログレ寄りのアルバムではないかと思います。手元のアルバムには参加メンバーのクレジットがないので、誰がバックにいるのかわからないのですが、明らかにイル・ヴォーロやフォルムラ・トレの匂いがします。そこに、力強い生命の脈動、すべての生き物の上に平等に投げかけられる強い陽射しといった印象が重なり、より人間的な趣を強くしています。

 生命力の強さ、生きることへの讃歌 …… 自分にはそう聞こえます。タイトル曲など、身体中から湧きあがってくる力を感じます。

 たとえば最近のイタリアン・ポップスしか聴いたことのない人が、はじめてこのアルバムを聴いて、すぐに馴染めるかというと、むずかしいものがあるかもしれません。シングル・カットしてヒット・チャートをにぎわすような曲はひとつもないし、ひとつひとつの曲だけを切り出して聴いて楽しむタイプのアルバムでもないですから。
 しかし、多少なりとも往年のイタリアン・プログレに対する素養がある人なら、とくに抵抗を感じず聴けるでしょうし、たんなる消費財や娯楽商品としてのポピュラー・ミュージック以外のものも愛好してきた人なら、このアルバムの中に織り込まれている感覚を見つけ出すこともできるでしょう。

 何回も聴いて、アルバム全体のストーリーのなかにその価値を見つけていくタイプのアルバムです。そして、1度その中にあるものを見つけられたら、そしてそれを大事に思えるなら、きっと愛聴盤になるでしょう。
 すべての人におすすめするとはいいませんが、まったく無視して通り過ぎてしまうには惜しいアルバムだと思います。

(1998.09.12)








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