LUCIO BATTISTI


UMANAMENTE UOMO : IL SOGNO (1972年)

   ルチオ・バッティスティ / ウマナメンテ・ウオモ:イル・ソーニョ
    (NUMERO UNO ZSLN 55.060 / イタリア盤LP)



battisti2.jpg   1: I GIARDINI DI MARZO
  2: INNOCENTI EVASIONI
  3: ...E PENSO A TE
  4: UMANAMENTE UOMO : IL SOGNO
  5: COMUNQUE BELLA
  6: IL LEONE E LA GALLINA
  7: SOGNANDO E RISOGNAND
  8: IL FUOCO







 Ricordi レーベルを出て、自分のレーベルである Numero Uno から出した最初のアルバム。美しいシンフォニック・ポップス風なカンタウトーレ作品です。
 トニー・チッコ(Tony Cicco)やマリオ・ラヴェッツィ(Mario Lavezzi)、ダリオ・バルダン・ベンボ(Dario Baldan Bembo)、ジャンピエロ・レヴェルベリ(Giampiero Reverbeli)などの名前がクレジットされていますが、『Anima Latina』のようなプログレッシヴ・ロック風な印象はありません。

 1972年ということもあるのでしょうが、けっこうオーソドックスな唄が収録されています。
 カンタウトーレ的な作品には違いないのですが、バックでドラマティックに盛り上がるオーケストラなどは、いわゆるカンツォーネ/シンフォニック・ポップスの流れを感じます。ただ、多くのカンツォーネ歌手と比べると、バッティスティの声は圧倒的に弱々しいし、朗々と唄うカンツォーネ唱法ではなく、いわばフォーク的な唄い方な分、一歩下がった繊細さが感じられます。

 全体を通して聴くと、1曲目から4曲目(LPのA面)はどちらかというとドラマティック・ポップ路線、5曲目以降(LPのB面)はプログレッシヴ・カンタウトーレ路線という感じがします。

 ストリングス・オーケストラが活躍する前半は、多少オールド・スタイルですが美しいメロディとちょっと感動的な曲展開があり、たとえばジャンニ・ナッザーロ(Gianni Nazzaro)やサンドロ・ジャコッベ(Sandro Giacobbe)あたりが好きな人にもアピールするかもしれません。
 そんななかでも「...e Penso a Te」などは非常にバッティアート的というか、フォルムラ・トレ的というか、徐々に盛り上がっていく感じはたまりません。また、オープニング曲「i Giardini di Marzo」の、オーソドックスながらも広がりのあるオーケストレーションをバックにしたアレンジは、叙情派カンタウトーレ・ファンに感動を与えてくれると思います。

 後半では、前半に比べるといくぶんシビアな世界が表現されている気がします(唄の内容がわからないので、あくまでも聴いた感じの自分の印象ですが)。なんというか、寂しい感じというか、傷ついた心を持っているようなというか、どことなく気持ちが自分の内側に向かっている気がするんです。
 7曲めの「Sognando e Risognando(夢のまた夢)」はフォルムラ・トレ(Formula 3)の3rd アルバムのタイトルにもなっていますが、もちろんこっちはプログレ的なアレンジではありません。といっても、途中で子供のヴォーカルが入ったりと、まっとうなポップスのアレンジでもないけれど。それでも、やたら手を加えてわけわからなくなってしまった感のあるフォルムラ・トレよりは、こちらのほうが自分は好きかな。
 最後の「il Fuoco」は、なんだかわけのわからんインスト曲で、ちょっと気持ち悪いです。なんでこんな恐い終わり方にしちゃったんだろ?

 全体に、バッティスティの瑞々しい感性が息づいているアルバムです。多少曲想的にはばらついた感じもしますが、派手すぎず地味すぎず、プログレッシヴ・カンタウトーレ風味とオーソドックスなポップス風味がバランスよく表現されているのではないでしょうか。
 自分は LP しか持っていませんが、もちろん CD でも手に入るはずです。『Anima Latina』よりは入門者むきかと思います。

(1998.09.13)








Musica

Pensiero! -- la Stanza di MOA

(C)MOA

inserted by FC2 system